フットボールチャンネル

J1 7時間前

「何が一番きつかったかと言えば…」安西幸輝が語る過酷な日々。新しい鹿島アントラーズで挑む「奪い返しにいく」決意とは【コラム】

安西幸輝 鹿島アントラーズ
鹿島アントラーズでプレーする安西幸輝【写真:Getty Images】



 明治安田J1百年構想リーグは4月4日に第9節を各地で行い、鹿島アントラーズは水戸ホーリーホックと対戦した。J1史上初の『茨城ダービー』に臨んだ“常勝軍団”は、1-1のPK戦の末に敗北。この試合で308日ぶりに復帰した安西幸輝が、自身のプレーを自虐的に振り返りながらも、今後の奮起を誓った。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
——————————

「郁万みたいに3-0で…」

水戸ホーリーホック対鹿島アントラーズ
J1百年構想リーグ第9節の模様【写真:Getty Images】

 思い描いてきた復帰戦のイメージとかなりかけ離れていた。まずスタジアムと状況が違った。

「満員のホームスタジアムで、郁万みたいに3-0でバトンタッチしてほしかったんですけどね」

 鹿島アントラーズの安西幸輝が苦笑しながら言及した関川郁万は、3月18日のMUFGスタジアム(国立競技場)でのFC町田ゼルビア戦で、左膝複合靱帯損傷の大怪我から319日ぶりに復帰していた。

 町田のホームゲームながら、鹿島のファン・サポーターが数多く駆けつけた一戦。関川は大量3点をリードして迎えた後半アディショナルタイム3分に、レオ・セアラとの交代でピッチへ戻っていった。

 鬼木達監督に煽られたスタンドから、エールと関川のチャントが響きわたってくる感動的な光景。自分が復帰するときも、とイメージを膨らませていた安西も、ともに長いリハビリを積んできた関川に続いた。



 左膝前十字靱帯損傷から308日ぶりに復帰した舞台は、4日の明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンドEASTグループ第9節。場所は小雨が舞う水戸ホーリーホックのホーム、ケーズデンキスタジアム水戸だった。

 しかも水戸のJ1初昇格に伴い、リーグ戦で初めて実現した茨城ダービー。番狂わせを狙う水戸が34分に渡邉新太のゴールで先制。59分に2度目の警告を受けたダニーロが退場になりながらリードを死守していた。

 迎えた75分。直前に警告を受けていた左サイドバック(SB)の溝口修平に代わり、そのまま同じポジションに入った安西に対して、鬼木監督が授けた指示は単純明快だった。安西が振り返る。

「あれを通せなかったら僕じゃない」

鹿島アントラーズ、鬼木達監督
戦況を見つめる、鹿島アントラーズの鬼木達監督【写真:Getty Images】

「ボールをためるとか相手を引きつけるよりも『一人多いからどんどんゴールに向かっていけ』と」

 4分後の79分に絶好の機会が訪れた。関川からパスを受けた安西が、水戸の真瀬拓海との1対1から縦へ仕掛けるもバランスを崩し、イメージとは対照的にボールはそのままゴールラインを割った。

「ファーストプレーでぶち抜いてやろうと思ったら足が動かなくて、ボールが外に出ちゃいました」

 85分にも関川の縦パスに反応。真瀬の背後を突いて左側のポケットへ侵入し、怪我を負っていた左足でグラウンダーのクロスを送った。ターゲットはゴール正面に走り込んでいたレオ・セアラだった。

「あれはレオ(・セアラに)通したかったし、左膝が治っていれば通っていたかな、と。まだちょっと違和感があるんですけど、それでもあれを通せなかったら僕じゃない、と思っているので」



 戻ってきた板倉健太が懸命にブロック。左コーナーキック(CK)へと変わった場面を悔やんだ安西は、直後の86分には鈴木優磨とのワンツーからペナルティーエリアに迫り、右足を迷わずに振り抜いた。

 しかしイメージ通りにはならない。当たり損ねのシュートはゴールの枠を力なく外れてしまった。

「やばいですよ、あれ。当たっていないですから。パスを刺すまでというか、ワンツーをもらうまではよかったのに、打った瞬間にもう笑っちゃいましたからね。酷すぎて。ちょっと力みすぎました」

 画竜点睛を欠いたプレーを自虐的に振り返った安西は、さらにこんな言葉を紡いでいる。

「何が一番きつかったかと言えば…」

鹿島アントラーズDF安西幸輝
2025シーズンの安西幸輝【写真:Getty Images】

「最近は夢というか、ゴールを決めて復帰する、という光景をずっとイメージしていたので。何か数字を残してやろう、という気持ちが空回りしちゃって。それが頭をよぎりすぎて力んでしまいました」

 30歳になった昨年5月31日。敵地でのガンバ大阪戦で左膝を痛めて、60分に津久井佳祐と交代した。診断の結果は左膝前十字靱帯損傷の大怪我。全治までの期間を含めた詳細は非公表とされた。

 2023シーズンの終盤からリーグ戦で65試合続けて先発。そのうち58試合でフル出場を果たしていた鉄人を襲った悪夢。手術をへて臨んだリハビリの日々を、安西は「きつかったですよ」と振り返る。

「何が一番きつかったかと言えば、忘れられるのがきついというか。過去の栄光じゃないですけど、いままで僕が引っ張ってきたポジションなのに、と思っていたら、どんどん新しい選手が出てきたので」



 鹿島はすぐに元日本代表の小川諒也をベルギーのシント=トロイデンから獲得。昨シーズン開幕前に横浜F・マリノスから加入していた小池龍太、アカデミー出身の溝口との併用で残るシーズンを乗り切った。

 復帰を目指して懸命にリハビリを積み重ねながら、安西は心をピッチ上に移して一緒に戦っていた。

 たとえば最終節のひとつ前の東京ヴェルディ戦。負けが許されない一戦を敵地の記者席で観戦していた安西は何度も立ち上がっては大声を張りあげ、机をバンバンと叩いてチームを鼓舞していた。

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!