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コラム 5時間前

『日本って、W杯優勝を目指している国なんだよね』ドイツを圧倒した日本代表に見えた“当たり前”の変化「日本サッカーの課題だと…」【連載:北中米W杯への道5】

サッカー日本代表
ドイツ代表に勝利して歓喜に沸く日本代表の選手たち【写真:Getty Images】



 ドイツを4-1で破った夜、日本代表にはこれまでにない空気が漂っていた。『W杯優勝』を当たり前のように語る感覚。それは単なる勝利ではなく、日本サッカーの基準そのものが変わり始めていることを示していた。ドイツ在住経験を持ち、日本代表を継続取材するスポーツライター・ミムラユウスケが、その変化の正体をひも解く(取材・文:ミムラユウスケ)[1/2ページ]

ドイツを圧倒した夜、日本代表に漂っていた空気

サッカー日本代表
日本代表はアウェイでドイツ代表を4-1で下し、世界に衝撃を与えた【写真:Getty Images】

 ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲンアレーナは、一風変わった作りをしている。

 アウェイチーム用のロッカールームとピッチの間に、選手が取材を受けるエリアであるMIXゾーンが設けられている。筆者はドイツに住んでいた時期に100回以上は取材でこのスタジアムを訪れているから、その構造は熟知していた。

 だから、2023年9月9日のドイツ対日本の一戦が終わると、素早くスタンドを離れ、MIXゾーンへ向かった。ピッチを出て、ロッカールームへ戻ってくる選手たちの要素がつぶさに見られるからだ。

 菅原由勢はピッチの上ではかみしめるように、ロッカールームへ戻る通路で叫んだ。

「よっっっしゃぁ!!」

 その後に、いち早くこのエリアで待ち構えていた日本人記者がいたことに気づいたようで、こちらを見て、少し笑みを浮かべてこう言った。

「あっ、うるさくて、すみません」

 板倉滉も上機嫌だった。

「うぇーい!」



 すれ違うスタッフとハイタッチをする流れで、こちらにもハイタッチを求めてきた。

 そして、しばらくして、スタジアムの3階にある記者会見場へと向かうロッカールームを出てきた。MIXゾーンからは上階に上がるエレベーターが見える。そちらに目をやると、エレベーターの到着を待つ森保一監督が満面の笑みでこちらに視線を送っていた。

 外から観察している一介の記者でも、日本代表チームを興奮と喜びが包んでいるのをはっきりと理解できた。それは、あの試合の日本代表が、成長と変革を感じさせる戦いぶりを見せていたからだろう。

 ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲンアレーナは、12年前に女子のサッカー日本代表が女子W杯で開催国ドイツをやぶった縁起良いスタジアムだが、男子のサッカー日本代表はそこでドイツ代表を4-1で下した。

 カタールW杯での2-1勝利を彷彿とさせ、世界に再び衝撃を与えた。

 ただ、試合結果やスコア以上に重要なのは、そこに至るプロセスだった。

日本がドイツに上回っていたもの

ドイツ代表戦で躍動する三笘薫
三笘薫はドイツ代表戦の前半から手ごたえを得ていた【写真:Getty Images】

 ドイツの中心選手だったイルカイ・ギュンドガンは試合を通じて感じた差をこう表現した。

「『様々な面』で、日本が僕らを上回っていた」

『様々な面』とはいったい、どのようなものだろうか。

 1つ目が、ミスを恐れずビルドアップを継続した<意志の力>だ。

 試合開始4分、早くもピンチが訪れた。

 GK大迫敬介から冨安健洋へのパスがずれ、レロイ・ザネにカットされた。カイ・ハバーツに渡った瞬間に守田英正が決死のクリアでコーナーキックに逃れたものの、この試合の流れは選手たちの意識の変化を象徴していた。

 三笘薫がこう振り返った。



「サコ(大迫)が怖がって(丁寧なビルドアップでつなぐのを)やめていれば、違う選択肢がありましたけど……。あそこで怖がらずにやれた、“やってくれた”というのが、良いことでした。

 配置的にサイドバックのところが空いてくるっていうところ(分析)がありましたし、そこを上手く突く上でも、(ビルドアップの)最初のところで、優位な位置と動かし方を練習していましたから」

 むしろ、三笘は前半の段階で確かな手ごたえを覚えていた。

「前半から、全然やれているなと感じました。1人ひとりが相手をかわすわけではないですけど、自信を持って前を向いて判断していた。前線から見ていて、互角以上にできていると感じていたので」

 守田は試合後、こう振り返った。

「最初に少し崩れてしまって、相手のコーナーキックにしてしまったり、正直、試合の入りは良くなかったと思うんです。それでもボールをつなぐことをトライできた。それは今までになかったことかなと。

 そういうサッカー、雰囲気の中で、リードしてハーフタイムを終えられたのは、W杯と違って、またひとつ成長した部分なのかなと思います」

ミスを恐れずにつなぎ続けられた理由

ドイツ代表のイルカイ・ギュンドアン
「日本はボールを走らせ、正しいエリアでフットボールをして…」とギュンドガンが振り返る【写真:Getty Images】

 カタールW杯で涙を呑んだクロアチア戦では、ゴールキックから始まる攻撃では大きく蹴るシーンが多かった。

 それで有効な攻撃をしかけられるのならばいいのだが、あの試合ではそうではなかった。大きく蹴りだした結果と、相手にボールを渡してしまうことが少なくなかった。

 その悔しさや反省は、このチームにも引き継がれている。それを示すような意志が、日本の選手たちからは感じられた。

 そして、この〈意志の力〉をもって繰り出した攻撃はドイツを苦しめた。

 ギュンドガンは屈辱の敗戦後にこう振り返っている。

「日本はボールを走らせ、正しいエリアでフットボールをして、多くのチャンスを作り出してきた。僕たちが日本と同じようなレベルでプレーできなかったことは認めないといけない」

 日本の攻撃で右サイドに流れて起点を作った鎌田大地は狙いをこう明かした。



「サイドのスペースが今日は効果的に使えると思ったので、『中に入るよりは、サイドに行ったほうがいいかな』と。{4-2-3-1}と言いながら{4-3-3(*4-1-4-1)}っぽくやったという感じです」

 守田も補完した。

「場合によっては{4-1-4-1}みたいな感じで、僕が1個前に入ってもいいと言われていました。大地が結構、外に張っていたぶん、僕が奥行きを取らないと(1トップの上田)綺世が孤立してしまうので。

 僕が前に入ったタイミングで、航くんが真ん中のポジショニングをとれば、冨安から縦を狙いながら、(遠藤)航くんに入れて、攻撃を展開できました。僕のポジショニングも1つ、ビルドアップの中では要因だったのかなと思います」

 実際、キッカー誌は日本の忍耐強いビルドアップを高く評価していた。

「前半に忍耐強く、後方からのビルドアップに取り組んできた日本に対して、フリック率いるチームは戦術的に劣っていた」

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