
ル・アーヴルに所属する瀬古歩夢【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)に臨む日本代表メンバーに名を連ねた瀬古歩夢。彼は、今季から加入したル・アーヴルで別次元の人気を誇っている。それは一体なぜなのか。現地フランスで取材し続ける小川由紀子氏がレポートする。今回は前編。(取材・文:小川由紀子【フランス】)[1/2ページ]
「自分もできるっていう確信を…」

今季、キャリア初の5大リーグに挑戦した瀬古歩夢【写真:小川由紀子】
FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会に挑むサッカー日本代表のメンバー26名の一人に、DF瀬古歩夢が選出された。
2023年3月のウルグアイ代表戦(親善試合)でA代表デビューしてからここまで13キャップ。昨年からは、ほぼ毎回招集されている現代表の常連であるから驚きはない。
むしろ今シーズン、リーグ・アンのル・アーヴルACで絶対的な主力として大きく評価を上げた成長ぶりを見るにつけ、本戦での活躍を大いに期待したくなる一人だ。
21/22シーズンの後半戦から3年半、スイス1部リーグのグラスホッパーに所属していた瀬古は、昨年のオフ、“5大リーグ入り”を目指してル・アーヴルに加入した。
「自分自身、5大リーグにこだわっていて、そこでやれる自信というのは自分の中でもあったし、いま代表の選手たちはほぼほぼ5大リーグでやっている中で、自分もできるっていう確信をもっていました」
本人の自信どおり、瀬古は南野拓実が所属するモナコと対戦した開幕戦から先発フル出場すると、以降もスタメンに定着している。
ピッチに立たなかったのは、負傷していた2月の3試合と累積警告で出場停止になった最終節のみで、その負傷した1月下旬のRCランス戦でも、自軍のGKとの衝突で肋骨を骨折しながらも激痛を堪えて最後までプレーするというド根性を発揮した。
そんな瀬古をディディエ・ディガール監督は、「人間離れしている」と驚きをこめて称えた。
「ぜひとも彼をとって欲しい」

ル・アーヴルに所属する瀬古歩夢【写真:Getty Images】
試合ごとの採点では常にチームトップクラスで、2025年10月と2026年1月には、クラブの月間MVPにも選出されている。
10月といえばシーズン開幕からわずか3ヶ月あまり。
強くて速いフィジカル自慢のアフリカ系、トリッキーなプレーが得意なアラブ系、そしてもちろん、上位クラブともなればテクニックに優れた技巧派など、多種多様な猛者がひしめくリーグ・アンでは、個で守れる力が試される。
しかし瀬古は、そんな難しいリーグに素早くフィットしてみせた。
「基本的にみんな体強いんで、ちっちゃくても油断はできないというか。いろんな相手とやることによって自分も鍛えられる。『こういう相手だからこういうふうに戦い方を変えよう』とか、 試合前の選手の映像を見てやってるんで」
複数のポジションをこなすポリバレントさも磨かれた。
そもそも、昨年オフの補強期間中、ル・アーヴルにとってセンターバック(CB)の新戦力獲得は急務ではなかった。退団の可能性があった選手たちが揃って残留し、頭数としては足りていたからだ。
しかし、スポーツディレクターから瀬古のビデオを見せられたディガール監督はそのポテンシャルに惚れ込み「ぜひとも彼をとって欲しい。起用法については自分に任せてくれ」とクラブ側に懇願した。
「瀬古のおかげで…」

センターバックだけでなく、ボランチもこなす瀬古歩夢【写真:Getty Images】
そうして、守備的MFが手薄になっていたこと、瀬古がグラスホッパー時代にもボランチでプレーした経験があったこと、そしてなにより、プレシーズンに試したときの感触が良かったことで、ディガール監督は、瀬古をこのポジションで起用したのだった。
「CBをやりたい」と希望していた瀬古にとってはもどかしさもあったが、監督には「リーグ・アンの強度に慣れるにはボランチの方が入りやすい」という意図もあった。
そして実際、シーズン後半になってCBが定位置となった頃には、「スピード感に慣れたことでCBに戻った時にすんなりと対応できた」と本人も語っている。
瀬古は両ポジションを自在にこなし、試合途中にも戦術変更に合わせて持ち場を変えるなど、選手としてのキャパシティをさらに広げていた。
選手層が決して厚くはないル・アーヴルにとっても、そうした選手の存在は貴重だ。
「さまざまな局面に対応できる瀬古のおかげで、我々は本当に助けられている。彼の存在は、我々に大きな安心感を与えてくれている。クラブが瀬古の移籍を成功させてくれて本当に感謝している」
ル・アーヴルでプロデビューしたクラブOBでもあるディガール監督は、ことあるごとに瀬古の働きに感謝していたが、その言葉通り、彼がピッチにいれば安心と思える、ル・アーヴルでの今季の瀬古は、そんな存在だった。
加えて、評価されていたのは安定性の部分だ。