
横浜F・マリノスに敗れた柏レイソル【写真:Getty Images】
柏レイソルは6日、横浜F・マリノスに0-2で敗れた。前節から先発6人を変更し、1点を追う後半開始からは一気に3枚を交代。それでも、なかなかエンジンはかからなかった。ただ、この敗戦を単純な「ターンオーバー失敗」で片づけることはできない。抜擢された選手だからこそ生まれた違いがある一方、ここまで主力として活躍している選手から珍しいミスも出た。そしてマリノスもメンバーを入れ替えながら、柏の変化を想定して準備していた。4大会を戦う柏が、“個”を生かすローテーションを実現するために必要なものとは何なのだろうか。(取材・文:高橋大地)[1/2ページ]
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【2026/27明治安田J1リーグ第6節】
2026年9月6日 柏レイソル 0-2 横浜F・マリノス
(三協フロンテア柏スタジアム)
弓場堅真がもたらした「違い」

柏レイソル 弓場堅真【写真:Getty Images】
先発6人変更――。
柏は前節とは打って変わって大きく顔ぶれを変え、横浜F・マリノス戦に臨んだ。
その一人、右ウイングバックに入った弓場堅真は、前半から積極的に前へ出た。
4バックの最終ラインを高く保つマリノスに対し、柏は対角への長いボールや背後へのパスも使いながら、両ウイングバックを前進させた。
「相手が4枚なので、左右に揺さぶるプレーはスライドしにくいと思いましたし、両ウイングバックがキーになると言われていました。クロスなりシュートなりで終わることを意識してプレーしました」
早いタイミングでクロスを入れる。それは弓場がこれまで磨いてきた武器でもある。
「僕自身はクロッサーでやってきたので、上げたいタイプではあります。ただ、チームや監督が求めていることをどう表現できるかで評価も変わるので、自分の得意なプレーだけをやればいいわけではないです」
選手が替われば、チームに新しい特徴も加わる。
弓場のダイレクトな攻撃は、この日の柏に(とりわけ前半は)普段とは少し違う選択肢をもたらしていた。前半6分に弓場のクロスから遠藤渓太が頭であわせたシーンはそれを象徴している。
一方、普段とは異なるメンバーで戦った前半について聞くと、弓場は自戒の念をにじませるようにこう口にした。
「ターンオーバーしている分、いつものメンバーと比べて質が落ちる部分もあると思います。だからこそ、僕の走力だったり、シンプルに裏へ出してもらうことだったり、質だけに頼らず走るところで補おうと、みんなで話して入っていました」
今回のメンバー変更によってチャンスを得た本人の言葉である。誰かを批判したというより、自分自身を含めたチームへ向けた言葉のように聞こえた。
リカルド・ロドリゲス監督も、6人を替えたこと自体を問題にはしていない。
「私は全選手を信頼しています。今日ピッチに送り込んだ11人についても、落ち着いて冷静に判断をして送り出しました。もちろん、一人ひとりが毎試合最高のパフォーマンスを出せるわけではありません。それがサッカーだと思います」
では、選手を替えたことそのものが敗因ではないのだとすれば、この日の柏には何が足りなかったのか。
「ノブ(中川)に対応させて続けるのは得策ではなかった」

