
川崎フロンターレ戦でプロデビューを飾った植木颯【写真:Getty Images】
長年に渡りJリーグを追う河治良幸氏が、5日に行われた明治安田J1百年構想リーグ第9節、浦和レッズ対川崎フロンターレを現地取材。この試合でプロデビューを飾った大卒ルーキーの植木颯に話を聞いた。ピッチで感じた難しさとは。(取材・文:河治良幸)[2/2ページ]
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プロの厳しさを突き付けられた瞬間

試合終了間際に勝ち越しゴールを決めた河原創【写真:Getty Images】
一方で、この試合は若きボランチにプロの厳しさも突きつけた。
2−2で迎えた後半アディショナルタイム、浦和も攻撃的なカードを切って勝ち点3にこだわる中で、全体がオープンになった状況で、浦和が右側に寄った反対側を川崎に狙われる。
途中から右サイドハーフになっていた脇坂泰斗を起点に、右SBの山原怜音がボールを持つと、プレッシャーをかける選手が誰もいない中で、浦和は左SBの長沼洋一が前にでざるを得なくなる。
脇坂が広く開いたスペースに出ようとすると、植木がマンツーマン気味に捕まえに行ったが、それは経験豊富な川崎MFの罠だった。
このシーンの背景に関して、脇坂はこう語ってくれた。
「僕が右に入った時に景色が変わって感じたのは、自分たちの左サイドにボールがある時に、浦和さんが相当圧縮して、うちの右サイドにボール持って来れば、すごく広いスペースが空いてるなという感覚があったので。ボランチの選手や左の(宮城)天だったりに、早くこっちもボールを持ってこいと言っていました」
「(河原)創から僕にボールが入って、やっぱり浦和さんは横スライドするので、一瞬、横のディフェンスラインが伸びる。そこで怜音に出して広げて、そこから僕があえて外に広がる立ち位置を取ることで、さらに間が空いたと思うので。
そこで怜音が僕に出せば遅攻になったと思うし、そこで浦和さんが警戒して中をちょっと開けてしまったところで中央のパスコースが開いたと思う」
プロのピッチだからこそ感じたこと

落胆する浦和レッズの選手と喜ぶ川崎フロンターレの選手【写真:Getty Images】
結果的に山原からのミドルパスを橘田健人がスルーし、前線のラザル・ロマニッチが浦和のディフェンスとコンタクトしたこぼれを河原が決める形になり、アンラッキーな要素もゼロではない。
しかし、あの時間帯の浦和の守備的な構造を相手側の狙い通りに使われたことは、攻守の要となるボランチのポジションを担う植木にとって、高い授業料と引き換えに得られた教訓にもなった。
「あそこは脇坂選手のランニングに自分がついていて、ついていく前に、近くの人に一言、”締めておいて”と声がかけられていれば、また結果が変わったのかなと思うので。
自分が付いていくにしても、周りの選手とコミュニケーションを取るべきだったのかなと、今は感じています」
得点に絡めた飛び出しや自分の中では及第点ではなかったというビルドアップなど、1つ1つの持ち味というのも大事だが、ボランチというのは90分をトータルして、直接的に関わらないところの管理が、勝敗を分けたりする。
その肝となるコミュニケーションの部分は「改めて大事だなって感じました」と植木。練習と違って、なかなか声が通らない環境における立ち振る舞いも、試合に出ないことには学べない。
「またチャンスをもらった時に、今日出た反省をしっかり活かしていきたい」
ほろ苦いデビューとなったが、この川崎戦で大卒ルーキーが得た経験が、残りのハーフシーズン、さらには2026/27シーズンにどう活かされていくのか楽しみだ。
(取材・文:河治良幸)
【著者プロフィール:河治良幸】
東京都出身。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で日本代表を担当し、プレー分析を軸にグローバルな視点でサッカーの潮流を見続ける。セガ『WCFF』の選手プロフィールを担当。著書に『勝負のスイッチ』『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』『サッカー番狂わせ完全読本ジャイアントキリングはキセキじゃない』がある。X:@y_kawaji
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