
Jリーグ 審判【写真:Getty Images】
JFAによると、2026/27シーズンのJ1では、第4節終了時点のアクチュアルプレーイングタイム(APT)が1試合平均55分00秒となり、J1百年構想リーグの52分22秒から2分38秒増えた。時間の損失を減らす新たな競技規則が導入されるなか、試合の進め方は確かに変わりつつある。一方で、ルールが明確になっても、その「入口」にはレフェリーの判断が残る。ファン・サポーターが求める“基準”とは何なのか。9日に行われたJFAのレフェリーブリーフィングから考える。(取材・文:高橋大地)[2/2ページ]
「ミスジャッジをするな」ではない

レフェリーに抗議するジュビロ磐田の乾貴士【写真:Getty Images】
VARについても、同じように「判断の幅」と「見逃してはいけないミス」を分けて考える必要がある。
佐藤氏は「基本的には主審の判断に委ねながらも」と、まずピッチ上の判断を尊重する考え方を示していた。VARはすべての判定を一からやり直すためのものではない。
ただ、それと見逃すべきではないミスまで許容することは別の話だ。
第2節のアビスパ福岡対セレッソ大阪では、ペナルティーエリア内で守備側の選手の腕にボールが当たった場面でハンドは取られず、VARも介入しなかった。この事象について佐藤氏は「ハンドにすべきだった」とし、「改善の余地がある」と認めている。
一方、第3節のサンフレッチェ広島対川崎フロンターレでは、塩谷司のプレーがDOGSOによるレッドカードなのか、SPAによるイエローカードなのかが議論になった。佐藤氏によれば、Jリーグ担当レフェリーの間でも「意見は分かれる」事象だった。それでも審判委員会は最終的なイエローカードの判断を支持している。
この二つは、同じ「議論になった判定」でも性質が違う。
レフェリーによって判断が分かれることを許容すべき領域がある。一方で、「改善の余地がある」と認めるべきミスもある。さらにVARについては、ピッチ上の判定に判断の余地があることと、その判定にVARが介入すべきかどうかも分けて考えなければならない。
そして、こうした判定のミスをメディア向けのブリーフィングで取り上げる意味は、単に「ミスがありました」と認めることではないと思う。
むしろ重要なのは、その事象を材料に「次に似たような場面が起きたときには、こう判断する」という考え方を示すことではないだろうか。
第2節のハンドについて「ハンドにすべきだった」「改善の余地がある」と明言することは、過去の判定について謝るためだけのものではない。その説明を聞いたファン・サポーターにとっては、「では次に同じような事象が起きたとき、どうジャッジされるのか」を知る手掛かりになる。
つまり、ブリーフィングは過去の判定の答え合わせをするためだけの場ではなく、今季のレフェリングにおける「次の基準」を共有する場でもある。その積み重ねがあって初めて、ファン・サポーターはシーズンを通した判定の一貫性を確かめることができる。
裁量を尊重することと、すべての判定を許容することは同じではない。人がジャッジする以上、ミスを完全になくすことは難しい。
すべて同じ結論である必要はない。しかし、何を見て、どこまでを許容し、どこからをミスとするのかという考え方は共有されていなければならない。
佐藤氏は、レフェリーへのフィードバックについて「我々は、同じページを持とうっていうことを目標にやっている」と話した。
その「同じページ」を、一つの節だけではなく、シーズンを通して持ち続けられるか。
大きな競技規則の変更があれば、運用が定着するまでに揺れが生じる。それ自体は珍しいことではない。スローインで笛を吹いてから5秒を数えるように、共通化できる手順はそろえていく。一方、負傷者への対応やVARのように、レフェリーの裁量をなくすことのできない領域も残る。
APTが2分38秒増えた。その数字は、競技規則の変更と、それを受け入れるプレーヤーやレフェリーによってJ1のゲームが変化していることを示している。
しかし、その先で問われるものの方が重要だと思う。
ファン・サポーターが求めているのは「ミスをするな」ということ以上に、「なぜその判定になるのか」を試合が変わっても理解できるレフェリングなのではないだろうか。
(取材・文:高橋大地)
【著者プロフィール:高橋大地】
1988年7月生まれ、東京都出身。株式会社カンゼンWEB局編集局長。WEBサイトおよび書籍の編集者として活動し、『ジュニアサッカーを応援しよう!WEB』編集長、『競馬チャンネル』初代編集長、『ベースボールチャンネル』編集長などを歴任。サッカーをはじめとするスポーツ分野を中心に、編集・取材・執筆を行う。週末は少年サッカーの現場でボランティアコーチとして活動。育成年代のスポーツ環境づくりや地域スポーツの普及・発信にも取り組んでいる。
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