
鹿島アントラーズの植田直通【写真:Getty Images】
劣勢の前半を跳ね返し続けた鹿島アントラーズ。最終ラインで奮闘した植田直通は、「やらせるわけにはいかなかった」と振り返った。だが、その言葉の裏にあるのは単なる責任感ではない。進化を続ける王者の中で、彼が担う役割は変わりつつある。現場取材から、その真意に迫る。(取材・文:元川悦子)
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好調の裏にあるチーム全体の意識

鹿島アントラーズの早川友基【写真:Getty Images】
ここまで6ゴールのレオ・セアラ、5ゴールの鈴木優磨という2大エースの決定力は特筆すべきところがあるが、それ以上に大きいのが堅守だ。
鹿島の通算失点はわずか「5」。1桁失点は鹿島とFC東京だけで、それ以外のチームは全て2桁以上の失点数を記録している。
この日、鹿島に敗れた川崎の失点数はリーグワーストタイの「18」という数字で、この状況が上位進出を阻んでいるのは明らかだ。
鹿島の場合、2025年JリーグMVPで日本代表のGK早川友基が君臨していることがまず非常に大きい。
それに加えて、チーム全体に高度な守備意識が浸透している点も見逃せない。
これまで「守りが課題」と言われた右サイドバック・濃野公人も「自分が守りさえすればチームは勝てるし、総失点数も5で抑えられる。これが本来あるべき姿なのかなと思います」と神妙な面持ちで話したほど、「目の前の敵を止める」「守り切る」ということに、選手1人ひとりが強くこだわっているのだ。
「意識はかなり高くなっている」

鹿島アントラーズの植田直通【写真:Getty Images】
「ディフェンスの選手だけじゃなく、全員が『失点しない』という意識はかなり高くなっている。練習の中でも1つひとつの球際だったり、プレッシャーに行くスピードだったりは日に日に上がっていると思います。
『(優勝した)昨年の自分たちを超えていく』という気持ちが強いから、そうなっているんだと思います」
植田も毅然と言うように、鹿島の堅守は一段と高い領域に到達しつつあるのだ。
植田という百戦錬磨の守備リーダーがいるからこそ、強固な組織が確立できているのは間違いない。
ケガから復帰途上の関川郁万の状態もまだ不安定ということもあり、彼にはこの先もまだまだフル稼働を続けてもらうしかない。
「連戦の方が調子がいい」と言い切るくらいの頑丈なフィジカルを持ち合わせている植田なら、百年構想リーグも、その先の26/27シーズンも安定したパフォーマンスを見せられるはずだ。
大津高校の先輩・谷口彰悟も30代突入後、老獪さに磨きをかけているが、植田も同じような足跡を辿ることが十分可能ではないか。
ここからが彼の全盛期になると言っても過言ではないだろう。
(取材・文:元川悦子)
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2022年カタール大会まで8回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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