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J1 6時間前

「うれしいに決まってるでしょ」と田口泰士は語る。ジェフ千葉、17年ぶりのJ1勝利。それでも指揮官の表情が曇った理由「一概にこの勝利で…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典 フリーライター photo by Getty Images

ジェフユナイテッド千葉
ジェフユナイテッド千葉【写真:Getty Images】



 開幕5連敗。前節はホームでブーイングを浴びた。それでもジェフユナイテッド千葉は、ガンバ大阪を2-0で破り、百年構想リーグを除けば17年ぶりとなるJ1での勝利をつかんだ。選手たちが歓喜する一方、小林慶行監督の表情は晴れなかった。「うれしいのが半分、あとは『どうするんだろう』」。結果を求めて戦い方を変えるのか、それとも3年間磨いてきた“ジェフらしさ”を貫くのか。待望の1勝が、かえって指揮官に突きつけた問いとは。(取材・文:菊地正典)[2/2ページ]

小林慶行監督の表情は冴えなかった

ジェフユナイテッド千葉の小林慶行監督
記者会見場に現れた小林慶行監督の表情は冴えなかった。その理由は…【写真:Getty Images】



「『今日は前で押し込みたい。強気に行け』。そう口酸っぱく言われました」

 その言葉を受け、ピッチに立った全員が自身の力を出し切った。今季はどうにも乏しかった攻守の連係もしっかり取れ、その集合体が相手を圧倒する力になった。

 だが、小林監督の表情は冴えなかった。

 勝利がグッと近づく2点目が決まった際には渾身のガッツポーズを何度も繰り返していたにもかかわらず、記者会見場に困ったような表情で入ってきたのだ。

 試合の総評では選手たちのハードワークを称え、「自分たちのスタイルをしっかり出せて勝てた」ことを喜んでいるはずなのに、やはり笑顔がない。口調にも言葉ほどの力がない。

 そんな指揮官に、あえてストレートに聞いた。勝利した瞬間の気持ちはどうだったのか、と。

「うれしいのが半分、あとは『どうするんだろう』というところですかね。もちろん、これをやりたいです。当然。毎回」

 さらに「一歩進めた感覚はあるか?」と問われると、「すごく難しい」と言いながら、指揮官はこう語った。

「一概にこの勝利で…」

ジェフユナイテッド千葉のサポーター
攻守にアグレッシブなサッカーは確かにジェフユナイテッド千葉のサポーターを魅了した【写真:Getty Images】



「一概にこの勝利で踏み立せたとは本当に思えなくて、自分たちの目指すところがどこで、その最適解がどこにあるのか、自分自身もなかなか見極められないでいるというのが正直なところなのです。これをベースにして戦ってはいきたいと今日のピッチ上での選手の躍動を見ると思います。でも、今の段階ではそれくらいしか言えません」

 悩むはずだ。J1百年構想リーグでは、2023年に就任してから3年間で磨き続けてきた4-4-2あるいは4-2-3-1での前線からの守備や、縦に速くサイドで突破するアグレッシブなスタイルで正面からぶつかったが、結局は個の力に屈する試合がほとんどだった。

 だからクラブは川崎フロンターレで実績のあるエリソンを破格と言える金額で獲得し、小林監督もこれまでのスタイルから変化させてでもエリソンの良さを最大限に生かそうとしている。

 それがJ1百年構想リーグの反省を生かした、J1で結果を残す方法だと考えるのも理解できる。

 最も重要なのは結果だ。

 17年ぶりに戻ってきたJ1から1年で去るわけにはいかない。それでも、G大阪戦の戦いを見れば、「これぞジェフ」と言いたくなるのだ。

 小林監督が就任した2023年以降、ジェフのホームゲーム年間平均観客動員数は8,523人、10,431人と増え、2025年は国立でのホームゲーム開催やJ1昇格プレーオフがあったものの、それらを除いたフクダ電子アリーナでの年間平均観客動員数も13,636人に伸びた。

 勝利数が増えた、J1昇格が近づいたという単純な結果も大きく影響しているに違いないが、それだけでもない。攻守にアグレッシブな戦いが見る者を魅了し、その結果、観客動員数が増えたというのは、小林監督も選手たちも自負していたはずだ。

ジェフ千葉はまだまだ闘える

2025年のジェフユナイテッド千葉対サガン鳥栖
2025年に行われたサガン鳥栖戦。ジェフユナイテッド千葉は敗れたものの、この試合で自分たちの姿を取り戻した【写真:Getty Images】



 形も関係ない。2025年7月5日。当時6試合で3分3敗と勝利がなかった中、小林監督は、3-4-2-1のサガン鳥栖に対して、守備時に4バックが左にスライドし、サイドハーフの田中が下がって5バックを形成する形を採った。

 それは勝っていない状況での消極的な采配ではなく、相手に形を合わせてギャップをなくし、マンツーマンで前線からハメていくという積極的な采配だった。

 前半でキーマンだった田中が開始8分で負傷し、それ以降の前半はポジションや役割を何度も変えながらバタバタした戦いになったが、開始8分までと後半に見せた果敢な戦いによって結果0-2で敗れながらも自分たちを取り戻し、続くモンテディオ山形戦の勝利、さらにはJ1昇格へとつながっていった。それがジェフの戦いではないか。

 小林監督もそういった過去を思い出したのだろう。

「そんなときにどうやってそれを乗り越えてきたかというところでは、結局同じ」

 G大阪戦から一夜明け、7日に行われたオンライン取材でそう話していたのが印象的だった。

「J1での一つの指針となる」

 それは津久井が自身のJ1初ゴールについて発した言葉だが、チームも同じだろう。選手たちはG大阪戦後、「前から行く姿勢」の重要性を口々に話した。

 小林監督もそれは分かっている。エリソンも守備や周りに合わせることができない選手ではない。エリソンに合わせるのではなく、エリソンを本来のチームスタイルに組み込むこともできるはずだ。

 開幕5連敗という結果は変えられない。

 だが、ジェフはまだまだ闘える。もっと勝てる。もっともっと、見る者を魅了できる。

(取材・文:菊地正典)

【著者プロフィール:菊地正典】
福島県出身。埼玉大学卒業後、当時、日本最大級だったサッカーモバイルサイトの編集・ライターを経て、フリーランスに。主にサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の記者として活動し、横浜FC、浦和レッズ、ジェフユナイテッド市原・千葉、横浜F・マリノス、川崎フロンターレの担当記者を歴任。著書に『浦和レッズ変革の四年 〜サッカー新聞エルゴラッソ浦和番記者が見たミシャレッズの1442日〜』(スクワッド)、『トリコロール新時代』(スクワッド、三栄書房)がある。Xのユーザー名は@masanorikikuchi

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【了】

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