
柏レイソル 遠藤渓太【写真:編集部】
8月1日に行われた第31回ちばぎんカップは、PK戦の末に柏レイソルがジェフユナイテッド千葉を下した。一方で、5バックでゴール前を固める相手から90分間で得点を奪えず、リカルド・ロドリゲス体制発足以降の課題である「引いた相手をどう崩すか」が改めて浮き彫りとなった。解決策の一つとして期待される新加入・遠藤渓太を、柏は左サイドでどう活かすのか。監督や攻撃のキープレーヤーたちの言葉から考える。(取材・文:高橋大地)[1/2ページ]
5バックを崩し切れなかった柏レイソル

柏レイソルのリカルド・ロドリゲス監督【写真:Getty Images】
「引いた相手をどう崩すのか」
これは、どのカテゴリーでも起こり得るサッカーの永遠のテーマであり、リカルド・ロドリゲス監督就任以降の柏レイソルも、この課題と向き合い続けている。
柏は、この日もボールを保持し、ジェフユナイテッド千葉を自陣に押し込んだ。守備でもセットプレー以外では大きな危険をつくらせず、90分間を無失点で終えた。
ただ、5バックでゴール前に人数を集めた千葉を崩し切る場面は、決して多くなかった。
リカルド監督も試合後の会見で、「決定的なチャンスを多くつくれていたかというと、必ずしもそうではありません。少し攻撃を急ぎすぎてしまう場面も多かったと思います」と、攻撃について改善の必要性を口にしている。
柏の攻撃のタクトを振るう小泉佳穂はこう語る。
「10人、11人でブロックをつくり、引いて守る相手を攻略することには、世界中のどのチームも苦労します。負ける可能性は低くなっても、勝つことも難しくなるのは当然です」
それでも、長いリーグ戦で優勝を目指すのであれば、ローブロックを敷いてくる相手からどれだけ勝ち点3を積み重ねられるかは、避けては通れないテーマになる。
柏には、相手を押し込み、ボールを保持し続けられる強みがある。特に右サイドでは、シャドーの小泉らが絡んで、右ウイングバックや右センターバックと連係しながら、相手の最終ラインの背後へ入り込む形をつくってきた。
一方、左サイドでは、右ほど複数の選手が関係しながら崩す場面は多くなく、ウイングバックの突破力に頼る部分もあった。
2025シーズン限りで小屋松知哉が退団すると、その穴は百年構想リーグで浮き彫りになった。右サイドと比べて攻撃の関係性をつくり切れず、左から局面を前進させる形が限られていたからだ。
今季、その課題を解決するための一つのピースとして期待されているのが、FC東京から加入した遠藤渓太である。
遠藤自身も7月4日に行われた新体制発表の場で、クラブから期待されている役割を明確に認識していた。
遠藤渓太に求められる「違い」

柏レイソルに新加入した遠藤渓太(左から2番目)【写真:編集部】
「左サイドでの突破力だったり、そこでの攻撃力を自分は評価されていると思います」
そのうえで、小屋松が担ってきた役割にも言及している。
「別に小屋松選手みたいになろうとは思っていないですけど、結論としては、あれが求められている形だとは思うので、そこに近づけるように攻撃力をどんどん活かしていきたいなと思っています」
小屋松と同じプレーを再現するのではなく、自身の突破力と攻撃力によって、左サイドに推進力をもたらす。それが遠藤に託された役割の一つだろう。
「攻撃のところを期待していますし、それを随所で表現してくれました。今日の試合でもチームメートと良い連係が取れていたと思いますし、守備のところもおろそかにせず、しっかりとできていたと思います。今シーズンはより多くの仕事、活躍を期待しています」と、リカルド監督は試合後の会見で遠藤のプレーに一定の評価を与えている。
指揮官が攻守両面で遠藤のプレーに手応えを感じていた一方で、遠藤本人は「良くなかったと思いますし、自分がもっと違いをつくらなければいけなかったというのが反省点です」と自己評価は厳しかった。
遠藤には相手と正対した状態から局面を変えられる武器がある。組織的なパスワークだけでは動かせない守備者を、個の打開力によって動かせる選手だ。
相手にゴール前を固められ、スペースがなくなった状況でも、1対1の仕掛けによって守備者を引きつけられる。相手が遠藤への対応に人数を割けば、その周囲には別の選手が使えるスペースも生まれる。
もっとも、遠藤自身は、「現時点では右サイドのコンビネーションの方が回数としても多いと思います。左サイドでもうまくローテーションをつくろうとしていましたが、連係のスムーズさという点では正直まだまだだと感じています」と、左サイドの完成度には課題が残ると振り返った。
だからこそ重要になるのは、遠藤個人の能力だけではない。
この日、左シャドーでコンビを組んだ仲間隼斗は「渓太の良さを、もっと引き出してあげたかった」と話す。
「渓太にはドリブルやシュート、カットイン、クロスという良さがあります。それをもう少しチームの中に落とし込めるようなポジショニングや組み立てができればよかったと思います」
遠藤のストロングポイントを最大限に活かすには、本人にボールを預けるだけでは足りない。その周囲にいる選手も含め、新しい攻撃の形をつくる必要がある。
「左には左なりの形」が必要

柏レイソル 仲間隼斗【写真:Getty Images】
仲間は「左と右では求められることや立ち位置が少し異なるので、そのバランスをチーム全体で見つけていかなければいけません」と右サイドと左サイドでは求められる役割が違うと説明する。
仲間自身、この試合では右へ流れたり、相手を押し込んだ際には中央でプレーしたりする役割を担っていた。そのため、常に遠藤の近くでプレーできたわけではない。
この日、右サイドでは、右センターバックの馬場晴也、小泉、右ウイングバックの山之内佑成が関係をつくり、複数の選手が連動しながら相手の背後を狙っていた。
しかし、左サイドにも同じ人数と動きを配置すればいいという話ではないと、仲間は話す。
「左サイドには左サイドなりの形を、もっと見つける必要があります」
仲間が言うように、左右では選手の特徴も役割も異なる。だからこそ、右サイドの成功例を再現するのではなく、遠藤をはじめ左サイドの選手たちの特長を活かせる新たな関係性を築く必要がある。
遠藤も同じ認識を持つ。
「左シャドーだけでなく、左センターバックの選手も含めて連係していく必要があります。相手があれだけ引いてくるのであれば、もう少しリスクを冒してでも攻略したかった」
左センターバックが前方へ関われば、相手の守備者を引きつけられる。仲間が内側や中央へ移動すれば、遠藤が1対1で仕掛けるスペースを確保できる。反対に、相手が遠藤を警戒して外側へ寄れば、その内側を仲間や中盤の選手が使える。
遠藤と仲間の二人だけではなく、左センターバックを含む左側のユニット全体で攻撃を構築する。そうした共通理解があって初めて、遠藤の個性はチームの武器へと変わる。
一方、小泉は、新加入選手の個性とチームの戦い方がどのようにかみ合うかについて、現時点で結論を出すのは早いと考えている。