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「本当に出ていくんだ」谷口栄斗の川崎フロンターレ移籍は簡単ではなかった。盟友にだけ打ち明けていた思い「関りが深いので」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images,Editor

川崎フロンターレに加入した谷口栄斗
川崎フロンターレに加入した谷口栄斗【写真:編集部】



 川崎フロンターレは6日、新シーズンに向けて始動した。今オフ、谷口栄斗はジュニアユース時代から育った東京ヴェルディを離れ、川崎への移籍を決断。生え抜きとして歩んできた時間に自ら区切りをつけ、新たな環境へ身を投じた。その選択の裏側にあった覚悟とは。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
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谷口彰悟と「比べられるのはちょっと嫌」

川崎フロンターレに加入した谷口栄斗
川崎フロンターレの練習に臨む谷口栄斗【写真:編集部】

「個人的にはここ2年、守備能力で成長できたと思うので、そこの部分でしっかりチームに貢献したい」

 CB陣をけん引し、森保ジャパンにも名を連ねていた高井幸大(現ボルシアMG)が昨年7月にトッテナム・ホットスパーへ移籍。昨シーズンのオフには車屋紳太郎が現役引退を表明し、ジェジエウも退団した。

 再編成が急務だったCB陣のなかで、自らが果たすべき役割を谷口はこう語っている。

「厳しさや球際の部分での激しさが、いまの川崎に必要というかすごく大事になってくる。僕がそれらをしっかりとプレーで体現して、チームに新しい風を吹かせたいし、刺激になっていきたい」



 2022シーズンまで川崎の最終ラインの中心として君臨。34歳のベテランとなったいまも森保ジャパンで活躍する谷口彰悟を「大学時代から、すごく憧れていた選手なんです」と打ち明けながら谷口が言う。

「なので、比べられるのはちょっと嫌な部分はありますけど、しっかりと超えていけるように。守備の部分で安定感を川崎フロンターレにもたらしていたと思いますし、実際に優勝したときも最少失点だった、と」

 川崎が3度目のリーグ優勝を果たした2020シーズンの総失点はリーグで2番目に少ない「31」だった。そして2度目の連覇を達成した2021シーズンのそれは、谷口が言及したように同最少の「28」だった。

 覇権奪回へ向けて「個人的には全試合に出場して、1試合平均で1失点未満」と具体的な目標を思い描く谷口のなかで、いまも強く印象に残っている川崎との一戦がある。

谷口栄斗が「移籍するかも」と打ち明けていた相手とは?

川崎フロンターレに加入した谷口栄斗
川崎フロンターレの練習で笑顔を見せる谷口栄斗【写真:編集部】

 2024年11月30日のJ1リーグ第37節。ヴェルディのホーム、味の素スタジアムで谷口は49分、79分、83分とすべてセットプレーからの流れのなかで自身初のハットトリックを達成している。

 川崎のFW山田新(現・セルティック)もハットトリックを達成し、最終的には4-5で競り負けた。谷口は「ハットトリックを返されて、あまりいい試合ではなかった」といまも苦笑する一戦でもある。

「逆に僕にハットトリックを達成されて、守備がちょっと緩いな、という印象を受けていました」

 守備力を請われて川崎の一員になる直前。オファーを受けた時点で「移籍するかもしれない」と谷口が思いを打ち明けたヴェルディのチームメイトがいた。ひとつ年下の盟友、MF森田晃樹だった。



 ヴェルディの副キャプテンとして、谷口は3シーズンにわたってキャプテンの森田を支え続けた。

 16年ぶりのJ1昇格を勝ち取った2023シーズン。堂々の6位で残留した2024シーズン。夏場に主力4人が移籍したチームを必死に支えて17位で残留した昨シーズン。思い出が走馬灯のように蘇ってくる。

 森田を「コウキ」と呼ぶ谷口が、真っ先に「移籍」の二文字を伝えた理由を「関わりの深い選手だったので」と明かす。そして森田自身は他クラブからオファーを受けながら、今シーズンの残留を決めた。

 思い描いている目標から逆算して、選手個々がそれぞれ下す決断だと森田は強調している。

ともにプレーした盟友のイジりに対して「僕がおちょくります」

東京ヴェルディ、谷口栄斗と森田晃樹
東京ヴェルディ時代の盟友である谷口栄斗(左)と森田晃樹(右)【写真:Getty Images】

「僕はその決断を尊重したいと思いますし、それが正解になってほしいと祈っています」

 森田は続投する城福浩監督のもとで、さらに成長できるという思いから残留した。谷口も然り。ヴェルディへ感謝の思いを抱きながら、自分は別の道を歩む必要があると決断して袂を分かち合った。

「一人の選手として、一人の人間として成長するためにはそこ(感謝の思い)に縛られてはいけない。同じ環境にいると成長の曲線がすごく限られてくると思うので、外に出て成長したいと強く思いました」



 ヴェルディの始動時に、森田は「非常に楽しみにしているというか、勝って(谷口を)おちょくりたい」と川崎戦への抱負を語っている。盟友の愛ある“イジり”は、すでに谷口の耳にも届いていた。

「おちょくる、ですよね。いや、僕がおちょくります」

 ヴェルディに続いて、川崎では空き番となっていた「3」を背負う最終ラインのリーダーと、かつてラモス瑠偉さんが背負った「10」を継承したヴェルディの司令塔。畏敬の念を抱き合う2人の初対決は、3月18日に味の素スタジアムで行われる百年構想リーグの地域リーグラウンドEASTグループ第7節で実現する。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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【了】

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