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Jリーグ 1か月前

【英国人の視点】高い個の力を持つサンフレッチェ広島と、守備面で比較的自由奔放な柏レイソル。ルヴァン杯決勝は名勝負に

シリーズ:英国人の視点 text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

 JリーグYBCルヴァンカップ決勝、柏レイソル対サンフレッチェ広島が11月1日に国立競技場で行われる。決勝に駒を進めたのは、いずれも外国人監督が率い、特徴的なフットボールを展開する2つのチーム。互いに異なる個性を持つ者同士の一戦を、日本在住の英国人ジャーナリストがプレビューする。(文:ショーン・キャロル)
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YBCルヴァンカップ決勝を前に

サンフレッチェ広島・ミヒャエル・スキッベ監督と柏レイソル・リカルド・ロドリゲス監督
【写真:Getty Images】

 今週末に行われる柏レイソルとサンフレッチェ広島のJリーグYBCルヴァンカップ決勝は、攻撃的で切れ味鋭いフットボールを展開する両チームによる、ハイレベルな戦いになることが約束されている。

 今季リーグ戦での両者の対戦はどちらもロースコアの引き分けに終わっている。3月に広島で行われた試合は1-1、9月末の柏での試合はスコアレスドローだった。

 これらの結果を踏まえると、国立競技場での一戦も再び接戦になる可能性が高いといえる。特に、このような大舞台では、チームが意識的にも無意識的にも「勝ちにいく」より「負けないこと」に重点を置く傾向があるため、その慎重さが試合に影響することが多い。

 しかし、最近の柏の試合を見ている人ならわかるように、「慎重さ」は彼らの目標リストの上位にはない。実際、直近の公式戦16試合では合計52ゴールが生まれており、そのうち34ゴールを柏が決め、18ゴールを失っている。

 柏の豪快なプレースタイルを象徴するのは、何といっても川崎フロンターレとの準決勝での劇的な逆転勝利だろう。リカルド・ロドリゲス監督率いるチームは、初戦を1-3で落としたにもかかわらず、2戦目で一度はリードを許しながらも最終的に合計スコア5-4で勝利し、決勝への切符を手にした。

 川崎としても、そんな大逆転劇の可能性をまったく予期していなかったとは言えない。というのも、そのわずか2週間前のリーグ戦で、両チームは4-4という信じがたいスコアの試合を演じていたのだ。その試合後、ロドリゲス監督は「守りに入るつもりはない」と明言していた。

「1ゴール差で勝っている状態から追加点を取るというのは、やはり相手チームとしては2得点差になるわけですから、より苦しい状況になるというのは当たり前の展開です」とスペイン人監督は9月28日の試合後に語っていた。

「われわれは勝っている状態でも追加点、2点差があれば3点差を目指して攻撃を続けるというフィロソフィーを持っています」

「このようなプレースタイルのほうが選手の成長にもつながる」

今年の柏では、多くの選手が得点やアシストを記録しており、チームが「ブレーキを外した」状態でプレーしていることを示している。渡井理己や久保藤次郎が負傷離脱しているものの、チームには小屋松知哉、ジエゴ、仲間隼斗、山田雄士、瀬川祐輔といった多彩な攻撃陣がそろっている。

「このような攻撃的なフィロソフィーをわれわれが持っているのは、こちらのほうがサポーターの皆さんも喜んでくれるでしょうし、そのようなプレーを見たほうが満喫してくれると思うからです。選手の成長にもこのようなプレースタイルのほうがつながると信じているからです」と言い、ロドリゲス監督はさらにこう続ける。

「それに、このようなプレースタイルのほうが選手の成長にもつながると信じています。

「このクラブはこのようなフィロソフィーを目指しています。もちろん、ほかのタイプを持っている監督もいるかもしれませんけれども、私も監督として、このようなフィロソフィーとともにこのレイソルで戦い続けていきたいと思っています」

 一方で、ミヒャエル・スキッベ監督は、そうした哲学とは異なる考えを持つ監督の一人だと主張する人もいるかもしれない。統計データだけを見れば、その主張を否定するのは難しい。

 実際、今季の広島はJ1で最も堅い守備を誇り、35試合でわずか26失点。一方で、得点数は39点にとどまり、柏より16点少ない。

「この1週間でメドが立てば、攻撃のアクセントに」

 とはいえ、この数字だけでは実態を完全には表していない。広島も、ビッグマッチで違いを生み出せる創造的なタレントを豊富に抱えている。

 ジャーメイン良、加藤陸次樹、ヴァレール・ジェルマンの3人はリーグ戦とルヴァンカップを合わせても14得点にとどまっているが、これはレイソルの主要3トップ(垣田裕暉、細谷真大、小泉佳穂)の合計29得点と比べると控えめだ(なお、木下康介は6月にレイソルから広島へ移籍しており、広島で5得点、柏で3得点を挙げている)。

 しかし、広島には中村草太、田中聡、東俊希、トルガイ・アルスラン、中島洋太朗といった実力者が揃っており、攻撃面のクオリティには事欠かない。

 ただし、最近の過密日程と負傷者の影響で、攻撃の連携面ではやや苦しんでいる。9月23日の柏戦でのスコアレスドロー以降、3〜4日おきに試合をこなしてきたため、チームは疲労の色を隠せない。

「次の試合まで少し時間があることをすごくうれしく思っています」とスキッベ監督は、先週末の横浜F・マリノス戦(アウェイで0-3の敗戦)のあと、今週末の決勝を見据えて語った。

「本当にわれわれはここまでずっと連戦をしてきたので、非常に疲弊しているのが現状です」

「ケガ人が戻ってきている部分もポジティブです。(田中)聡にしても、(東)俊希にしても。それから(中島)洋太朗とトルガイ(アルスラン)がこの1週間でメドが立てば、攻撃のアクセントになってチャンスをたくさん作ってくれることが期待できると思います」

 このように、高い個の力を持つ広島と、守備面で比較的自由奔放な柏の姿勢がぶつかり合うことで、広島も十分に一歩も引かない戦いを見せるはずだ。両チームがそれぞれの攻撃的な長所を存分に発揮すれば、まさに“歴史に残る名勝負”となる可能性が高い。

※コメントはJリーグ公式より一部引用

(文:ショーン・キャロル)

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【了】

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