日本代表はスウェーデン代表と1-1で引き分け、グループステージ突破を決めた。しかし、後半の流れは決して日本の思い通りではなかった。スウェーデンはシステムを3-1-4-2へ変更して試合の主導権を握り返し、日本は終盤、自陣に押し込まれる展開を強いられる。何が流れを変えたのか。森保一監督の交代策の意図とともに、ブラジル戦へ向けて浮かび上がった課題を戦術的に読み解く。(文:宮下白斗)[2/2ページ]
終盤に押し込まれた理由
では、純粋にパフォーマンスを分析する時、スウェーデン戦の後半の戦いはどう評価されるべきなのだろうか。
一時的に敵陣で試合を進めたことが何度かあったとはいえ、日本はスウェーデンに押し込まれ、特に終盤は自陣から脱出することに苦労した。
75分に渡辺と長友を投入した時点で、日本ベンチはこうなることを覚悟していたかもしれない。
しかし、スウェーデン相手に守勢に回った上、ピンチも複数あったことから、より力のあるブラジル戦への懸念も生じる。
興味深いのは、スウェーデンのシステム変更そのものに対しては、失点以降あまり混乱はなかったように見える点だ。
トップの選手が相手アンカーのルーカス・ベリヴァルを消しながらCBへプレスをかけ、左サイドでプレスをはめる場面も複数あった。
それでも押し込まれてしまった要因に、奪ったボールをつなぐことがあまりできなかったことが挙げられる。
自陣において日本は5-4-1で守るため、システムの性質上、奪った後の攻撃が難しい。
前線にはトップの選手一人しか残されておらず、他のフィールドプレーヤー9人全員が非常に低い位置にいることがその理由だ。
そのため、長いボールを放り込んで一気にカウンターアタックを展開することは、上田や小川のような収まりの良い選手がいたとしても簡単にはいかない。
87分の判断
例えば87分の場面だ。
アヤリからのパスをスマが収められず、ボールは渡辺のもとに流れる。
ここで渡辺は前方に向かって大きくクリアしたので、スウェーデンはそのボールを拾ってもう一度攻撃を展開する。
渡辺にはスマが迫ってきていたことを踏まえると、蹴り出す判断も決して間違いではない。
しかし、近くにはフリーでパスを呼び込む鎌田がいた。
ここで鎌田へ短いパスをつけられていれば、カウンターにいけずともボールポゼッションにつなげることができていただろう。
仮にそれが叶わなくとも、数本のパスの間にワイドの伊東、長友が上がる時間が作れるため、サイドへ蹴り込んだとしても一人はボールに対応できる。
一人行けば周りの選手も加勢してプレスに行けるので、再度ボールを奪い返して攻撃に転じることも可能になる。
こうした方法で敵陣へボールを運び出せれば、自陣に押し込まれていた流れを断ち切り、試合展開を自分たちに有利なように変えていける。
そのために、即座に危機を脱しなければいけない状況を除いて、ボールを奪った後はできれば1、2本短いパスをつなぎ、次の展開を作り出したいところだ。
ブラジル戦への鍵
火曜に控えたブラジル戦でも、この試合のように押し込まれる時間帯はあるだろう。
そこで鍵を握りそうなのはシャドーの役割だ。
67分以降、日本は伊東・前田というシャドーの組み合わせで約30分間プレーした。
この二人は裏抜けには長けているが、狭いスペースでボールを収めてタメを作るようなプレーは不得手だ。
従って、味方選手は彼らの足元につけるよりも背後のスペースへ走らせようとする。
だが、5-4-1ブロックで守る時、シャドーは自陣深くにいるので、相手ディフェンダーとヨーイドンでスプリント勝負するような場面は生まれづらい。
彼らのスピードを生かしてカウンターを仕掛けたいにもかかわらず、脚力が武器の選手がシャドーに並ぶことで、かえってそれが難しくなり、ボールを落ち着かせることも困難になるのだ。
この事態を回避するために必要なのは、狭いスペースでボールを受けてボランチやトップの選手をサポートできる選手だ。
交代カードとして鈴木唯人が考えられるが、これまでのところプレー機会は限定的で、むしろ鎌田や田中を一列上げることの方が起こり得そうだ。
更には、後藤や塩貝、町野のような選手をシャドーに置き、セカンドトップのように起用するのも選択肢だろう。
オランダ戦で見られた形だが、攻撃時にクロスを活用したり長いボールで押し込みたい場合に有効になる。
シャドーに速さで勝負する選手が並ぶと、今回のように逆にスピードを活かす機会が減ってしまうことがある。
先発・交代でどの選手をどう組み合わせるか、森保監督の選択に注目したい。
睨み合いの展開から試合の均衡を崩したのは日本だったが、先制を許したことでスウェーデンのポッター監督はシステム変更に打って出、試合の流れを掴んだ。
一方の日本にも、目の前の試合をマネジメントしながら決勝トーナメントにつながる経験値を得るというポジティブな部分があった。
奪ったボールを生かし、流れを取り返すプレーがこの試合で片鱗を見せた逃げ切り策に加われば、ブラジルの攻撃を抑え勝ち切ることは十分にできる。
優勝5度の大国に対して日本はどう試合をマネジメントし、勝ち筋を見出せるか。
この大一番を楽しみに待ちたい。
(文:宮下白斗)
【著者プロフィール:宮下 白斗】
2006年4月26日、大阪府生まれ。13歳から試合分析ブログを書き始め、高校入学と同時にスクールコーチとして福山シティFCに加入。その後2年間トップチームコーチを担当した。高校卒業後ウェールズのサウスウェールズ大学のフットボールコーチング学部に入学し、現在は現地のアカデミーで分析官兼コーチをしている。
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【了】




