
Jリーグはこれまでの春秋制から、世界基準のカレンダーに合わせた秋春制へ移行するが、レフェリングの基準はどうなっていくのか【写真:編集部】
きょう8月7日に開幕する2026/27明治安田Jリーグでは、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)でも採用された新たな競技規則が導入される。目的は「試合の価値を高め、魅力を増すこと」と「判定の質の向上」だ。時間稼ぎを抑制する新ルールが注目される一方、日本サッカー協会(JFA)審判委員会が7月のレフェリーブリーフィングで示したのは、単なるルール変更ではなく、レフェリングそのものの方向性だった。北中米W杯を経て、日本のサッカーはどのような基準を目指していくのか。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
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「試合の価値」と「判定の質」。競技規則改正が目指すもの

レフェリーブリーフィングにて報道陣に説明する扇谷健司JFA審判委員会 委員長【写真:編集部】
2026/27シーズンのJリーグでは、北中米W杯でも採用された競技規則改正が導入される。今回の改正が掲げる柱は、「試合の価値を高め、魅力を増すこと」と、「判定の質を向上させること」の2つだ。
前者では、交代時の10秒ルールや、スローイン・ゴールキック時の時間制限(5秒)、負傷した選手やその疑いがある選手はピッチから一時退出した後、プレーが再開されてから原則1分間ピッチ外で待機するルールなどを導入。
時間稼ぎや不要な中断を減らし、アクチュアルプレーイングタイムの増加を目指しており、主審が遅延行為を管理する新たな仕組みが導入される。
一方で、VARが介入できる項目や条件の見直しなど、「判定の質」を高めるための改正も行われた。誤審を減らし、より正確で公平、そして納得感のある判定を実現することが狙いとなる。
しかし、JFA審判委員会が7月21日に実施したレフェリーブリーフィングで、多くの議論が交わされたのはルールそのものではなかった。
佐藤隆治JFA審判マネジャーや扇谷健司審判委員長が繰り返し語ったのは、「どこまでをプレーとして認め、どこからを反則とするのか」というレフェリングの基準である。
北中米W杯では、接触プレーのたびに笛が鳴るのではなく、プレーが続行される場面も多く見られた。
JFA審判委員会が目指しているのは、単純にファウルを減らすことではない。反則に当たるプレーは正しく取り、正当なコンタクトについてはプレーを止めない。その見極めの基準を世界基準へ近づけることこそが、今回のテーマだった。
“ファウルだけど流す”ではない。目指すのはフェアなコンタクト

改正された競技規則やレフェリングの重点ポイントについて説明する佐藤隆治JFA審判マネジャー【写真:編集部】
ブリーフィングではレフェリングにおける重点ポイントについても説明された。
その中の項目として挙げられたのが、コンタクトプレーへの対応だった。
「正当なチャレンジ」であるかどうか。「接触の責任」が誰にあるのか。「不用意、無謀、過剰な力」がかかったチャレンジをしていないか。そして、「選手生命を脅かすタックル」をしていないか。そうしたプレーを行わないことが重要だとした。
2025シーズンからJFA審判委員会は「コンタクトプレーの標準を上げる」と説明してきた。しかし、その言葉だけが独り歩きし、「ファウルを見逃す」という受け止め方も少なくなかったという。
佐藤氏は、その認識を明確に否定した。
「ファウルはやっぱりファウル。ファウルではないものに笛は吹かない。当然、サッカーというコンタクトプレーが認められている中で、どこまでのコンタクトプレーを許容するのかという話です」
さらに、こうも続ける。
「一方で、一つ反則を取らないことによって選手がヒートアップして、結果として大きなケガにつながるような反則になってしまうという指摘も受けます」
つまり、「笛を減らす」ことが目的ではない。競技者の安全を守りながら、サッカー本来の激しさや連続性をどう実現するか。そのバランスを探っているのである。
そのためには、レフェリーだけではなく、クラブや選手との共通認識も不可欠だという。
「ピッチ上の競技者の安全が守られている中で、いかに激しく、タフなゲームにしていくか。我々レフェリーもそうですし、クラブや選手とも一緒に作っていきたい」
JFA審判委員会が目指しているのは、「取らない基準」ではなく、「フェアに競り合える基準」と言えるだろう。
北中米W杯で見えた”世界基準”。Jリーグはどう近づくのか

レフェリーブリーフィングでは退場に関する興味深いデータも示された【写真:編集部】
北中米W杯で見られた接触プレーへの判定基準について、佐藤氏は一定の理解を示しながらも、こう語った。
「それを今のこのJリーグの基準に、『ほら、これを取らないから日本もこれは取らないよ』というのが、必ずしもイコールにはなっていかないと思います」
北中米W杯をそのまま模倣するのではなく、日本の選手やクラブと基準を共有しながら、コンタクトプレーの許容範囲を探っていく。その考えを示した上で、さらに印象的な見解を述べている。
「肌感覚ですけど、(危険な)チャレンジがすごく少なかった」
佐藤氏が評価したのは、笛の少なさではなく、選手側が危険なプレーを避けながら競り合っていた点だった。
「選手がフェアにチャレンジして、その中で接触している。ノーマルスピードで見たときに、タックルの仕方を選手がすごく気をつけているのかなと思った」
VARの存在もあり、危険なタックルへの意識が高まっていることが背景にあると分析する。
一方、日本では依然として危険なチャレンジが少なくないというデータも示された。
百年構想リーグでは、およそ半年間で退場処分は26件に達した。そのうち、一発退場によるレッドカードは8枚。2025シーズンの一発退場によるレッドカードが年間で7枚だったことを踏まえると、半年間で前年を上回るペースとなっている。
JFA審判委員会は足裏から入るタックルなど、VARが介入するような危険なプレーが依然として多い現状を課題として挙げた。
つまり、日本が世界基準へ近づくために必要なのは、“多少の接触は流す”ことではない。危険なチャレンジ自体を減らし、フェアなコンタクトの中で試合を成立させることなのである。