
ファジアーノ岡山の河野孝汰【写真:Getty Images】
明治安田J1百年構想リーグが6月6日に終了し、ファジアーノ岡山は11位でフィニッシュした。開幕前は新たなエース候補として期待されながらも、なかなか出場機会を得ることができなかった河野孝汰。それでも、22歳のFWはシーズン最終戦で貴重な追加点を奪い、存在価値を示した。苦悩の日々を経てゴールにたどり着くまでの軌跡を追った。(取材・文:難波拓未)[2/2ページ]
明治安田J1百年構想リーグ・プレーオフラウンド第2戦 11-12位決定戦
浦和レッズ 0-2 ファジアーノ岡山
埼玉スタジアム2002
待ちに待ったチャンスで河野孝汰が示したもの
先制点を挙げた大森博と写真に納まる河野孝汰【写真:Getty Images】
「なかなか最近はスタメン出場がなかった中でチャンスが回ってきて、どうにかインパクトを残してやろうという気持ちでした。(これまでは)守備に比重を置く場面が多かった中、プレータイムが長いところで結果を残したかったですけど、そこは課題の部分かなと思います」
その日を境に、試合メンバーから外れる日々に突入した。しかし、河野は下を向かなかった。
期待されている決定力は居残りシュート練習で研ぎ澄ませ、チームコンセプトの体現に欠かせない強度の高さや連続性は日頃のトレーニングで突き詰め続けた。広島戦から35日が経過した浦和戦での出場は、待ちに待ったチャンスだったのだ。
そこでまず見せたのは、フォア・ザ・チームの精神だった。自分自身がいかにゴールを決められるかではなく、チームが勝利するために与えられたタスクの遂行に注力した。
「3-4-3(5-4-1)」の右シャドーに入ると、江坂からの「絶対に自分の背中に相手選手がいるから、あまり(前に)出ずに内側からしっかりと(守る)というところと、相手が嫌がるような守備をしろ」というアドバイスを落とし込んで奮闘した。
コーチングスタッフからの「レオを孤立させないように、2トップだったり、いろいろな形を持ってゴールを決めてこい」という指示も実践した。
85分にガウショが前線でキープしたときは、右サイドから全速力で駆け上がり、ゴール前に顔を出した。90分には宮本英治のロングボールが西川周作の手に収まるギリギリまで追いかけ、その直後に西川周作からのスローを受けた荻原拓也へフルスプリントでプレスバックし、前進を遅らせた。
そして、値千金の追加点を奪う前の90+2分。自陣の右サイドの低い位置まで戻り、大森博と挟む形で力強くボールを奪い、ガウショに向かって蹴り込んだ。この陣地回復がなければ、追加点の起点となった鈴木のパスカットはなかっただろう。
チームから求められる役割をこなしながら、最終的には自分をフィニッシャーの位置に持っていき、ネットを揺らす。そのためには、長い距離であってもチャンスを信じて走り込む。これこそ、試行錯誤しながら導き出した答えだった。第11節のガンバ大阪戦での終了間際のカウンターでゴール前にいなかった男が、今度はいた。
2得点、465分のプレーでは満足しない「どれだけ自分の価値を証明できるか」

ファン・サポーターの前で喜びを爆発させるファジアーノ岡山の河野孝汰【写真:Getty Images】
「やっぱり点を取れる選手だと思う」と期待し続けてきた木山監督も河野を称賛した。
「彼(河野)とは試合に出られない時間で話をしたりすることもありましたけど、彼は点を取って評価される選手だと思う。いろいろなことを自分の中でやろうとしすぎずに点を取る。
シャドーというポジションなので、当然いろいろなことを求められるけれど、点を取る。そのために点を取るところにいる、走る。それを要求していた。最後、あそこに走っていって、良いところにいた。続けていってほしいなと思っています」
百年構想リーグを戦った半年間でチームは確実に力を蓄えた。他の追随を許さないほど、セットプレーという武器を磨き上げ、攻撃のバリエーションを増やして、得点力を向上させた。新しいトライをしながらも、ベースにしてきた粘り強い守備やハードワークは失っていない。
今大会前の補強ポイントだったポテンシャルのある若手たちが成長を示した。先制点を決めた大森もJ1初挑戦であり、昨年まではJ3で研鑽を積んできた選手だ。
木山監督の“待つ采配”が、実戦での経験値獲得を引き出し、個人の成長力をチームの成長力にするというテーマの達成を促した。岡山は一歩ずつ、着実にバージョンアップしてきた。
順調とも言えるチームの歩みに反して、河野にとっては決して順風満帆と言えないかもしれない。記録した2ゴールという数字は納得いくものではなく、先発5試合と465分のプレータイムも満足いくものではない。しかし、百年構想リーグのラストマッチでゴールを刻んだことには大きな価値がある。
「来シーズンに弾みのつくようなゴールにしたいと思います。出場時間をもっと増やしたいし、途中出場じゃなくてスタメンを張れるような選手になっていきたい。
そのためには日々のトレーニングなど、日常で信頼を勝ち取ることもそうですけど、チャンスが回ってきたときに、どれだけ自分の価値を証明できるかがすごく重要になってくると思う。数字にこだわって、やっていきたいです」
“一度きり”の特別大会が幕を閉じたと同時に、眩しい笑顔を見せた河野孝汰が新たなスタートを切った。
(取材・文:難波拓未)
【著者プロフィール:難波拓未】
2000年4月生まれ。岡山県出身。8歳の時に当時JFLのファジアーノ岡山に憧れて応援するようになり、高校3年生の夏からサッカーメディアの仕事を志す中、大学在学中の2022年からファジアーノ岡山の取材と撮影を開始。2024年からは同クラブの公式マッチデープログラムを担当し、現在は様々な媒体にも取材記事を寄稿している。メディア人として東京での2年間の育成型期限付きを経て、2026年から地元・岡山でフリーランスとして活動。モットーは、「魂を込めて、クラブや選手の魅力を伝える」こと。
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