
川崎フロンターレに加入した谷口栄斗【写真:編集部】
川崎フロンターレは6日、新シーズンに向けて始動した。今オフ、谷口栄斗はジュニアユース時代から育った東京ヴェルディを離れ、川崎への移籍を決断。生え抜きとして歩んできた時間に自ら区切りをつけ、新たな環境へ身を投じた。その選択の裏側にあった覚悟とは。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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悩み抜いた末に移籍を決断をした谷口栄斗「現実なのかどうか…」
新体制発表会見に出席した谷口栄斗【写真:編集部】
真新しい契約書にサインを書き込んでも、谷口栄斗は摩訶不思議な感覚を覚えていた。
「自分が小学生のときからお世話になってきたチームですし、移籍のサインをした後も『自分は本当に出ていくんだ』と。現実なのかどうかよくわからないというか、移籍自体が初めてだったので」
東京ヴェルディから川崎フロンターレへの完全移籍が発表された昨年12月19日。小学生年代のジュニアから所属してきた谷口は、ヴェルディのクラブ公式ホームページでこんな言葉を綴っている。
「悩みに悩んで決断しました。ヴェルディは大好きなクラブで感謝しかありません」
川崎市内で10日に行われた新体制発表会見。谷口に「悩みに悩んで」の文言に込めた思いを聞いた。
「(川崎から)オファーが来た時点で移籍をほぼ決めていたというか。決断を出すまでは早かったんですけど、何て言うんですかね、そんなに簡単な決断ではなかったので」
ヴェルディのホームページ上では、さらに「僕に残された時間は多くはありません」とも綴った。
大好きなクラブを離れる決め手「サッカー選手の寿命は…」

東京ヴェルディ時代の谷口栄斗【写真:Getty Images】
「自分はもう26歳ですし、今年で27歳になる。サッカー選手の寿命はそう長くないし、限られた時間のなかでチャレンジしたい気持ちと、タイトルを取りたい気持ちが強くて移籍を決めました」
実際にヴェルディのファン・サポーターへ届けたメッセージのなかで「この先のサッカー人生で、シャーレを掲げたい、その先の景色が見たいという目標を持っています」とも綴っている。
谷口が言及した「その先の景色」のなかには、ヴェルディユース所属だった2018年1月に招集されたU-18日本代表を最後に、縁がない状況が続く「日の丸」を背負っての戦いも含まれている。
「代表もそうですし、またひとつ評価を上げたい、殻を破りたいという思いも自分のなかにありました」
谷口のもとには実は2024シーズンのオフにも、川崎から獲得オファーが届いている。
熟慮した末にヴェルディへの残留を決めた谷口は、トップチーム昇格がかなわずに国士舘大学へ進み、在学中に高い評価を勝ち取って加入してから4シーズン目となる戦いへこんな言葉を残していた。
「相手にするとすごく嫌なチームではあった」
川崎フロンターレの練習に姿を見せた谷口栄斗【写真:編集部】
「うれしいことにそういったお話(オファー)をいただいたなかで、ヴェルディに残ったからにはいつもとは違ったシーズンの責任といったものが伴う。選手として、そういう思いをもってプレーしたい」
昨シーズンのリーグ戦で、谷口は出場停止だった2試合と体調不良だった最終節を除く35試合に出場。夏場に綱島悠斗(現ロイヤル・アントワープ)や千田海人(現鹿島アントラーズ)が移籍したヴェルディの最終ラインを支え続けた。
2年越しのオファーを実らせた川崎の竹内弘明強化部長は、前出の新体制発表会見の席で「満を持して」という表現を用いて谷口の加入を歓迎。そのうえで次のような期待を寄せている。
「試合に出場するたびに存在感を高めて、今後も川崎フロンターレでリーグ屈指のセンターバック(CB)として、リーダーシップ、守備能力、ビルドアップ能力をさらに成長させ続けてくれると思っている」
始動して間もない川崎の一員として、谷口もすでに明確なイメージを思い描いている。
「得点力と攻撃力はリーグ屈指だと思いますし、相手にするとすごく嫌なチームではありました」
谷口がこう語ったように、昨シーズンの川崎は総得点でリーグ最多の「67」を叩き出した。対照的に総失点は実に「57」と、降格したアルビレックス新潟、湘南ベルマーレに次ぐ多さだった。
屈指の攻撃力を誇る一方で、守備の改善が必須の川崎へ自分が入れば。谷口はこう語る。