明治安田J2リーグ第37節、徳島ヴォルティスはRB大宮アルディージャに2-1で勝利し、最終節での自動昇格へ望みをつないだ。貴重な同点ゴールを決めた渡大生は、この一撃でクラブ歴代最多得点記録を更新した。近年不調に喘いでいたチームを再びJ1の舞台に導くため、最終節での大仕事に闘志を燃やしている。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
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「チーム、会社を含めてネガティブなことばっかりだったんですけど…」
「僕は徳島に来たのが2度目で、2023年からは3年いますけど、クラブはここ2年間でいろんなことがあった。チーム、会社を含めてネガティブなことばっかりだったんですけど、今の徳島は何者でもない状態。
クラブとして新たなフィロソフィーを作り上げるところだと思っているんで、今は何者にでもなれる時期だなと思っています。
ここ数年は順位的にもなかなか上にいられなかったんで、今、昇格争いをできていることがすごい幸せに感じます。
ただ、本当の意味で幸せになるのはJ1に上がってから。ケガをしてしまった永木(亮太)選手、長くいる長谷川徹選手、復活した岩尾選手、そういう人たちの思いも含めて、最後まで戦いたいと思います」
渡本人がこう語気を強めるように、近年の徳島は苦労の連続だった。
2021年にJ1で戦って以降、2022年が8位、2023年が15位、2024年が8位とプレーオフにも参戦できず、足踏み状態が続いていた。
今季もキャプテン・岩尾が長期離脱。腕章を託されることが多かった渡は、少しでもチームを引き上げようと献身的に取り組んできた。
その偉大なキャプテンが最終盤に復帰。渡の肩の荷が少し下りたのは確かだ。本人も、より点取り屋としてのタスクに集中できたという。
「この物語に没入していくことが…」
「岩尾選手の落ち着きと安心感はやっぱりすごい。僕個人的にも強い信頼感を抱いています。彼が帰ってきた時点で自分の負担が軽くなったのも確か。もうちょっと自分らしくプレーすることにウエートをかけられるなと感じます。
その岩尾選手が戻ってきたことも含めて、徳島のストーリーとしては完璧。他のことは気にせず、本当にこの物語に没入していくことが大事だと思っています」
渡が言う“ストーリー”とは最終節で長崎をホームで倒して、自動昇格を勝ち取ること。それしかない。
この日の大宮戦のような試合巧者ぶりを見せれば、決してそれも夢物語ではないと思えてくる。
「今季の日程が決まった時にラスト2つが大宮と長崎ということで、最後にドラマがあるとみんな思っていたんじゃないですかね。
今年のJ2と来年のハーフシーズンというのはイレギュラーな形。だからこそ、今季にかける気持ちは強かった。このストーリーを完結できたら一番嬉しいです」
32歳になった苦労人が最後の最後で大仕事をしてくれれば理想的。1週間後のラストマッチで渡が得点記録をさらに伸ばし、チームをJ1へと導く姿を見てみたいものである。
(取材・文:元川悦子)
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