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コラム 3時間前

「クラブ史でもベスト補強」日本代表、瀬古歩夢がフランスで大絶賛される理由。別次元の人気「なぜなら彼は…」【現地発コラム前編】

シリーズ:コラム text by 小川由紀子 photo by Getty Images,Yukiko Ogawa
ル・アーヴル、瀬古歩夢
ル・アーヴルに所属する瀬古歩夢【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)に臨む日本代表メンバーに名を連ねた瀬古歩夢。彼は、今季から加入したル・アーヴルで別次元の人気を誇っている。それは一体なぜなのか。現地フランスで取材し続ける小川由紀子氏がレポートする。今回は前編。(取材・文:小川由紀子【フランス】)[2/2ページ]

失点激減の裏にあった瀬古の存在

ル・アーヴル、瀬古歩夢
ル・アーヴルに所属する瀬古歩夢【写真:Getty Images】

「彼が“消えていた”試合は一度もない」と監督もコメントしているように、シーズンを通してハイレベルのパフォーマンスを維持しただけでなく、試合の中でもムラなく存在感を発揮できる瀬古の安定したプレーは、今季のル・アーヴルが大崩れするのを防いだ。

 残留確定こそ最終節までもつれ込んだが、敵地で戦ったオリンピック・マルセイユ戦に6-2で大敗した以外は、競り合いの末の惜敗がほとんどで、失点数も昨年の「71」から「44」と激減している。

 そんなリーグ・アン初年度の挑戦を、瀬古自身も「そうですね、楽しかったです。やっぱり個人で戦うことが多いし。非常に充実したシーズンでしたし、自分自身成長できたなというふうに感じています」と充実感をこめて振り返る。

「守備の部分で前にガツガツいって潰すところは、今シーズンは、非常に強くできているかなと思いますし、 ボランチに入った時にもしっかりまた違ったゲームコントロールだったり、そういうのも今はできている。



 スペースが空いた中で収められると相手に嫌なチャンスを与えてしまう、というような場面でも、CBがしっかり潰すことでもう一度自分たちのチャンスにする、そういった部分が鍛えあげられたんじゃないかなと思ってます」

 本人も「今季の自分的MVPプレー」に挙げた17節のアンジェ戦でのスライディングタックルは、リーグ・アン公式サイトでも取り上げられた。

『レキップ』に単独インタビューが掲載されるなどメディアでの注目度も高く、パリや他のスタジアムで取材しているときに、現地の記者たちから瀬古についてポジティブな感想を聞くこともたびたびあった。

「クラブ史でもベスト補強の一人」

ル・アーヴル、瀬古歩夢
ル・アーヴルに所属する瀬古歩夢【写真:Getty Images】

 そんな彼についた代名詞が、“Le Monsieur indispensable (絶対に欠くことのできない男)”

 本人は、「そんなことはないと思いますけど(笑)、まあこの1年間通して試合にずっと出続けられたってことは非常にポジティブでした」と控え目だが、実際、現地で彼の人気は、ちょっと別次元、と感じるほどだ。



 というと大袈裟に聞こえるかもしれないが、これがまったくの事実で、プレー面での評価だけでなく、彼の戦う姿勢、といった闘魂の部分にも人々は惚れ込んでいる。

 ル・アーヴルに取材に行って、こちらが日本人だとわかると、「彼は今季ベストプレーヤーだ」、「今シーズン、いやクラブ史でもベスト補強の一人」といった賛辞をファンや地元の記者たちが熱く語ってくれるのだが、彼らが併せて強調するのは、「瀬古はこのクラブのために戦っている」というハートの部分だった。

 ホーム最終戦で現地を訪れたとき、スタッド・オセアンで観客入口のセキュリティをしていた男性がしみじみと口にしていた言葉も印象的だった。

「みんな彼のことを本当に愛している。なぜなら…」

ル・アーヴル、瀬古歩夢
試合後、メディアに囲まれるル・アーヴルの瀬古歩夢【写真:小川由紀子】

「この街の人は、みんな彼のことを本当に愛している。なぜなら彼は、地に足がついたとても謙虚な人だから。ひとことで言うと、彼は“フットボーラー”なんだ。彼はただただひたむきに、サッカーをプレーしている」

 文字にしてしまうとシンプルだが、言わんとしていることは深い。サッカー選手にとって、ひたむきにサッカーを打ち込む姿を評価されるというのは、きっとうれしいことだと思う。
 
 それだけに、最終節を欠場となってしまい、その前の試合で残留を確定できなかったことが瀬古はとても残念そうだった。



「ホームでいつも応援してくれてる人のためにも、このクラブのためにも、勝ちたい気持ちはたぶん人一倍強かった…」

 瀬古の今季ラストマッチとなったマルセイユ戦は、PKを献上して0-1の惜敗。しかし、体を張って何度も相手の侵入をブロックしていた瀬古に、試合中何度も拍手や歓声が巻き起こった。

 瀬古もそんなファンたちの声援に感謝するかのように、試合後、スタンドの前に立って、いつまでも拍手を送っていた。

(取材・文:小川由紀子【フランス】)

【著者プロフィール:小川由紀子】
学生時代からブリティッシュロックを愛好し、1992年に渡英。音楽三昧のロンドン生活の傍ら、人々の生活や文化に深く根付いたフットボールに魅せられ、1996年の欧州選手権開催に盛り上がる中、フットボール取材を開始。サッカー界が金満ワールドに染まりきる前の、古き良き時代の最後の名残を慈しむ。その後フランスに渡り、現在はパリを拠点に、フランスリーグを中心とした欧州サッカーやバスケットボール、自転車ロードレースなどの取材、執筆に勤しむ。

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【了】

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