
ボルシア・ドルトムント 山本天翔【写真:Getty Images】
18歳でドイツの名門・ボルシア・ドルトムントへの挑戦を決断した山本天翔。今夏のジャパンツアーでは、世界屈指のビッグクラブで自身の可能性を示した。しかし、欧州で成功をつかみ、トップチームに定着するまでの道のりは決して平坦ではない。多くの海外挑戦経験者からの助言も胸に、ガンバ大阪のアカデミーが育んだ若き才能は、異国の地でどのような成長を遂げていくのか。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
18歳がつかんだ名門への扉

ボルシア・ドルトムント(FC東京戦スタメン)【写真:Noriko NAGANO】
7月29日のセレッソ大阪戦と、8月1日のFC東京戦の2試合が行われたボルシア・ドルトムントジャパンツアー2026。試合結果は前者が0−1、後者が1−0の1勝1敗となったが、日本のサポーターが最も注目した1人が今夏、ガンバ大阪から同クラブへレンタル移籍した18歳・山本天翔だろう。
ガンバでジュニアユース時代から育った彼は2025年に2種登録され、2026年明治安田J1百年構想リーグから本格的にプロキャリアをスタートさせた。同リーグではボランチとして5試合に出場。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2でもピンポイントでプレーし、半年間で急成長を遂げた。
さらにはU-19日本代表としてFIFAワールドカップ2026(W杯北中米大会)のトレーニングパートナーも務めるなど、高度な経験値を積み重ね、今回の名門移籍のチャンスをつかみ取ったのである。
スタメン出場したセレッソ戦とは異なり、FC東京戦はベンチスタート。だが、カーニー・チュクエメカの負傷もあり、23分に急遽、右シャドーに入ることになった。
相次ぐ10代の欧州移籍と課題

ボルシア・ドルトムント ジョーブ・ベリンガム【写真:Atsushi Mihara】
「いつ呼ばれても出られる準備はできていた」と本人も意気込んで登場。ドイツ代表のフェリックス・ヌメチャ、ジュード・ベリンガム(レアル・マドリード)を兄に持つジョーブ・ベリンガムの2ボランチが陣取る前でイキイキとプレー。69分に下がるまで、全力で東京・国立競技場のピッチを駆け回った。
その若武者への期待が大きかったのか、FC東京サポーターからも温かい拍手が送られたほどだった。
「今シーズンはトップチームにどんどん絡んでいきたいですし、その中でリーグ戦やカップ戦で結果を残していきたい」と山本はギラギラ感を押し出したが、当面はU-21チームで活動することになる。
2010年夏に同クラブに赴き、大ブレイクした香川真司のような軌跡を辿れれば理想的だが、日本人選手が欧州で華々しいキャリアを過ごすのはそう簡単なことではない。
特に近年は10代選手の欧州移籍が相次いでいるが、成功例が乏しいのが実情である。
尚志高校時代から名を馳せ、Jリーグを経由せずに2022年夏にシュトゥットガルト入りしたチェイス・アンリ、神村学園高校からボルシア・メンヒェングラートバッハ入りした福田師王らを筆頭に、若い日本人がトップに上がるまでの時間を要するケースが目立つのは、日本サッカー界にとっての大きな課題だ。
ロサンゼルス五輪世代の小杉啓太、神代慶人もここまではドイツ・ブンデスリーガ1部出場を果たせていない。
ドルトムントという強豪クラブで突き抜けていくのは、我々が想像する以上にハードルが高い。それを山本自身も重々承知のうえで、このチャレンジに踏み切ったに違いない。
「僕はできると…」

ボルシア・ドルトムント 山本天翔【写真:Atsushi Mihara】
「他の人のことは僕、あんまり関係ないと思っているので、自分を信じて妥協せず、毎日毎日取り組めれば、僕はできると信じている。自分を信じて頑張っていきたいと思います」
山本はFC東京戦後、毅然とこう語ったが、本当に成功をつかもうと思うなら、やるべきことは数多くある。
2023年夏に明治大学からヴェルダー・ブレーメンにチャレンジし、1年半でJリーグ移籍を選んだ佐藤恵允が興味深い話をしていた。
「海外ではまずコミュニケーションは必須。言語も違うし、その環境で自分を表現する力はすごく大事ですね。それプラス、今日の試合を見てもらったら分かる通り、選手個々の身体能力やプレーエリアの広さが明らかに違うので、その差をどう埋めていくかを自分なりに考えていかないといけない。
その作業がすごく重要になります。もう1つ言うなら、絶対に負けない自分の武器を持つこと。それを磨いていく必要もあると思います」
彼と似たような話をしていたのが、やはり2025年夏にセルティック入りし、半年間のチャレンジを経て帰国を決断した稲村隼翔だ。