
サッカー日本代表の長谷部誠コーチ【写真:元川悦子】
サッカー日本代表の長谷部誠コーチが20日、千葉市内で取材に応じた。3大会のワールドカップ(W杯)を主将として戦い抜いたレジェンドは、今大会では指導者として世界の舞台に挑む。開幕を目前に控える中、メンバー選考やチーム作りへの思い、そしてW杯で重要になるポイントについて語った。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
指導者として初のW杯に臨む長谷部誠コーチ

サッカー日本代表ではキャプテンを務めていた長谷部誠【写真:Getty Images】
6月11日に開幕するFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会の開幕まで3週間。サッカー日本代表も25日から本格始動する。
そして、2024年9月から代表スタッフ入りしたレジェンド・長谷部誠コーチにとっても、指導者として初のW杯となる。
昨年12月まではフランクフルトU-21と日本代表の指導を掛け持ちしていた彼だが、森保一監督の要請もあって、2026年突入後はクラブの許可を得て代表活動に集中していたという。
「週末だけじゃなくて、ミッドウイークのチャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)だったり、ケガ人のトレーニングを見に行ったりしていました。5月15日のメンバー発表前最後の週末は、議題に上がっている選手の試合を見に行ったりして、ギリギリ2〜3日前に戻ってきた感じです」とドイツを拠点にフル稼働していたことを明かす。
こうした活動を通して、長谷部コーチ自身もメンバー選考に深く関わった。
2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシアの3大会はキャプテンという立場でアルベルト・ザッケローニ監督らに助言するケースもあっただろうが、選手をチョイスする側に回ったのは初めて。その大変さを実感した様子だ。
「自分が責任ある言葉を発することで…」

サッカー日本代表の長谷部誠コーチ【写真:元川悦子】
「選考を通して自分が一番感じたのは、“覚悟”ですね。あとは突き進むだけだなと。もちろん最終的に監督が決める部分はありますけど、プロセスの中で監督もコーチングスタッフにいろんなことを聞いてきたりするので、自分が責任ある言葉を発することで、より自分の中に責任感が生まれました。
この経験は自分にとって非常に大きな財産。これを財産と言えるのは将来だと思いますけど、選ばれた選手、選ばれなかった選手がいる中で、多くの思いをしっかりと胸に刻みながら、覚悟を持って前に進んでいきたいです」
長期間の視察や議論を繰り返しながら選んだ26人に、長谷部コーチは絶対的な信頼を寄せている。日本代表の実力も自分がプレーヤーだった2010年代に比べて確実に上がっているという手ごたえもあるようだ。
「このチームの戦術理解力は明らかに高いレベルにあると思っています。自分も欧州で長い間、サッカーをやっていましたけど、チーム戦術、チーム組織として、今の日本代表はかなりのレベルにある。
世界では個々だけを取ったら日本よりもレベルの高いチームがもっとたくさんあるかもしれないですけど、組織になった時が今の代表はすごく大きな強みだと感じます」
長谷部コーチも語気を強めていたが、2018年に森保体制がスタートしてから8年間、日本代表は「全員攻撃全員守備」「攻守両面でのハードワーク」を追い求めてきた。
「W杯で大事なのは…」

2014年ブラジル大会でコートジボワール代表に逆転負けを喫したサッカー日本代表【写真:Getty Images】
「指揮官の要求に応えられない選手はどれだけクラブで活躍しても起用されない」という明確な基準も浸透した。
その結果、元代表キャプテンも認めるほどの“強固な組織力”が養われたのだろう。そこは選手全員が自信にしていい部分だ。
そのうえで、W杯本番で積み重ねてきたものを出せるのか。そこが本当の勝負になると言っていい。
「W杯で大事なのは、どこでスイッチを入れるかということ。選手たちが自分の持っている全てを出すこと。そこでピークに持っていくことがすごく大事なんです」と長谷部コーチは強調する。
これは自分たちの失敗経験を踏まえての発言に他ならない。
ご存じの通り、2014年ブラジルW杯で史上最強との呼び声が高かった日本代表は1分2敗でグループ最下位に沈んだ。初戦のコートジボワール代表戦で逆転負けを喫したことで流れを失い、そのまま最後まで立て直すことができなかった。
「W杯は本当にあっという間に終わってしまう」と長谷部コーチはしみじみと話したが、短期決戦で選手たちの持っている能力、チームとしての組織力を最大限引き出すべく、彼はできることを全てやっていく構えだ。
足掛け8年間にわたってチームを支えてきた偉大な統率者ならば、その大仕事を成し遂げられるはずである。