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「もう後がない」ベガルタ仙台、南創太は“あの時の”トラウマに打ち勝った。左足に宿る本田圭佑からの金言とともに【コラム】

ベガルタ仙台 南創太
ベガルタ仙台でプレーする南創太【写真:Getty Images】



 南創太が雪辱を果たした。ザスパ群馬戦でハーフタイム交代を告げられ、失意のただ中にいた19歳が湘南ベルマーレを相手に決勝ゴール。「今日やれなかったらもう後がない」と自らに発破をかけて臨んだ一戦で、確かに息づく元日本代表MF本田圭佑からの金言。レジェンドの言葉は、日本サッカーの明日を担う若者の胸の中でしっかり脈打っていた。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]

本田圭佑から授かった“金言”とは

2014年日本代表の本田圭佑
元日本代表MF本田圭佑【写真:Getty Images】

「ヒデくんにアシストがついて恩返しができたというか、報いられるような結果になってよかったです」

 絶対的な自信を抱く左足には、元日本代表のレジェンドから直接授かった金言も宿っている。

 大分市で生まれ育った南は、地元のブルーウイングFCでプレーしていた小学生時代にイタリア・ミラノに渡航。日本代表の主軸を担っていた本田圭佑と言葉をかわす機会をもっている。

 南は笑顔を浮かべながら、高倍率を突破してつながった本田との意外な接点を明かした。

「ACミランでプレーしていた本田選手に会いにいけるキャンペーンのようなものに応募したら当たって、ちょっとだけですけど、実際にミラノで本田選手と話をすることもできたんです」



 当時の本田はCSKAモスクワから移籍したセリエAの名門、ACミランで背番号10を拝命。同じ左利きでアタッカーでもあった、小学生の南にとっても憧れの存在だったはずだ。

 いったい何を話したのか。

「本田選手と実際に1対1をして、ドリブルのコツなどを教えてもらいました」

 南創太と検索すれば、必ずといっていいほど「本田圭佑」とセットでヒットするのもそのためだろう。

 決勝点となった先制点を含めて、レジェンドの金言はプロになった南にどのような影響を与えているのか。

 ゴールの映像を本田に見てほしいか、と問われた南は首を縦に振りながらこう答えている。

「今日だけじゃなくて…」

試合集終了後に勝利を喜ぶベガルタ仙台の選手たち
ベガルタ仙台の選手たち【写真:Getty Images】

「今日だけじゃなくて、自分のサッカー人生のなかで少しずつ糧になっていると思います」

 83分で仙台が交代枠を使い切り、プロになって臨んだ公式戦14試合目にして初めて先発フル出場が確定。そのなかで迎えた後半アディショナルタイムを含む96分に、うれしい光景が南の視界に飛び込んできた。

 途中出場していたMF荒木駿太が、FC町田ゼルビアから移籍後で百年構想リーグ初ゴールを決めた。

 勝利を確定させ、左コーナーフラッグ付近で喜びを爆発させる荒木のもとへ、南も一刻も早く駆けつけたかった。



「駿太くん(荒木)もものすごく苦しい時間を過ごしていたし、点を決めたい、という気持ちは練習の段階から伝わっていたので。でも本当に疲れていて、その場に座り込みたかったんですけど」

 フル出場の影響で、精も根も尽き果てかけていたからか。荒木を祝福にいけなかった南は、湘南のペナルティーエリア内で仰向けになり、天へ両拳を突きあげて喜びを表している味方選手の姿に気がついた。

 相手ボールになりそうな状況で必死に粘り、最後は体を投げ出しながらボールにタッチ。自陣に向けてボールを下げるパスで、荒木のゴールをアシストしたのは同期入団のFW安野匠だった。

 南が振り返る。

「お前、本当によくやったよ」

ベガルタ仙台、安野匠
南と同期の安野匠【写真:Getty Images】

「同期の彼もすごく苦しい時間を過ごしていて、やっと結果を、ひとつアシストを残していたので」

 新潟県の強豪、帝京長岡高校から加入して2シーズン目の安野は、第9節の群馬戦で途中出場した直後に不必要なイエローカードを立て続けにもらって退場処分を受け、仙台を苦境に陥れていた。

 森山監督や先輩選手たちから厳しく叱責された安野は、頭を丸刈りにして反省の姿勢と再出発への決意を示した。群馬戦以降で出場2試合目にしてマークしたプロ初アシスト。南もむしょうにうれしかった。

 仰向けになっている安野の上から覆いかぶさった南は、こんな言葉をかけている。

「お前、本当によくやったよ」



 短い言葉にどのような思いを込めたのか。ちょっぴり照れながら南が打ち明ける。

「すごく喜びが伝わってきたけど、誰も(安野を)祝福しにいかなかったので。同期としてやはり彼を思う気持ちがあったというか、同期は全員がゴールかアシストを一人ずつ決めているなかで僕も安心したので」

 ヴァンラーレ八戸を破った前節で、仙台はEAST-Aグループの首位通過を決めていた。しかしプレーオフラウンドが待っており、個人として五十嵐へ挑戦状を叩きつけたい。南はこんな言葉を残した。

「目の前の試合に勝って、グループの圧倒的な王者となってプレーオフに臨みたいと思います」

 本田の金言を脈打たせ、卒業後はヨーロッパでプレーする高校の同期生、高岡怜颯(れんと)の存在も刺激に変えながら、身長171cm・体重62kgのアタッカーは成長の二文字を貪欲に追い求めていく。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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【了】
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