
イングランド代表【写真:Getty Images】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループJ第1節・イングランド代表vsクロアチア代表が現地時間17日に行われ、イングランド代表が4-2で勝利した。決勝ゴールを挙げるなど攻守に存在感を示したジュード・ベリンガムは、トーマス・トゥヘル体制での先発率が35%にとどまっていた。それでも指揮官は大一番で迷うことなく背番号10を起用した。その決断の裏には、就任当初から変わらない明確な理由があった。(文:安洋一郎)[1/2ページ]
イングランドがクロアチアに快勝できた理由
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クロアチア戦で2ゴールを決めたハリー・ケイン【写真:Getty Images】
トーマス・トゥヘル監督が、自身のスタイルに合わないスター選手たちを26人のメンバーから外した理由がよく分かる90分間だった。
1966年以来のW杯優勝を目指すイングランド代表は、北中米W杯の初戦で2018年のロシアW杯の準決勝で敗れたクロアチア代表に見事なリベンジを果たし、4-2の大勝を収めた。
両チームともに積極的なハイプレスを仕掛ける展開となった中で、イングランド代表は最終盤まで強度を落とさずに戦い抜いた。
これを可能にしたのが、冒頭にも言及した選手選考だ。
詳細は『なぜイングランド代表からパーマー、フォーデン、マグワイアが外れたのか。トゥヘル監督の決断の意味に迫る【北中米W杯コラム】』にも書いた通りだ。トゥヘルの選考基準は就任当初から一貫している。
ベースとなるのが、プレミアリーグらしい「フィジカル」と「強度」である。ハイプレスと鋭いカウンタープレスで即時奪還を狙い、試合を支配するフットボールを志向している。
実際にクロアチア戦では、トゥヘルが就任会見で語った「試合の強度を高め、相手ゴール前でのボールタッチを増やしたい。相手陣内でのボール奪取も増やしたい」という言葉通りの戦いを披露。特に後半の強度と運動量は、大会初戦を終えた各国の中でも際立っていた。
この圧倒的な強さを発揮するために欠かせなかったのが、トップ下で先発出場したジュード・ベリンガムである。
しかし同選手はトゥヘル体制下で先発出場が5試合にとどまり、先発率はわずか35%。トップ下の先発争いではモーガン・ロジャースを推す声も少なくなかった。
なぜ、彼はそれでも先発に抜擢されたのだろうか。
最初の2試合で明らかとなった軸となる選手

トーマス・トゥヘルとジュード・ベリンガム【写真:Getty Images】
トゥヘルはイングランド代表の監督に就任して以降の発言や言動が常に一貫している。
先述した強度をベースとした戦い方を志向し、クラブに気を遣うことなく選手を固定して起用することを示唆した中で、就任最初となる2025年3月の代表シリーズにおいて7人の選手を2試合連続で先発起用した。
その7人とは、GKジョーダン・ピックフォード、DFエズリ・コンサ、DFマイルズ・ルイス=スケリー、MFデクラン・ライス、FWマーカス・ラッシュフォード、FWハリー・ケイン、そしてMFジュード・ベリンガムである。
そのうちラッシュフォードは、代表期間内にアンソニー・ゴードンが離脱した影響があっての2試合連続起用。彼と最終的な選考からも外れたルイス=スケリーの2名を例外とする5人は、北中米W杯を戦うイングランド代表の核となる選手たちだ。
アキレス腱の負傷で直前まで離脱していたサカを除く4人が、クロアチア戦のスタメンに名を連ねている。
話をベリンガムに戻すと、最初の2試合で先発に起用された時点でトゥヘル監督の中で彼を軸に据えるプランがあったと推測される。
しかし、2025/26シーズンは怪我やそれに伴うコンディション不良に悩まされ、指揮官は彼が万全な状態ではない限り代表チームに招集することや起用することはなかった。
その一方で、アストン・ヴィラで充実したシーズンを送ったモーガン・ロジャースの評価は上昇した。同選手はトゥヘル体制で最多となる13試合に出場しており、指揮官のお気に入りと報じられることもあった。
今大会に向けてはトップ下のポジションをめぐり、ベリンガムとロジャースのどちらの選手を先発起用するかで話題を集めていた。
ただ、トゥヘルの中では基準が一貫している。W杯直前の強化試合で、ベリンガムが万全のコンディションであることを証明した時点で、W杯初戦のスタメンは決まっていた。
完璧な万能型MFであるベリンガム
ベリンガムとロジャースは、イングランド代表のトップ下のポジションを争っているが、そのプレースタイルは大きく異なる。
ベリンガムはあらゆる局面で高い能力を発揮できる万能型MFだ。
フィジカル能力の高さに加えて、足下のテクニックも兼ね備え、ボックス外からのミドルシュートも武器。ボックス内に入れば、ストライカーのようなゴールへの嗅覚と決定力でワンタッチやヘディングでゴールを量産する。大舞台における勝負強さも抜群だ。
一方の守備面でも献身性が高く、苦しい局面でも対応できる選手だ。自陣に戻っての身体を張ったディフェンスや相手を背走している状況でのスライディングタックルなど、強度の高さを求めているトゥヘル監督にとって、これ以上ないプロフィールを持つ選手である。