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Jリーグ 6時間前

難役を楽しむ新戦力。清水エスパルス、須貝英大が枯渇していた右SBを自分色に染める。欧州キャンプで示した成長【コラム】

シリーズ:コラム text by 榊原拓海 photo by Takumi Sakakibara

清水エスパルスの須貝英大
清水エスパルスの須貝英大【写真:榊原拓海】



 今夏、清水エスパルスは積極補強を敢行したが、最終ラインの新戦力は1名のみ。その1人となった須貝英大は、8日間にわたってトレーニングに打ち込んだオーストリアキャンプにて、新天地への確かな適応力を示していた。(取材・文:榊原拓海【オーストリア】)

定まらなかった右SBに新戦力

清水エスパルスの須貝英大
須貝英大は定まっていなかった右SBの新戦力として期待されている【写真:榊原拓海】



 清水エスパルスが初の欧州キャンプを実施したオーストリア・ゼーフェルトの地で、須貝英大は戦術面への確かな手応えを手にしていた。

 吉田孝行監督が右SBに求める役割は非常に複雑だ。攻撃では幅を取り、ビルドアップやクロスで起点となる。一方、守備ではカウンターの芽を摘むポジショニングを徹底し、サイドの1対1でも粘り強く対応する。攻守両面で、絶えず適切な立ち位置を取り続けなければならない。

 言葉で書くのは簡単だが、実行するのは決して容易くない。戦術理解に加えて、走力、精度、強さなど、さまざまな要素が求められるからだ。

 実際、プレシーズンも含めたJリーグ百年構想リーグの期間では、吉田豊、高木践、日髙華杜、北爪健吾、そしてセンターバックを本職とするパク・スンウクらが右SBを務めたが、“不動”と呼べるような存在はいなかった。

 そこで、クラブは今夏に右SBの強化に動いた。絶え間なくアップダウンする走力を備え、1対1も強く、戦術理解度が高い。そうした前評判もあって、須貝に寄せられている期待は非常に大きかった。

迷いのあったプレーが一転…

清水エスパルスの須貝英大
欧州キャンプで存在感を示す須貝英大【写真:榊原拓海】



 キャンプ入りから3日間のトレーニングを経て臨んだポリッスヤ・ジトミール(ウクライナ1部)とのゲームは、2本目の45分間のみのプレーとなり、彼のプレーからはまだ迷いを感じた。しかしながら、同試合を経て、再び3日間のトレーニングに励んで迎えた18日のカールスルーエSC戦、須貝のフィット感は格段に増していた。

 同試合は45分間×4本の形式が行われたが、1〜2本目、3〜4本目それぞれで90分間のゲームを実施した感覚に近い。1〜2本目に出場した須貝は、1本目(前半)の立ち上がりから、スペースがあると判断するや否や、相手を外した状態でボールを引き出す動きを見せ、守備面でも対面した相手に決定的な仕事をほとんどさせず。チームが主導権を握った2本目(後半)については、見事なスルーパスで木下康介の加入後初ゴールを演出した。

 しかしながら、本人の自己評価は決して高くない。須貝は「前半に関しては、そこまで満足していないです」と語り、試合を俯瞰視した上で、「チームとして守備の時間が長かったことも一因ですよね。もう少しボールを保持する時間があれば、より一層、前線の選手と関わることができたと思っています」と口にする。

 ただし、「どんな試合でも、難しい時間帯は絶対にあります。そこで失点せずに、しっかりと前半を折り返せたことは良かったと思います」と須貝。前半は自らがボールを引き出すシーンは決して多くなかったが、後半に入ると、我慢強く正しい立ち位置を取り続けたことで、須貝の存在感が一気に顕著になった。

 その理由については、「立ち位置を取ることをやめていなかったからこそ、後半に入って相手の運動量が落ちていくにつれて、チャンスの数が増加した」と説明。北川航也との連係で右サイドを突破し、木下が奪った先制点をアシストしたシーンの背景には、チームコンセプトを理解しながらも、ベンチからの指示を自らのプレーに即座に落とし込める彼の力があった。

迷いのあったプレーが一転…

清水エスパルスの須貝英大
須貝英大は監督の理想像をしっかりとイメージしながらプレーを続けている【写真:榊原拓海】



「まず、タカさん(吉田孝行監督)からは常に、『サイドの低い位置で2対1の状況を作ろう』とは言われています。3バック相手の攻め方、4バック相手の攻め方についても、明確な提示がありました。自分としてはすごくやりやすかったです」

「今日は比較的、人に対してガツガツ来る相手でした。だからこそ、チームとして裏を狙う共通認識があり、そこを意識したポジションを取った上で、前線の選手がいい形で顔を出してくれたことが大きいですね」

「後ろからパスをつけて、再び関わっていくプレーは、自分の良さでもあります。そこをしっかり発揮しながら、木下選手が素晴らしいシュートを決めてくれたことが大きいですね。前線の選手、中盤の選手、後ろの選手がしっかり繋がりながら奪ったゴールかなと思います」

 この8日間のキャンプで、須貝は清水の右SBを“彼の色”で染めつつある。吉田監督が求める理想像を具体的にイメージできているからこそ、彼は次のような言葉を口にする。

「まず、仕事量はすごく多い。単純な運動量の部分だけでなく、しっかり考えながらポジションを取り、タイミングを見て上がる、そしてSBなので戻るところも求められるので。武器の運動量だけでなく、考える部分でもしっかりと力を発揮して、監督の求める基準にどれほど近付けるかが大事ですよね」

しかし、まだ彼の中では“理想”に届いていない。それは、「自分自身、まだまだ足りない部分も多い」との言葉からも明らかだ。

ただし、「新たな発見もありますし、いろんな選手からいろんな刺激をもらっています。キツイですけど、すごく楽しいです」と、この挑戦を前向きに捉えているのが、好青年の彼らしい。

 今季、チームは明確にタイトルという目標を打ち出した。そこに近づくためには、吉田監督が求める“完璧なSB”の存在は必要不可欠。須貝はこのオーストリアキャンプで、その理想像へ近づく可能性を十分に示してみせた。

「タイトルに近づくためには、自分のパフォーマンスを高めていくだけだと思います」。こう語る須貝は、このキャンプ最大級の収穫の一人になった。

(取材・文:榊原拓海【オーストリア】)

【著者プロフィール:榊原拓海(さかきばら・たくみ)】
1996年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。学生時代よりWEBメディアの編集業務にアルバイトとして携わり、2024年よりフリーランスとして活動。現在はサッカー専門新聞『エルゴラッソ』にて清水エスパルスを担当。同メディアを中心に、さまざまな媒体に寄稿している。

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