フットボールチャンネル

「誰が出ても機能する」日本代表が証明した揺るがぬ完成度。森保一監督が見せた“采配力”とは【北中米W杯コラム】

シリーズ:コラム text by 河治良幸 フリーライター photo by Shinya Tanaka,Getty Images
北中米W杯 GS第2節 vsチュニジア サッカー日本代表 森保一監督
サッカー日本代表 森保一監督【写真:田中伸弥】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループリーグF第2戦、日本代表はチュニジア代表を4-0で下し、決勝トーナメント進出へ大きく前進した。久保建英の負傷という想定外の状況の中、森保一監督はその時点での最適解を模索し、大胆な選択を敢行した。その判断は試合の中で確かな成果として表れ、チーム全体の完成度を一段と押し上げる結果となった。(取材・文:河治良幸)[1/2ページ]

森保一監督が示した采配力

北中米W杯 GS第2節 vsチュニジア サッカー日本代表 試合後
試合後のサッカー日本代表【写真:Getty Images】


 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループリーグF第2戦。日本代表はチュニジア代表を4-0で下し、決勝トーナメント進出へ大きく前進した。

 結果だけでなく内容も圧巻だった。オランダ代表との初戦で示した粘り強さに加え、自分たちが主導権を握る展開で攻守両面の完成度を示した。

 その背景にあったのが、森保一監督の大胆かつ合理的な選手起用だろう。

 負傷離脱した久保建英の右シャドーには、オランダ戦で途中出場だった伊東純也をチョイス。さらに鎌田大地をボランチから左シャドーに上げて、さらに初戦で途中出場した田中碧をスタメンに抜擢した。

 前回大会のコスタリカ代表戦で苦杯をなめた「第2戦」を前に、指揮官は固定観念に縛られず、その時点でのベストメンバーを送り出した。

 森保監督は試合後、鎌田の起用について「大地はここのところボランチで起用してますが、今のチーム状況を考えた時にシャドーに回って彼の良さを出してもらう。今日も得点を決めてシャドーで起点になるだけでなくゴールを奪う、チームを勢づける」と説明した。実際、この判断は見事に的中した。

 左右の違いはあるが、久保不在となったシャドーのポジションで、前線で攻撃のタメを作る仕事がイメージしやすい鎌田だが、本人は試合後、今回は組み立てへの関与を減らし、ゴール前へ進入することを強く意識していたことを明かしている。

 南野拓実が得意とするようなスペースへの侵入を参考にしながら、危険なエリアに顔を出し続けた。

攻撃を加速させた鎌田大地と伊東純也

北中米W杯 GS第2節 vsチュニジア サッカー日本代表 鎌田大地
サッカー日本代表 鎌田大地【写真:田中伸弥】


 先制点はまさにその象徴だった。右から左へ大きく展開した流れの中で、中村敬斗が仕掛けるタイミングを見極めながらゴール前へ侵入。相手最終ラインの視野から消えるように動き、クロスに合わせた。

 ボランチ起用時には見られない、純粋なアタッカーとしての鎌田の強みが凝縮されたゴールだった。

 森保監督が「シャドーで起点になるだけでなく、ゴールを奪う」と語った通り、鎌田は単なるチャンスメイカーではなくフィニッシャーとして機能した。チュニジアが5バック気味に構えたことで日本がボールを保持する時間が長くなり、鎌田の得意とするオフ・ザ・ボールの駆け引きが最大限に生かされたのである。
 
 もう一人、試合の流れを決定づけたのが伊東だった。オランダ戦では途中出場から流れを変えたが、この日は開始直後から相手最終ラインの背後を執拗に狙い続けた。

 チュニジアは守備時に5-4-1でブロックを形成していたが、伊東の存在によって最終ラインは常に後退を余儀なくされた。1トップの上田綺世との連係も良好で、上田がポストプレーで落としたボールに対して背後へ飛び出す形は何度も脅威となった。

 先制点の場面では、中央へ走り込んで相手守備陣を引きつけ、中村敬斗の突破と鎌田の侵入を助けた。攻撃時には、堂安律と流動的にポジションを交換しながらマークの基準を曖昧にし、チュニジア守備陣に混乱をもたらした。

 上田による2点目のシーンでは、ランニングでシュートコースを開ける役割を果たすと、3点目のシーンは上田の絶妙なフリックに反応して抜け出し、冷静にフィニッシュ。持ち前のスピードを個で活かすだけでなく、周囲との連動で相乗効果を発揮した。

 森保ジャパンが近年強化してきた「前線の流動性」を最も体現できる選手の一人が伊東であり、その先発起用は日本の攻撃力を一段階引き上げた。

攻守両面で機能した田中碧

北中米W杯 GS第2節 vsチュニジア サッカー日本代表 田中碧
サッカー日本代表 田中碧【写真:田中伸弥】


 そして、試合全体の安定感を支えたのが田中碧だった。オランダ戦では佐野海舟と鎌田のコンビが機能したが、この日は田中が先発起用に精力的なプレーで応えた。先制点の起点となったプレーは象徴的だ。

 ビルドアップの流れから迷いなく前線へ飛び出し、数的優位を作り出した。自身もボックス内への侵入を常に狙っていたと振り返っているが、守備的MFでありながら、攻撃時にはシャドーストライカーのような動きを見せるのが、田中の持ち味だ。

 一方で守備面の貢献も大きかった。チュニジア最大の武器であるカウンターに対し、危険な場面では素早く帰陣し、前進を遅らせた。

 ボールを奪い切れなくても時間を稼ぐことで味方の守備陣形を整えさせ、日本はほとんど決定機を許さなかった。

 佐野とのコンビネーションもスムーズで、状況に応じて最終ライン近くまで下がりながらビルドアップを補助。試合を落ち着かせる役割も果たした。

 3バックではオランダ戦で途中出場だった冨安健洋と、チームキャプテンの板倉滉を起用している。

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!