
ジュビロ磐田 乾貴士【写真:Getty Images】
2026/27明治安田J2リーグで開幕2試合未勝利だったジュビロ磐田は、第3節で徳島ヴォルティスを2-1で下し、今季初勝利を挙げた。秋葉忠宏監督が「もう最高ですよ」と称えたのが、今季初先発で90分間プレーした38歳の乾貴士だ。得点もアシストもつかなかった背番号23は、攻守でどのようにチームのスイッチを入れたのか。 (取材・文:河治良幸)[2/2ページ]
90+2分、乾が呼び込んだ決勝FK

ジュビロ磐田 太田龍之介【写真:Getty Images】
後半、秋葉監督は選手交代を使いながら勝点3を狙った。フレッシュな選手たちが次々と投入される中でも、乾はピッチに残った。終盤には自ら決定機も迎えた。
「あれを決めていたら交代できたと言われましたけど(笑)。ただ、勝ち越しゴールを決めたときにグラウンドの中にいられるのも嬉しいですし、90分間出場できるのも嬉しいので、疲れましたけど、すごく充実感があります」
そして90+2分、乾が左サイドでファウルを受けると、井上のFKを太田が頭で仕留めた。最後まで乾をピッチに残した意味が、決勝点にもつながった。
前から守備のスイッチを入れ続けた38歳が、最後の最後には決勝点につながるセットプレーを獲得した。秋葉監督が乾をピッチに送り出し、最後まで残した意味を象徴するようなシーンだった。
「攻守において、我々が体現したいフットボールをまさに先頭に立ってやってくれました。まだまだ38歳、末恐ろしいなと。何歳になってもできるなと思わせてくれるようなパフォーマンスでした」
公式記録上、乾にゴールもアシストも付かない。しかし、この90分を評価するために数字だけを見るのは十分ではない。
前から追い、ライン間でボールを引き出し、前を向いて相手の守備を動かす。縦へのパスを通し、自らシュートを打つ。
そして最後は、決勝点につながるFKを獲得する。秋葉監督が「ジュビロらしいフットボール」を取り戻すために乾を必要とした理由が、そのままピッチに表れた試合だった。
乾が示した「基準」を誰が引き継ぐのか

ジュビロ磐田 乾貴士【写真:三原充史】
もちろん、初勝利を生み出したのは乾一人ではない。スタートから出た選手たちが前半から徳島へ圧力を掛け続け、途中から入った選手たちが新たなエネルギーを加えた。
最後は井上と太田という途中出場の2人が決勝点を生み出している。その全員の仕事が90+2分のゴールにつながった。
ただ、その中で乾が果たしたのは、自ら先頭に立ち、チームが進む方向をプレーで示す役割だったのだろう。秋葉監督が「ようやく我々らしいフットボール」と表現した徳島戦。その基準を最も分かりやすく示したのが38歳だった。
乾自身はすでに次を見ている。
「ここから連戦が始まるので、総力戦になりますし、みんなで同じ方向を向いて、この勝利を続けられるようにやっていきたいと思います」
まさに、ここからが重要になる。次は天皇杯でテゲバジャーロ宮崎と対戦し、それを挟んでリーグ戦では好調の栃木シティとのアウェーゲームが待つ。連戦に入れば、38歳の乾がすべての試合で90分間、チームを引っ張り続けることを前提にはできない。
だからこそ問われるのは、徳島戦で乾が示したプレッシングの強度、攻守の切り替え、そして「勝つこと」を最優先にプレーする姿勢を、周囲の選手たちがどこまで自分たちの基準にできるかだろう。
「自分自身がどうこうというよりも、勝つことだけを考えてやっていました」
ゴールもアシストも記録されなかった。それでも、試合開始から終了の笛まで、勝つために必要なプレーを続けた。
秋葉監督が「ジュビロらしいフットボール」を取り戻すために真っ先に思い浮かべた38歳。その乾貴士の奮闘に触発されたジュビロ磐田が、今度はチームとしてその基準を引き継げるのか。
宮崎との天皇杯を経て、開幕3試合で2勝を挙げている栃木シティが待つ敵地へ。徳島戦で見せた戦いを一過性のものにせず、反転攻勢につなげられるのか。そこで秋葉ジュビロの真価が問われる。
(取材・文:河治良幸)
【著者プロフィール:河治良幸 フリーライター】
東京都出身。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で日本代表を担当し、プレー分析を軸にグローバルな視点でサッカーの潮流を見続ける。セガ『WCFF』の選手プロフィールを担当。著書に『勝負のスイッチ』『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』『サッカー番狂わせ完全読本ジャイアントキリングはキセキじゃない』がある。TwitterIDは@y_kawaji
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