
ウズベキスタン代表とのテストマッチを行ったオランダ代表【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)で、日本代表は初戦でオランダ代表と対戦する。強豪国との大一番を前に、相手はどこに隙があり、日本は何を狙うべきなのか。直近のオランダ代表戦を分析したシュタルフ悠紀(現SC相模原監督)は、日本が勝機を見いだすためには、前線からの強度ある守備と高い位置でのショートカウンターが鍵になると語る。現役監督の視点から、オランダ戦の勝敗を分けるポイントを聞いた。(取材・文:高橋大地)[1/3ページ]
オランダ代表は「あまり良くないな」という印象だった
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オランダ代表【写真:Getty Images】
――率直にオランダ代表はどうでしたか。
シュタルフ:まず前置きとして、私が見た試合は「練習試合である」ということは伝えたいです。良くも悪くも練習試合なので、本番とは全く違います。Jリーグでも、プレシーズンで調子がいいから開幕で勝つとは限らないし、調子が悪いから開幕がいい試合にならないということもない。それを踏まえた上で、オランダ代表はあまり良くないなという印象を受けました。
――具体的には?
シュタルフ:ヨーロッパ予選ではグループリーグを1位通過していて、結果が伴っているチームなので、少しハードルを高くして見ていたのかもしれません。ただ、チームとしての完成度や一体感という部分で、全員がスピードを上げるタイミング、ボールを奪いにいくタイミングが揃っていない印象は受けました。
直近のウズベキスタン戦での話をすると、4-3-3がベースで、基本的にスリーバック相手にはスリートップがプレッシャーをかけていました。テレビ映像なので全体が見えているわけではないですけど、誰がどこで行くのかというところに、あまりパターンが見られなかった。
一人ひとりの感覚でプレッシングのスイッチを入れているように見えましたし、そのスイッチが入っているにもかかわらず、後続の選手が連動しきれていない場面もありました。奪いにいくけど潰しにいけない、潰しにいったらその選手の背後がカバーできない、みたいなところです。
特に日本の左サイドはチャンスかなと。ヤン・ポール・ファン・ヘッケが出ていましたが、フィルジル・ファン・ダイクに比べると潰しの迫力は薄かったです。また、デンゼル・ダンフリースもどちらかというと攻撃的な選手なので、身体能力は恐ろしいですが、守備時のポジショニングやカバー意識は高くないです。日本の左シャドー、左ウイングバックがうまく連係し、トップもファン・ヘッケの背後に流れたりすればチャンスは増えるんじゃないかなと思って観ていました。
相手とのレベル差があったので、本気度が低かったのかもしれないですし、コンディション的にきつい部分もあったのかもしれない。だけど、次が開幕戦だよという温度感や熱量、強度は感じなかった。結構のらりくらりやっているなというイメージでした。
守備の連動性に見えた不安

倒れるバルト・フェルブルッヘン【写真:Getty Images】
――守備の連動性に問題があると。
シュタルフ:守備に関してはそうです。もちろん個で言うと、ものすごく守れる選手はいるので、要所要所では守り切っていました。ただ、オランダはワールドカップを取りに来るような国だと考えると、実力差がある相手に対しても、プレッシャーをかけに行ったときにボールが取れないとか、噛み合っていないところは見受けられました。
もちろん3-4-3と4-3-3のマッチアップのズレもあります。だからこそ連動しきれていないのが見えるというか。ミラーゲームだとそういうのは見にくいと思いますが、システムの噛み合わせが良くないところで、少し苦戦しているイメージはありました。
――ビルドアップや攻撃に関してはどうですか。
シュタルフ:4-3-3の伝統的なシステムの解釈で、ウインガーがワイドに張っているシチュエーションもあれば、中に絞ってサイドバックが高い位置を取るシチュエーションもありました。サイド攻撃をやる時間帯と中央攻撃をやる時間帯があったように見えました。
ウインガーの立ち位置によって変わってくると思いますが、中に人数をかけている時は、アンカーのフレンキー・デ・ヨングとインサイドハーフのティジャニ・ラインデルス、ライアン・グラフェンベルフもけっこうピックアップに落ちる。後ろでボールに関わる、いい距離感に枚数がいるチームなので、前線からプレッシングをかけず、ミドルブロックで構えてしまうと、ボールを持たれる展開になる可能性はありますね。
もちろんオランダなので、ボールを上手に動かしていたと思います。ただ、怖さはあまり感じませんでした。
個の怖さはあるが、ビルドアップは狙える

オランダ代表FWコディ・ガクポ【写真:Getty Images】
――今大会のオランダは、ウイングにそこまで強力な選手はいないのでしょうか。
シュタルフ:いや、個の力は高いと思います。コディ・ガクポもそうですし、右のウインガーだったクリセンシオ・サマービルは、映像で見た感じだとかなり速い。縦のスピードは特筆するレベルのものを持っていたと思うので普通に怖いですし、実際そこからPKを取って先制点という形でした。
右サイドバックにはダンフリースもいるので、右のコンビネーションからPKが生まれたりもしていました。この試合ではあまり機能しているとは言えなかったですが。左のガクポは縦にも中にも行けて、左からのカットインクロスに対して、右が流れ込んでくる形はけっこう多くありました。その時に身長も含めて、ボックスへ入ってくる形は迫力があります。
オランダから見たら敵陣、日本から見たら自陣でボールを持たれると、いつどこで失点してもおかしくないような一発のパンチはある。そこは本当に集中して守らないといけないし、なるべく自分たちのゴールから遠いところで守れたらいいと思います。
――シュタルフさんなら前線からプレッシャーをかけに行く戦いを選びますか。
シュタルフ:そうですね。今回はドニエル・マレンがセンターフォワードで出ていましたけど、一発で背後を取るタイプの選手には見えませんでした。どちらかというと顔を出すのが上手で、ポストになっていました。なので、前からプレッシャーをかけても裏への一発はそこまで怖くないのかなと。
日本がスリーバックで行くのであれば、前プレに行くとどうしてもウイングバックを押し出すことになるので、その時に幅を取られたら嫌だなとは思います。ガクポにしてもサマービルにしても、ワイドの選手は速いので。
ただ、意外とそこが明確ではなかった。裏を狙う形はあまりなかったです。一発で背後を取られる怖さがそこまでないなら、日本人のフィットネス、前線からのプレッシングのハードワーク、献身性をぶつけた方がいいと思います。ビルドアップは厳しく追い込めば奪えると感じたので、どこかで1個、2個引っ掛けてショートカウンターでチャンス、というのはかなりリアリティのある戦い方だと思います。
――アンカーにデ・ヨング、センターバックにファン・ダイクがいますが、ビルドアップは少し不安定という見立てですか。
シュタルフ:そうですね。日本人の献身性のあるプレッシャーは、世界でもトップレベルだと思っています。オランダは背後というより、けっこう繋ぎたがる。前線のマレンもそうですし、シャドーのところにも縦パスを狙っているイメージがありました。
そこをうまく前向きにインターセプトできたり、潰し切れたりした時に、デ・ヨングがいろいろ動く分、中央のスペースも空いているので、ショートカウンターは成り立ちやすい。サイドバックも上がり気味の時がありますし、ボールは取れるんじゃないかなという印象はありました。