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「もう後がない」ベガルタ仙台、南創太は“あの時の”トラウマに打ち勝った。左足に宿る本田圭佑からの金言とともに【コラム】

ベガルタ仙台 南創太
ベガルタ仙台でプレーする南創太【写真:Getty Images】



 南創太が雪辱を果たした。ザスパ群馬戦でハーフタイム交代を告げられ、失意のただ中にいた19歳が湘南ベルマーレを相手に決勝ゴール。「今日やれなかったらもう後がない」と自らに発破をかけて臨んだ一戦で、確かに息づく元日本代表MF本田圭佑からの金言。レジェンドの言葉は、日本サッカーの明日を担う若者の胸の中でしっかり脈打っていた。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]

明治安田J2・J3百年構想リーグ・地域リーグラウンドEAST-A第17節
湘南ベルマーレ 0-2 ベガルタ仙台
レモンガススタジアム平塚

南創太のトラウマとは?

ベガルタ仙台 サポーター
アウェイに詰めかけたベガルタ仙台のサポーター【写真:Getty Images】

 心の片隅に恐怖心を潜ませながら、ベガルタ仙台の南創太は湘南ベルマーレのホーム、レモンガススタジアム平塚のピッチに立ち、前半のキックオフを告げる主審のホイッスルを聞いた。

 16日に行われた明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドEAST-Aグループ第17節。宮崎県の強豪、日章学園高校から加入して2シーズン目のアタッカーは3度目の先発を果たしていた。

 森山佳郎監督から任された右ウイングバックは、ザスパ群馬との第13節と変わらない。

 このときは途中出場したモンテディオ山形との第12節で、両チームともに無得点の均衡を破るプロ初ゴールを決めた活躍が評価されて、2度目の先発を勝ち取っていた。



 しかし、1点ビハインドで迎えたハーフタイムに、五十嵐聖己(せな)との交代を告げられていた。

 攻守両面で何もできなかった群馬戦の前半がいまもトラウマとして残る。南が恐怖心の正体を明かす。

「あれだけの悔しさは、もう絶対に経験したくない。今日もそうなるかもしれない、という怖さもありましたけど、怖がってばかりいたら何の意味もないので。試合に入ってからは強気でプレーしよう、と」

 同時に自分のなかで退路も断った。キックオフ前から南は自らにこう言い聞かせていた。

「今日やれなかったらもう後がない」

ベガルタ仙台 南創太
ゴール後の南創太【写真:Getty Images】

「自分にすごくプレッシャーかけました。今日やれなかったらもう後がない、と。群馬戦の経験から、ああいうプレーをしたら前半で交代と、厳しく判断されるというのがひとつの指標になっていたので」

 対面にきた湘南の左ウイングバック、石橋瀬凪(せな)の存在も南の闘志をかき立てた。

「自分のところでやられたくない、という意識で試合に臨みました。何本か縦に突破されましたけど、他の選手たちが自分のミスを拭ってくれたので、何とか結果で恩返しをしたいと思っていました」

 同じ2006年生まれで、U-21日本代表に名を連ねる石橋とのマッチアップを南はこう振り返る。

「ボールをもったらとにかく仕掛けよう、と。(対面の)相手もドリブラーですし、やられるのは本当に嫌だったし、相手にしても仕掛けられるのは嫌なはずなので、あの1本だけでしたけど本当によかったです」



 南が言及した「あの1本」が生まれたのは、両チームともに無得点で迎えた72分だった。

 敵陣の右タッチライン際で、キャプテンのDF菅田真啓からパスを受けた南は、内側にいたシャドーの武田英寿へ一度ボールを預けた。そして、自ら呼び込むようにリターンをもらった直後だった。

 右タッチライン際から中へカットインした南が、ドリブルを一気に加速させていった。

 直前の68分、仙台のFW岩渕弘人に対する得点機会阻止で湘南のMF松本大弥が一発退場。石橋に代わってDF下口稚葉が投入されたものの、湘南の選手たちは明らかに混乱をきたしていた。

「試合中に『もう一回ちょうだい』と…」

ベガルタ仙台の武田英寿
ベガルタ仙台のゲームメイカー、武田英寿【写真:Getty Images】

 相手に生じた隙を突き、ペナルティーエリアの右角に迫った南は迷わずに利き足の左足を一閃した。

 試合後に「自分の得意な形だったので」と胸を張った強烈なシュートが、対角線を切り裂くようにファーへ。必死にダイブした湘南の守護神、上福元直人の手前でバウンドしてゴール左隅へ突き刺さった。

 ボールを託してくれた武田とは、実はちょっとしたやり取りをかわしていた。

「ヒデくん(武田)が前半からすごくいいパスを出してくれたので、試合中に『もう一回ちょうだい』とお願いしていました。少しずつ自分のリズムも出てきていたなかで、自分を見てほしかったので」



 エンドが変わった56分。DF奥山政幸からパスを受けた南は、右サイドから左足でクロスを一閃。インスイングからファーへ放たれた美しい軌道はしかし、惜しくも味方に合わずにゴールラインを割った。

 直後の58分には武田からパスを受けて、このときも右サイドからドリブルでカットイン。しかし、複数の相手選手に囲まれて左足を振り抜く動きを封じられてしまい、シュートを放てずに終わっている。

 それでも試合前に抱いていた恐怖心は、いつしか自身が得意とするプレーへの手応えに変わっていた。

 右肩上がりに転じていた流れのなかで叩き込んだ、プロ2得点目となる決勝点に南が声を弾ませた。

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