
スウェーデン代表はグループステージ第2節、オランダ代表に5-1で敗れた【写真:Getty Images】
日本代表は日本時間6月26日、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループステージ第3節でスウェーデン代表と対戦する。北欧サッカーに精通する鈴木肇氏が、現地の総合スポーツサイト「SvenskaFans」で主に活動しているヴィリアム・エドストレーム氏に取材し、現在のスウェーデンの実情と日本戦のポイントを聞いた。(取材:鈴木肇、語り手:ヴィリアム・エドストレーム)[1/2ページ]
オランダ戦で露呈した弱点。ヒエンへの信頼は大きく揺らいだ

スウェーデン代表のグレアム・ポッター監督【写真:Getty Images】
まず、直近のオランダ代表戦を振り返る必要があります。この試合でスウェーデン代表は5バックで臨みましたが、前半のハイドレーションブレイクを機に4バックへとシステムを変更しました。結論から言えば、この変更は非常にうまく機能しました。だからこそ、日本代表戦でも4バックでスタートするべきだと思います。
システム変更がもたらす最大の利点は、アンソニー・エランガのような攻撃的なカードをもう1枚ピッチに送り込めること、そして何より、センターバックのイサク・ヒエンをベンチに下げる選択肢が生まれることです。
非常に厳しい言い方になりますが、オランダ戦でのヒエンは相手FWのブライアン・ブロビーに完全に蹂躙されてしまいました。彼が以前から抱えていた弱点が、これ以上ないほど露呈してしまったのです。
代表チームでのヒエンはあまりにもパフォーマンスの波が激しく、私を含め多くの者が以前から疑念を抱いていました。オランダ戦を受けて、ヒエンはスウェーデン国民からの信頼を失ってしまったと言わざるを得ません。
現在、チームを率いるグレアム・ポッター監督への評価も、揺れ動いています。ワールドカップ(W杯)出場を決めたプレーオフの後、スウェーデンのメディアは彼を大々的に称賛しました。しかし、個人的にはあの熱狂は少し度が過ぎていたと感じています。
もちろん、前任のヨン・ダール・トマソン監督時代が「漆黒の闇」と呼べるほど酷い状況だったため、そこからチームを立て直してW杯へ導いたポッター監督の手腕は素晴らしいものでした。
また、トマソン監督時代の冷え切った空気から一転、ポッター監督の温厚で親しみやすいキャラクターは、国民から非常に歓迎されています。ラッキーな要素が多かったとはいえ、本大会に出場できたことは本当に喜ばしいことです。
しかし、オランダ戦後に噴出したポッター監督への批判は極めて真っ当なものでした。私が最も懸念しているのは、後半の立ち上がりの悪さです。せっかく前半のハイドレーションブレイク後にポジティブな変化をもたらしたにもかかわらず、後半開始直後に前半の入りと同じ過ちを繰り返してしまい、すべてを台無しにしてしまいました。
日本戦におけるスウェーデンのキープレーヤーを一人挙げるなら、間違いなくアレクサンデル・イサクです。
期待と絶望のジェットコースター。現地記者が語るスウェーデン代表の現状

スウェーデン代表FWアレクサンデル・イサク【写真:Getty Images】
日本の守備陣は、オランダよりもさらに組織的で、ある意味ではオランダ以上に強固だと思います。スウェーデンにとって崩すのは至難の業でしょう。
しかし、もしその強固なブロックの中にスペースを見つけ出し、予想外のプレーで局面を打開できる選手がいるとすれば、それはイサクしかいません。
ただ、正直に申し上げて、私はこの試合、日本が勝利するのではないかと予想しています。チュニジア代表戦からオランダ戦にかけて、我々は期待と絶望の間をジェットコースターのように振り回されてきました。
運良く3位で決勝トーナメントに進めたとしても、そこから先は対戦相手次第とはいえ、ベスト32の壁を越えるのは難しいというのが、現在のスウェーデンに対する私の現実的な評価です。
ここ数年、スウェーデンの守備は目に見えて悪化しています。個の能力が高い選手は次々と育っているにもかかわらず、かつて我々の代名詞であった「強固な組織力」が失われているこの傾向は、非常に憂慮すべき事態です。
歴史を振り返ると、スウェーデンは監督交代のたびに「スタイルが両極端に振れる」という周期を1970年代から繰り返してきました。
ラーシュ・ラーゲルベック監督時代は、強固な守備と「個よりチーム」を基本とする、非常に安定した(見方によっては退屈な)サッカーでした。
このスタイルのおかげでスウェーデンはEURO2000、2002年の日韓W杯、EURO2004、2006年ドイツW杯、EURO2008と、5度連続で主要大会に出場できたのです。
ところが、次第に人々はそのスタイルに飽き、「もっと新しくて楽しいサッカーが見たい」と文句を言い始めました。
そこでやって来たのが、2010年南アフリカW杯出場を逃した後に就任したエリック・ハムレーン監督です。当初は彼の掲げる攻撃的なスタイルに国民も楽観的でしたが、徐々に成績が下降すると激しく批判され、国民は「もっとスウェーデンらしい、退屈でも安定したサッカー」を求めるようになりました。
その結果として就任したのがヤンネ・アンデション監督です。2018年ロシアW杯でベスト8に躍進したときは、誰もが「典型的なスウェーデンのサッカーが戻ってきた!」と歓喜しました。
しかし、アンデション監督も次第に限界を迎え、その後任にアタッキングフットボール志向のトマソン監督を据えたことで、振り子は再び極端に逆方向へと振れ、チームは崩壊の危機に直面したのです。
ポッター監督に求められる“退屈でも負けない”チーム作り
2大会ぶり13回目のW杯出場となったスウェーデン代表【写真:Getty Images】
私がポッター監督に提案したいのは、EURO 2004でラーゲルベック監督とトミー・セーデルベリ監督が実践した手法からインスピレーションを得ることです。
当時のスウェーデンには、ズラタン・イブラヒモビッチ、ヘンリク・ラーション、フレドリク・ユングベリという、メディアの紙面を独占する3人の絶対的な攻撃のスターがいました。
一方で、3人の背後には、堅牢な守備と献身的なMFたちによる強固な基盤がありました。ラーゲルベック監督とセーデルベリ監督は「退屈な」戦術をベースに敷くことで、結果的に前線のスターたちが最も輝ける環境を作り出したのです。
EURO2004でスウェーデンは素晴らしいサッカーを披露しました。準々決勝でオランダにPK戦で敗れはしましたが、「もしあそこで勝っていれば、優勝まで行けたかもしれない」と今でも語り草になるほどのチームでした。
現在、我々にはヴィクトル・ギョケレシュとイサクという新たなスーパースターがいます。だからこそ、ポッター監督はこの2人に自由を与えるためにも、まずは守備と中盤に安定した選手を配置し、確固たる土台を築くことを最優先すべきです。
トマソン監督時代にあまりにも多くの選手が出入りした結果、今の代表チームには「背骨」がありません。ポッター監督もまだ自分のベストな形を見つけきれていないのでしょう。
その結果が、「5-1で大勝したかと思えば、1-5で大敗する」という、今の乱高下するパフォーマンスです。これは全くもって「スウェーデンらしくない」結果です。我々は一刻も早く、あの「退屈だけど負けない」スウェーデンに戻らなければならないのです!