柏レイソル 中川敦瑛【写真:Getty Images】
リカルド監督は「試合の入りは決して悪くなかったと思います。チャンスも作れていました」と振り返っている。
実際、柏はボールを前進させる場面を作れていた。ただ、マリノスのビルドアップに対する守備では、配置に少しずつズレが生じていた。
マリノスは4-2-3-1を基本としながら、後方から組み立てる際にはトップ下の二田理央が前線へ上がり、谷村海那と2トップ気味の位置を取った。その二田を中川敦瑛がマンツーマン気味に捕まえる。中川が後方へ引っ張られるぶん、その代わりに小西雄大が一列前へ出ていた。
古賀太陽が気にしていたのは、一人ひとりが誰を見るかだけではない。
古賀は二田への対応について、「ノブに対応させ続けるのは得策ではなかった、と思う」と振り返っている。
「自分たち(3バック)の距離を近くして、落とすならウイングバックを落とす。ダブルボランチはしっかりと自分たちの前で考えてもらう。前半は特にポジションバランスをもっと保つ必要があったと思う」
二田を誰が捕まえるのか。一つの判断によって動くのは中川だけではない。小西、3バック、ウイングバックまで、それぞれの立ち位置が連鎖的に変わる。
問題は個別のマークだけではなく、その周囲まで含めてどの距離感を保つのかにあった。
相手の動きに対応するだけではなく、その中でも自分たちが保つべきポジションバランスを崩さないこと。前半の柏には、その整理が必要だった。
古賀は「相手のやりたいようにやらせてしまった」とも振り返っている。
前半18分に許した先制点にも、連動の問題が表れている。
「最初の失点も、ファーストディフェンダーが誰が行くのか定まらずに、相手(宮市亮)をフリーで前向きにさせてしまった。そこで一枚アタックに出せたのかは映像を見直したいです」
目の前でゴールを決められてしまった弓場は、そう振り返った。
一人ひとりに与えられた役割だけでなく、一人が動いたときに周囲がどう連動するのか。そこに、この日の柏が抱えた問題の一つがあった。
後半頭の3枚替えでもエンジンはかからなかった

柏レイソル リカルド・ロドリゲス監督【写真:編集部】
1点を追うリカルド監督は、後半開始から瀬川祐輔、久保藤次郎、熊坂光希の3人を一気に投入した。
ここで重要なのは、単純に「より攻撃的な選手を入れた」ということではない。とりわけ、小西雄大に代えて熊坂を入れたことには、中盤の機能を変える意味があった。
リカルド監督は「熊坂の投入に関しては、守備のところを期待しての投入となりました」と試合後の会見で端的に語っているが、熊坂が入ることで、守備の部分だけでなく、中川敦瑛との役割分担も変わる。
熊坂は以前、中川と組む際に意識していることについて、「敦瑛が前に行きやすくなるように、自分がしっかり後ろで支えられるように」と話していた。
中川が一列前へ出て、その背後を熊坂が支える。熊坂自身にも球際の強さがあり、ボールを持てば前進する力もある。古賀太陽もこの日の熊坂について、フィジカルの強さで奪い切る場面や、「個の質」で一つタイミングを越えるプレーがあったと評価している。
つまり、後半の3枚替えは、ただ攻撃の人数を増やすためだけのものではなかった。ピッチに立つ“個”の組み合わせを変え、それぞれの特徴が生きる関係を作り直そうとするものでもあった。
それでも、人を替えれば自動的にチームのエンジンがかかるわけではない。
「前半の疲れが見える選手もいましたし、連係のところでも期待通りの高いパフォーマンスを出せていたかというと、必ずしもそうではありませんでした」
リカルド監督が口にした「連係」は、この試合を考えるうえで重要な言葉だろう。
しかも、3枚替えの効果が表れる前に柏は2点目を失った。
後半立ち上がり、中央でフリーでボールを受けた中川がボールを奪われ、その流れから最後は二田がゴールへ押し込んだ。
中川にとっては珍しいミスだった。
熊坂は以前、中川について「ボールを取られないし、自陣深くから相手陣まで一人で運べる」ことを長所に挙げていた。
それが中川の大きな武器であり、柏の強みにもなっていた。その中川のロストが、後半のエンジンをかけようとした直後の失点につながった。
だからこそ、「ターンオーバーしたから質が落ちた」とだけ結論づけることはできない。
古賀も「今日の天候に関係なく、失うべきではないタイミングでのロストもありました」としたうえで、「単純な質の部分でのロストは減らしていかないといけない」と語っている。
この日の「質」の問題は、新たに先発へ入った選手だけに表れたものではなかった。
メンバーを変更した前半に課題があり、熊坂ら3人を投入して関係性を変えようとした後半にも「連係」の問題は残った。
エンジンがかからなかった理由は、ピッチに立っていた選手の名前だけでは説明できない。