
イングランド代表【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループJ第1節・イングランド代表vsクロアチア代表が現地時間17日に行われ、イングランド代表が4-2で勝利した。決勝ゴールを挙げるなど攻守に存在感を示したジュード・ベリンガムは、トーマス・トゥヘル体制での先発率が35%にとどまっていた。それでも指揮官は大一番で迷うことなく背番号10を起用した。その決断の裏には、就任当初から変わらない明確な理由があった。(文:安洋一郎)[2/2ページ]
得意と苦手がハッキリしているロジャース

イングランド代表MFモーガン・ロジャース【写真:Getty Images】
ロジャースは能力に尖りがあり、よりアタッカー色の強い存在だ。得意分野と課題が比較的明確なタイプでもある。
彼の持ち味が最大限に活きるのはライン間でのプレーだろう。大きな身体を活かしたストライドの大きいドリブルで中央突破を図り、バイタルエリアからのミドルシュートや両足から質の高いラストパスで決定的な場面を演出する。
一方で空中戦やヘディングは大の苦手。今季のプレミアリーグでの空中戦勝率は29%(ベリンガムはラ・リーガで57%)であり、ヘディングでゴールを決めたのはキャリアを通して一度だけ。それもリンカーン・シティに所属していた2021年2月まで遡る。
ボックス内でのワンタッチゴールも所属するアストン・ヴィラのウナイ・エメリ監督に指摘されている伸びしろであり、改善傾向にあるとはいえ、ベリンガムほどの仕事をボックス内でできるわけではない。
またアタッカーの選手であるため、守備で無理が効くわけではない。前線からハイプレスを掛ける意識の高さとコースを限定する巧さはあるが、ベリンガムのように個人でボールを奪い切ることは得意としていない。
むしろプレスバック時の守備は雑になることが多く、ファウルで無理やり止めるというシーンが多い。
この特徴の違いは、クロアチア戦の初戦でもハッキリと出ていた。
2人の間にあったカウンター対応の差

守備をするジュード・ベリンガム【写真:Getty Images】
15分にベリンガムは自軍ボックス内で身体を投げ出すシュートブロックでピンチの芽を摘むと、57分には敵陣でのスライディングタックルでボール奪取。カウンターを受けかけた69分のシーンも背走しながら足を伸ばして、ノーファウルでプレーを切った。
途中出場からピッチに立ったロジャースも90+1分に、69分のベリンガムと同じように背走しながらボールを奪えるチャンスがあったが、スライディングタックルを仕掛けることなく、相手をタッチラインに追い込もうとした。しかし、最終的にはかわされてボールを奪うことはできなかった。
試合終了間際の90+5分に相手MFに身体を入れる形でボールを奪ったシーンもあったが、ベリンガムのように、トップスピードで走る相手をスライディングタックルで止めたわけではない。
チーム最多3つのタックルを成功させたベリンガムのようなカウンター対応での守備の精度には違いがある。トゥヘル監督が志向する高強度のフットボールにおいて、こうした守備面での差は決して小さくない。
ロジャースが素晴らしい選手であることは間違いない。しかし、攻守両面で試合に影響を与えられるベリンガムは、現時点のイングランド代表において代えの利かない存在だ。
トゥヘル監督がW杯初戦で背番号10を選んだ理由は、90分間を通して明確に示されていた。先発率35%という数字は、彼の立場を正しく表していたわけではない。
トゥヘル監督にとって重要だったのは、出場数ではなくベリンガム自身のコンディションだった。
万全の状態でW杯を迎えた背番号10は、初戦から攻守に圧巻の存在感を放ち、自らが指揮官の構想の中心であることを証明してみせた。
【著者プロフィール:安洋一郎】
1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。現在は『フットボールチャンネル』をはじめ複数のwebメディアや欧州名鑑などに寄稿。12歳からアストン・ヴィラを応援し、プレミアリーグを中心に海外サッカー全般を追っている。Xアカウント:@yoichiro_yasu
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