
サッカー日本代表GK鈴木彩艶【写真:田中伸弥】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)で世界に実力を示した日本代表GK鈴木彩艶に、プレミアリーグ挑戦のチャンスが訪れた。しかし、リーズ・ユナイテッドからのオファーを断ったという報道が大きな話題を呼んでいる。プレミアリーグへの憧れを公言してきた23歳は、なぜ「ノー」を突きつけたのか。その答えは、世界一を目指すキャリアプランのなかにあった。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]
「集大成にするというか…」

サッカー日本代表GK鈴木彩艶【写真:Getty Images】
実は彩艶は浦和時代から、将来へ向けて壮大な青写真を思い描いていた。それは「プレミアリーグで活躍する最初の日本人ゴールキーパーになって、世界一を目指していきたい」と。
憧れ続けてきたプレミアリーグへの最短距離を、自らの意思であえて閉ざしたのが3年前だった。実力と経験がまだまだ足りないと、自分自身を客観視した当時の決断は若さと不釣り合いなほど冷静沈着だった。
ならば、同じプレミアリーグの舞台で戦えるリーズへ断りを入れた今回の理由はどこにあるのか。
守護神の象徴でもある「1」を背負い、初めて臨むW杯へ。彩艶はこんな抱負を語っていた。
「海外で3年間プレーしてきましたし、日本代表としてアジアカップを経験して、(W杯出場をかけた)アジア予選も戦ってきたなかで、いいところも悪いところもいろいろと経験してきました。
その大きな括りとして今回のW杯を(最初の)集大成にするというか、結果を出したいという思いが強いですね。チームの結果が一番ですけど、個人としてもいいパフォーマンスを発揮したい」
ブラジル戦を含めた4試合のパフォーマンスを振り返ったときに、彩艶の脳裏には再びアリソンの姿が蘇ってくる。前出の『報道ステーション』で、試合後にもアリソンからかけられた言葉を明かしている。
「本当に遠い存在で…」

ブラジル代表GKアリソン【写真:Getty Images】
「いいプレーをしていた、と。なので、顔を上げて次へ向かえ、と言っていただきました」
浦和時代からヨーロッパに憧憬の思いを抱いてきた彩艶のなかで、アリソンは「本当に遠い存在で、世界一と言っても過言ではない選手でした」という。その憧れの存在から「次へ」と背中を押された。
彩艶のなかで、新たなステップを踏み出していく覚悟が決まったと『報道ステーション』で語っている。
「そういう選手に試合前も試合後も声をかけていただいた。認めてもらえたというか、いままで自分が積み重ねてきたものは間違っていなかったし、そのなかでレベルアップできている、という感覚がありました。
同時にそういった選手たちのようにならなければいけない、と。日本人ゴールキーパーとして、そういった選手たちに肩を並べ、そして追い越さなければいけないと強く感じたシーンでもありました」
リーズからのオファーはもちろん意気に感じたはずだ。しかし、厳しい言い方になるが、プレミアリーグへ昇格した昨シーズンを14位で終えたリーズは、彩艶が青写真として描く「次へ」と一致しなかった。
世界最高峰で戦うための決断

サッカー日本代表GK鈴木彩艶【写真:Getty Images】
その観点で望むのはプレミアリーグで上位争いを演じ、ヨーロッパの舞台にも挑めるクラブとなる。
昨シーズンのプレミアリーグで4位に入り、UEFAヨーロッパリーグ(EL)を制して最高峰の戦いとなるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)にも出場するアストン・ヴィラは、理想的な存在になると言っていい。
あるいはアストン・ヴィラとともに彩艶の新天地候補として名前があがっているユヴェントスは、セリエAを代表する名門クラブであり、新シーズンはELの舞台でも戦う。
北中米大会の雪辱を期す2030年の次回W杯へ。日本代表に関わるすべての選手たちが、これまでと同じく所属するクラブで個々のレベルアップを果たしていこうと誓い合った。
そのなかで23歳にして絶対的な守護神を射止めた彩艶が描く成長曲線は、マンチェスター・ユナイテッドに続いてリーズへも断りを入れた決断を介して、さらに右肩上がりの奇跡を描こうとしている。
(取材・文:藤江直人)
【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
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【了】
