9年ぶり9度目のJ1リーグ制覇を成し遂げた鹿島アントラーズ。近年はタイトルと無縁のシーズンを過ごすことが多かった常勝軍団は、どのようにして強さを取り戻したのか。Jリーグ開幕当時から続く歩みを振り返りながら、かつての黄金期と現在のチームにある共通点、今に繋がる変化などを、長年鹿島を取材し続ける元川悦子氏の言葉から探っていく。今回は第6回(全6回)。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
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来シーズンへ向けた補強と編成の行方
その柴崎が使えるかどうかにもよるが、ボランチにはやはりボールを動かせるタイプの人材が1枚はほしい。鬼木監督のサッカーを完成に近づけるためにも、そこは必要なピースではないか。
今季途中の補強はなかったものの、中田FDらが来季に向けて何らかのアクションを起こさないとも限らない。
鬼木監督の古巣・川崎フロンターレから選手が移籍してくる可能性もゼロとは言い切れないだけに、しっかりと状況を見ていくべきだろう。
そして守備陣だが、GK早川友基をはじめ、植田、キム・テヒョン、濃野公人、小川諒也、小池といった今季終盤のレギュラークラスの残留はほぼ確実。そこにケガで戦列を離れていた関川郁万、安西幸輝が戻ってくる。
途中出場組だった津久井佳祐、千田海人、溝口修平らも定位置争いに絡む形になりそうだ。
守備の要である早川と植田は絶対的存在と言えるが、それ以外は誰が先発になるか分からない。
特に関川とキム・テヒョン、安西と小川の競争は熾烈。鬼木監督はそういう面々をうまく組み合わせながら使っていく術に長けてはいるが、それを推し進めて、より多彩な構成で力を保てるようにしていくことが肝要だ。
成熟と底上げの先に描く未来
こうした面々に求められてくるのが、指揮官が追い求めるボールを動かせるサッカースタイルの成熟度アップである。
前回触れた通り、今季は最終節・横浜F・マリノス戦で1つの完成形が見えたが、それをつねにできるようにしていくのが2026年の重要命題だ。
内容的にも相手を凌駕できるチームに飛躍していくために、全員がボール扱いの技術レベルを高め、戦術眼に磨きをかけなければならないだろう。
そのうえで、さらに注文したいのは、アカデミー出身の若手の台頭である。
今季は舩橋、徳田らがインパクトを残し、津久井や溝口らも出番を増やしたが、まだまだ絶対的な存在になれていないのも事実だ。
過去を見ても、鹿島の場合、アカデミー出身者で大成功したのは、野沢拓也、土居聖真(モンテディオ山形)、鈴木優磨、上田綺世(鹿島学園高校・法政大学を経由)など数えるほどしかいない。
そこはクラブ側も長く課題と捉えていて、力を入れてきた部分。2025年はJユースカップで優勝。12月の高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2025ファイナルにも勝ち進むようなレベルまでたどり着いたが、そういう中からトップに上がってくる吉田のような選手がブレイクしてこそ、新たな鹿島を築くことができるし、常勝軍団の完全復活にも近づける。
昇降格のない百年構想リーグで新たな戦力も試しつつ、底上げを図り、26/27シーズンは複数タイトルを獲得できれば本当に理想的。そんな明るい未来を大いに期待したいものである。
(取材・文:元川悦子)
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2022年カタール大会まで8回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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