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J1 7時間前

「オニさんが来て本当に変わりました」鹿島アントラーズ、田川亨介がエゴを捨てた一瞬の決断。「たとえ先発じゃなくても…」【コラム】


鹿島アントラーズの田川亨介【写真:Getty Images】



 明治安田J1百年構想リーグ第7節が18日に行われ、鹿島アントラーズはFC町田ゼルビアに3-0で勝利した。激しいポジション争いのなかで巡ってきたチャンスを、田川亨介は確実にものにした。際立ったのは、チームを勝利へ導く判断力と献身性。成熟したプレーが、充実の鹿島にさらなる選択肢をもたらしている。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
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「オニさんが来て本当に変わりました」

鹿島アントラーズ、鬼木達監督
鹿島アントラーズの鬼木達監督【写真:Getty Images】

 サガン鳥栖のアカデミーから2017シーズンにトップチームに昇格。2019シーズンからFC東京、さらにポルトガルのサンタ・クララ、スコットランドのハート・オブ・ミドロシアンFCでプレーした。

 50mを6秒で走破するスピードは、相手の最終ラインの裏へ抜け出す得意のプレーだけでなく、身長181cm・体重77kgのサイズを稼働させ、前線で献身的に繰り返す泥臭いプレーでも田川の武器になってきた。

 しかし、2024年夏に加入した鹿島での日々は決して思い描いた通りには進まなかった。怪我もあって同シーズンのリーグ戦は出場わずか3試合。すべて途中出場で89分のプレータイムに終わった。

 昨シーズンは25試合に出場したものの、そのうち先発は8試合。プレータイムの合計も776分間に留まり、ベンチ入りメンバーから外れた試合も11を数えた。それでも田川はこう振り返る。



「昨シーズンの1年間で、自分自身のサッカー観を含めてすごく成長させてもらったと思っています。プレーの幅もさらに広がったし、自分はもっと、もっとできるんだ、という自信にもつながっています」

 プレーの幅の何がどのように広がったのか。具体的な部分を問われた田川はさらにこう続けた。

「裏抜けが多かった自分が、ちょっと落ちてボールをはたいて、そのなかで自分のリズムを作るプレーはいままであまりやらなかった、というのはありますね。ただ、まだありますよ。いろいろと」

 こう語った田川は守備に対する考え方や、常に強気でプレーするマインドなどをあげながら、笑顔で「そういったところはオニさんが来て本当に変わりました」と昨シーズンから指揮を執る鬼木監督に感謝した。

「たとえ先発じゃなくても…」

鹿島アントラーズ

熾烈なポジション争いが続く鹿島アントラーズのフォワード陣【写真:Getty Images】

「確か去年の夏前くらいに『何か難しいプレーをやろうとするよりもシンプルに、どんどん走った方がいい』といった感じで言われて。僕もいろいろと迷っていた時期があったので、それでけっこう吹っ切れた感じがあります。(オニさんの)マネジメント力は本当に高いし、いまはすごくいい経験をさせてもらっています」

 鹿島イズムの体現者の鈴木優磨、昨シーズンのJ1リーグ得点王のレオ・セアラとの2トップ争いは昨シーズンから熾烈を極める。それでも吹っ切れた田川は「それほど深くは考えていないですよ」とこう続ける。

「たとえ先発じゃなくても、僕はまったくかまわない。役割をしっかりと把握してプレーして、あとは自分がアクションを起こせば何かが起こる、という感覚があるなかで、常に同じ熱量でプレーできています」

 百年構想リーグ開幕前に見舞われた捻挫はいわば小休止。途中出場から9シーズンぶり9度目のリーグ優勝の瞬間に立ち会えた最終節を含めて、昨シーズンから続く理想的な流れのなかに田川もいる。



 88分から百年構想リーグデビューを果たした浦和戦。根本健太にトップスピードでプレスをかけてバックパスに狂いを生じさせ、決勝点を生んだ左コーナーキック(CK)獲得へと導いたのは田川だった。

 迎えた町田戦ではレオ・セアラと2トップを組んで先発。左サイドハーフに回った鈴木が開始5分に先制点を決めた流れを巻き戻していけば、開始1分に田川が見せた闘争心あふれるプレーに行き着く。

 縦パスのこぼれ球をまず中山と競り合い、前へこぼれたボールを今度は岡村大八と激しく競り合いながら右CKを獲得した。流れを引き寄せたと言っていいプレーを田川も胸を張って振り返った。

「いろいろな意味で違いは出せる」

田川亨介 鹿島アントラーズ

鹿島アントラーズの田川亨介【写真:Getty Images】

「自分の持ち味を出したいと思っていましたし、ああいう感じでチームを助けられたら、という思いでした。ああいうプレーで自分のリズムも作っていけたら一番いいし、チームの士気も上がるので」

 WESTグループを含めて、鹿島の総得点13は最多を数える。鈴木とレオ・セアラがともにリーグ2位タイの4ゴールをマークする最前線に田川が加わり、さらに変幻自在な布陣を組めるようになった。

「いろいろな意味で違いは出せると思うので、自分の特徴を最大限、出していければいいかな、と」



 左利きのストライカーが加わる利点を田川はこう語った。オフに受けた手術で左肩脱臼を完治させた復帰戦で、鈴木の先制点をアシストした松村を含めてさらに隙のない陣容になった鹿島に笑顔で言及した。

「いまは誰が出ても全員がいいパフォーマンスを出せているので、本当にいい流れだと思っています」

 歓喜のリーグ優勝を通過点にしながら、鹿島は完成度をさらに高めている。若手や中堅、ベテランの全員が躍動している王者に、完璧なアシストを引っさげ、満を持して田川も加わろうとしている。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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【了】

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