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J1 6時間前

「ゴールを決めてこそ」ファジアーノ岡山、河野孝汰は下を向かなかった。苦悩の日々を越え、待ち続けたチャンスで決めた一撃【コラム】

シリーズ:コラム text by 難波拓未 フリーライター photo by Getty Images
今季2点目を決め、チームスタッフに祝福されるファジアーノ岡山 河野孝汰

ファジアーノ岡山の河野孝汰【写真:Getty Images】



 明治安田J1百年構想リーグが6月6日に終了し、ファジアーノ岡山は11位でフィニッシュした。開幕前は新たなエース候補として期待されながらも、なかなか出場機会を得ることができなかった河野孝汰。それでも、22歳のFWはシーズン最終戦で貴重な追加点を奪い、存在価値を示した。苦悩の日々を経てゴールにたどり着くまでの軌跡を追った。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ]

明治安田J1百年構想リーグ・プレーオフラウンド第2戦 11-12位決定戦 
浦和レッズ 0-2 ファジアーノ岡山
埼玉スタジアム2002 

「ああいったワンチャンスが絶対に来ると信じていた」

ファジアーノ岡山 河野孝汰

今季、レノファ山口からファジアーノ岡山に加入した河野孝汰【写真:Getty Images】


 晴れやかな笑顔が、帰ってきた。

 6月7日に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田J1百年構想リーグのプレーオフラウンド2回戦。ファジアーノ岡山は浦和レッズを0-2と下し、2戦合計スコアでも1-3と上回って、11位で百年構想リーグを終えた。
 
 J1初挑戦となった昨シーズンの13位よりも上の順位でフィニッシュ。“有終の美”を決定的なものにしたのは、今大会前にレノファ山口から加入した河野孝汰だった。81分に江坂任との交代でピッチに立つと、1点リードで迎えた90+3分に大仕事をやってのける。

 自陣の左サイドで鈴木喜丈が縦パスをカットすると、河野は右サイドから前線に走り出した。鈴木のスルーパスに反応した西川潤が相手陣内の左サイドのコーナーフラッグ付近でタメを作り、チップキックで相手2選手の間を通す。

 内側から抜け出した山根永遠が左足でクロス。指を差して呼び込んでいた河野がファーサイドでマークを外し、弾むボールを右足のインサイドでしっかりと抑えながら合わせる。バウンドしたシュートがGK西川周作のダイビングをかわし、ゴールに吸い込まれた。

「押し込まれる状況が続いて苦しい時間があった中、ああいったワンチャンスが絶対に来ると信じていた。本当に8割、9割は永遠くんのゴールと言ってもいいくらい。当てるだけのボールをくれましたし、レオ(ガウショ)もマイナスに動いてくれて、ディフェンスを引きつけた分、自分が一番おいしいところだった」

 浦和の攻撃を自陣で耐えていた時間帯に、機を見て繰り出したカウンターを仕留めた追加点は、勝利を決定づけるには十分すぎる一撃だった。

河野孝汰にとって非常に価値のあるゴールに

今季2点目を決め、チームメイトに祝福されるファジアーノ岡山 河野孝汰

今季2点目を決め、チームメイトに祝福されるファジアーノ岡山の河野孝汰【写真:Getty Images】


「今日は延長とか、PKとかを考えずに90分で勝ち切るためだけに頑張ろう」と送り出した木山隆之監督は、アウェイで浦和を相手に0-1で逃げ切ることは「至難の業」という考えを持っていた。

 ハーフタイムに「追加点を取るチャンスをうかがいながら強く守備すること」を強調すると、選手たちはそれを落とし込み、実践した。

 そして、ピッチ上で判断した。時計の針を進めるボールキープではなく、“トドメの一撃”を決めに行くことのほうが、勝利を手繰り寄せる、と。

 得点後、河野のもとにはピッチ内からもベンチからもたくさんのチームメイトが集まってきた。歓喜の輪の中心で祝福を受けると、目の前で声援を送り続けたファン・サポーターに向かって、エンブレムを叩き、雄叫びを上げた。

