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J1 2時間前

「評価は自分的に低い」浦和レッズ、植木颯が感じたプロ選手の難しさ。「びっくりした」デビュー戦での気づき【コラム】

シリーズ:コラム text by 河治良幸 フリーライター photo by Getty Images
川崎フロンターレ戦でプロデビューを飾った植木颯
川崎フロンターレ戦でプロデビューを飾った植木颯【写真:Getty Images】



 長年に渡りJリーグを追う河治良幸氏が、5日に行われた明治安田J1百年構想リーグ第9節、浦和レッズ対川崎フロンターレを現地取材。この試合でプロデビューを飾った大卒ルーキーの植木颯に話を聞いた。ピッチで感じた難しさとは。(取材・文:河治良幸)[1/2ページ]
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浦和レッズに起きたハプニング

浦和レッズのダニーロ・ボザ
浦和レッズのダニーロ・ボザ【写真:Getty Images】

 川崎フロンターレとの一戦は、浦和レッズにとって是が非でも勝ち点3を手にしなければならない試合だったが、試合前に宮本優太、試合中にダニーロ・ボザにアクシデントが発生し、柴戸海をボランチからセンターバック(CB)に下げるという緊急事態となった。

 そこでピッチに送り出されたのが、プロデビュー戦となる大卒ルーキーの植木颯だった。

 勝ち点11で並ぶ両者の直接対決は、序盤から慌ただしい展開となった。

 開始3分、浦和はマテウス・サヴィオのフリーキックから根本健太が押し込み、VARによる長い確認の末に先制。しかし、その直後の9分には左サイドからのクロス対応でオウンゴールを喫し、すぐさま追いつかれる。



 波乱含みな序盤の攻防のなかで、浦和は最終ラインのボザが負傷交代を強いられるアクシデントに見舞われた。

 投入された植木颯本人も「最初はびっくりした」と率直に振り返る。

 沖縄キャンプの練習試合で負傷し、開幕に出遅れた植木は練習復帰からアピールを続け、デビューに向けて準備をしていた。

 想定外のタイミングではあったが「出るからにはしっかりチームの力になろうと思って、今持てる自分の最大限を出そうと思ってピッチに立ちました」と語った言葉に、このルーキーの覚悟がにじむ。

冷静な自己分析「そこに対しての評価は…」

冷静に自己分析をする植木颯
冷静に自己分析をする植木颯【写真:Getty Images】

 植木はまず、ボランチとしての役割を冷静に整理していた。

 相手の前線の間、いわゆる中盤の中央レーンに立つことで、川崎のFWを引きつけ、CBに時間を作る。

「自分がもらえればそれで良いし、自分を気にして相手のFWが締めると思うので、CBに時間ができて、他の選手にも時間ができる」。

 この認識は非常に明確で、試合の流れを読みながら自らの立ち位置を選んでいたことがうかがえる。



 ただ、本人は強みであるビルドアップ面の出来には決して満足しておらず、「そこに対しての評価は自分的に低い」と自己採点は厳しかった。

 前半は川崎に押し込まれ、浦和がなかなかボールを保持できない時間が続いたこともあり、「ボールを触る回数も多くできず、少なかった」と反省を口にしている。

 プロ初出場の高揚感よりも、自らがゲームにどれだけ関われたかを冷静に見つめている点に、植木の成長志向が表れている。

ベテランが称えた攻撃的な姿勢

柴戸海 浦和レッズ
植木颯を称えた柴戸海【写真:Getty Images】

 それでも後半、彼は確かな存在感を示した。立ち上がり早々、左サイドを起点に浦和がゴールネットを揺らした場面では、植木自身も前線へタイミング良く飛び出してシュートに持ち込んだ。

 そこからオナイウ阿道が絡み、金子拓郎が流し込んだシーンはVAR確認の結果、オフサイドで取り消された。

 それでも「自分が前に絡んでシュートで終われたのは良かった」と振り返る植木は再度、決定的な飛び出しで56分の勝ち越しゴールを演出する。

 浦和の勝ち越し点の場面。自陣でしのいだ直後、キャプテンの渡邊凌磨にボールが入ると植木は「あそこ(左サイドの前方)が空いているなって思ったので、しっかりあそこに走り込んだ」と迷いなく前進。オナイウからのパスを受けると、ゴール前の状況を瞬時に把握した。

 ファーサイドの金子には相手ディフェンスがついていた一方、マイナス方向にオナイウのスペースが見えていた。

「ボールの移動中に感じていたので、そこに優しく落とせた」。この冷静な判断から生まれたクロスが、結果的に金子のゴールを呼び込んだ。

 直接アシストしたわけではないため記録に残らないが、状況認知、スペースへのランニング、ラストパスの選択までボランチでありながら、ゴールに深く関与したプレーだった。



 ボランチのコンビを組む安居海渡がどっしりと構える分、植木は左サイドの連係にも気を配っていた。

 左CBの根本と斜めの関係を取ることで、サイドバック(SB)の長沼洋一がマテウス・サヴィオに絡める位置まで引き上げた。

「しっかり自分がバランスをとって、やりやすく、気持ちよくプレーできるように」

 デビュー戦とは思えない落ち着きで、個人のプレーだけでなくチーム全体の構造を見ながら振る舞っていた点は見逃せない。

 植木のパフォーマンスについて、ボランチから急遽、CBに下がった柴戸も高く評価。ポジション争いのライバルにもなる関係だが、柴戸は植木の確かなパフォーマンスに刺激を得ていた。

「遜色なくやってましたし、練習からも何も問題は無かった。彼の良さも出てたと思います。もっともっと経験を積んで、いい選手になるんじゃないかと思います」。

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