
サンフレッチェ広島 中島洋太朗【写真:Getty Images】
浦和レッズの守備陣を翻弄した絶妙なパスには、中島洋太朗の非凡なセンスが凝縮されていた。20歳とは思えない落ち着きと、見る者を唸らせる卓越した技術。怪我を乗り越えたサンフレッチェ広島の至宝が、いよいよ本格的にその才能を開花させようとしている。(取材・文:佐藤彰太)[1/2ページ]
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明治安田J1リーグ第2節
浦和レッズ 1-4 サンフレッチェ広島
埼玉スタジアム2002
「いいパスが出せたかなと…」

中島洋太朗のパスを起点に勝ち越しゴールを挙げたサンフレッチェ広島の塩谷司【写真:Getty Images】
「どうしようか最初は決めていなかったですけど、走ってくれたんで出しました」
勝ち越しとなる塩谷司のクラブ最年長ゴールをお膳立てした中島洋太朗は、得点シーンを淡々と振り返った。
まさに、彼の非凡な才能が詰まった一手である。
この絶妙な浮き球のパスによって、浦和レッズの守備陣を一瞬にして混乱に陥れた。
ボールを受ける前から首を振り、前線の状況を把握。自身にボールを預け、そのまま走り込む塩谷の動きを見逃さず、相手守備陣が最も対応しづらいボールを送り込んだ。技術と判断力が凝縮された見事なアイデアだった。
本人もイメージ通りだったと語るこのシーンについて、「回転とパススピードが弱くなってもいけないし、強くなりすぎてもというところで、いいパスが出せたかなと思います」と振り返った。
この試合で、開幕戦に続いてボランチの一角で先発出場した中島は、卓越したボールタッチに加え、まるでピッチを俯瞰して見ているかのような空間把握能力で試合をコントロール。攻撃の起点となりながら、相手のプレッシャーを受けても冷静にボールを動かし、広島の中盤を支え続けた。
「うまく使い分けながら…」

サンフレッチェ広島 中島洋太朗【写真:Getty Images】
それだけではない。「常に意識している」と語る守備への意識も一層高まっており、ゲームメイクを担うボランチとしての役割に加え、球際でも戦える強さを身につけつつある。
そして、相手に厳しく身体をぶつけられる場面でも、簡単にはボールを失わない。球際での強さを見せながら、コンタクトの局面でも落ち着きを失わずプレーできるようになったことで、以前にも増して存在感が際立っている。
その変化について、中島はこう語る。
「うまく使い分けながら、しっかり(体を)ぶつけているのもありますし、当たらずにかわすっていうのも大事です。そこは使い分けながらできたらいいなと思います」
2025年4月には、左膝外側半月板部分切除術を受けて戦列を離れた。約2カ月半にわたって実戦から遠ざかることとなり、その後復帰してからも随所で技術の高さを披露してきた一方、本来の能力を考えれば、どこか物足りなさを感じさせる時期もあった。
さらに、今年2月に開幕した明治安田J1百年構想リーグでは、出場8試合のうち先発は4試合。負傷の影響もあり、継続してピッチに立つことが難しい状況が続いた。
だからこそ、今季の中島が見せている姿には、これまでとは違った力強さがある。
川辺駿と築く新たな関係性

サンフレッチェ広島 川辺駿【写真:Getty Images】
その要因の一つとして、広島ユースの先輩である川辺駿の存在も挙げられるだろう。
中島は川辺について、「駿くんもなんでもできるので、組み立てのところを任せる場面もありますし、逆に僕がそこに加わって駿くんが前で関わるってこともできます。そこはいい関係ができている」と印象を語っている。
一方の川辺も「自分が出なくても洋太朗がいいポジション取れば、前にスペースを空けられるっていうのはすごく理解している」と話している。
互いの特徴を理解したうえで、役割を固定せず、状況に応じて立ち位置を変える。そんな柔軟な関係性が、広島の中盤にさらなる厚みをもたらしているのだ。
今季開幕前に行われた宮崎キャンプでは、ヴェルスパ大分とのトレーニングマッチに出場。この試合では、相手のクリアボールを拾うと、巧みなキックフェイントで2人のディフェンダーをかわし、右足で強烈なシュートを叩き込んだ。
このプレーは、広島の公式YouTubeチャンネルのキャンプレポート内でも公開され、サポーターの期待をさらに高めることとなった。
ただ、意外にも中島にはまだリーグ戦でのゴールがない。
得点への思いについて問われると、「もちろんいつでも取りたいですけど、そこを意識しすぎるといいプレーができないと思うので、そこは常に狙いながらもそれがすべてじゃない。チームが勝つためにいいプレーができればと思います」と強調している。
自らが得点することよりも、まずはチームが勝つために何ができるか。その姿勢こそ、現在の中島を象徴しているのかもしれない。