「自分の中でテンションが上がっていた部分もあったんですけど、浦和の地まで本当にたくさんのサポーターの方々に来ていただいていました。シーズンラストで勝って終わるか、負けて終わるかで全然違ってくるというのは、試合前からチームにも共有されていました。そういった中で最後に勝って終われたのはすごく良かったです」

 山口県周南市出身の22歳にとって、非常に価値のあるゴールだった。ネットを揺らしたのは、3月1日に行われた第4節の名古屋グランパス戦まで遡る。喉から手が出るほど欲しかった移籍後2ゴール目だった。

「なかなか試合に絡めない時間が続きましたけど、自分の中でいろいろと模索しながら、自分の選手像というか…。『やっぱりゴールを決めてこそだ』という話は監督からもされていました。最終戦でチャンスが回ってきたときにゴールを取れて良かったなと思います」

 今大会の開幕前、新たなエース候補としての期待を背負い、山口から加入した。フィニッシャーとしての能力の高さは、プレシーズンのトレーニングマッチでゴールを決めるなど早々に発揮。数々のFWとプレーしてきた江坂も、「本当にストライカーという印象。決定力と個人の技術があって、決め切れるタイプ」と太鼓判を押していた。

 加入してから4試合目のリーグ戦で移籍後初ゴールを決めて、その才能が自身にとって初のJ1でも通用することを証明できた。

 しかし、その後は本人が満足いくほどの出場機会を得ることはできず。第8節のV・ファーレン長崎戦では先発するも、前半のみで交代を告げられた。

「僕は我慢かなと思う」木山隆之監督が語る河野孝汰のインサイドハーフ起用

ファジアーノ岡山加入後初ゴールを決めた河野孝汰

2026年3月1日、名古屋グランパス戦で加入後初ゴールを決めたファジアーノ岡山の河野孝汰【写真:Getty Images】


 以降、後半終盤の短い時間で起用されることはあった。ただし、本職のFWではなく[3-5-2(5-3-2)]にシステム変更した後のインサイドハーフというポジションだった。中盤の1人として、守備でハードワークしながら後ろと前を繋ぐ。ゴール前でのシュートという持ち味を発揮しにくい状況が続いた。

 その時期、木山監督に河野のインサイドハーフ起用について聞いたことがある。

「なんでも自分1人でやれる選手ではないけど、お膳立てがあればゴールをする力が高い選手だと思う。ボックス内でかわしてシュートとか、しっかりと良いポジションに入ってクロスを合わせるとか、そういうのはすごく良いものを持っている」と指揮官は前置きして続けた。

「例えば(ポジションを勝ち取っている木村)太哉や(江坂)任みたいなプレーじゃなくて、そういう(自分の強みを出せる)状況を作ればいいと思う。でも、そこには試行錯誤が必要だと思う。こちらから『あなたのプレーはこれね』と決めつけることはできない。その中で自分の価値を、自分のプレーを見出して勝負するしかない。

 だから、僕は我慢かなと思う。『これをやれば試合に出られます』というよりも彼が自分で抜きん出なきゃいけない。まだ年齢的に若いし、伸びの余地もある。出場のチャンスがあるときにはしっかりと活かしてほしい。それを掴むために自分で試行錯誤する必要は当然あると思う。プロとして一つ山を越えなきゃいけないときなのかなと。自分は『我慢』という言い方をよく使うけど、『乗り越えてほしいな』と思いながら見ています」

 慣れないタスクに悪戦苦闘していると、状況が変わった。覚醒したウェリック・ポポが前線で不可欠な存在となり、シーズン途中で加入したレオ・ガウショがストライカーの座を颯爽と射抜いた。

 さらには、コンディション不良で出遅れていた西川潤が復帰し、[3-5-2(5-3-2)]のインサイドハーフとしての出番を増やしていった。

 河野自身は第14節のサンフレッチェ広島戦で、前述の長崎戦ぶりに先発出場していた。しかも、望んでいた前線のポジション(シャドー)だった。73分までプレーし、チームは1-0と勝利を収めた。それでも、試合後の表情は曇っていた。

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