
フロジノーネ・カルチョを率いるマッシミリアーノ・アルヴィーニ【写真:Getty Images】
26年かけて、ようやくたどり着いた。フロジノーネ・カルチョを率いるマッシミリアーノ・アルヴィーニ監督が、セリエA20試合目にして初勝利を挙げた。その舞台は、幼い頃から通ったフィオレンティーナの本拠地。下部リーグから這い上がり、セリエA初挑戦では未勝利のまま解任も経験した56歳の苦労人は、いかにして“降格候補”と見られた昇格組をここまで戦えるチームへと変えたのか。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
ようやく届いたセリエA。しかし…

クレモネーゼを率いた2022/23シーズンのセリエAでは、1勝も挙げられなかったマッシミリアーノ・アルヴィーニ【写真:Getty Images】
そして、2022/23シーズンのクレモネーゼ。ファビオ・ペッキアがセリエAに導いたチームの後任を任されたのが、アルヴィーニだった。自ら勝ち取った昇格ではなかったが、初めてセリエAのクラブを指揮する機会に恵まれることとなった。
アルヴィーニはクレモネーゼ指揮官就任の公式会見の場でこのように語っていた。
「ここにいられること、そしてセリエAの監督として話をすることができるのは、本当に大きな喜びであり、満足感がある。私はとても幸せだ。何年もの歳月を経て、ようやくこの目標にたどり着いた。ただ、私にとってこれはゴールではなく、出発点だ」
さらにアルヴィーニは続ける。
「私はこれを非常に大きな出発点だと考えている。この長い道のりを歩んできたなかで、私がずっと思い描いてきたのは、ダイナミックで、アグレッシブなサッカーをすること、ボールを持っているときも、持っていないときも試合を支配することだ。常に試合の主導権を握ることを目指したい」
フィオレンティーナ戦後と同じようなコメントをしていたことからも、彼の考え方を見て取ることができる。どんな相手にも主導権を握ってサッカーをする。それが彼の哲学であることが分かるだろう。
しかし、クレモネーゼでの初挑戦は、散々な結果に終わった。18試合で7分け11敗。セリエAでは、ピッチの上で歓喜の輪が広がることは一度もなく、第18節のACモンツァ戦に2-3で敗れ、解任を命じられた。
その後、アルヴィーニはセリエBのスペーツィア・カルチョ、コゼンツァ・カルチョを率いるが、いずれもシーズン途中で解任された。コゼンツァ・カルチョでは、シーズン途中に再び呼び戻されたものの、最終的に20位でシーズンを終えた。
“パッシオーネ(情熱)”で掴み取った昇格

チームに檄を飛ばすマッシミリアーノ・アルヴィーニ【写真:Getty Images】
そして、2025/26シーズン、セリエBのフロジノーネ・カルチョから監督就任のオファーを受け取った。近年、急速に力をつけてきたプロヴィンチャのクラブだが、その前のシーズンは16位に終わり、辛うじて残留を勝ち取っていた。
雲行きの怪しいスタートだったが、第15節には1位に浮上した。第26節には3位に順位を落としたものの、第24節以降は無敗街道を歩み、第37節で直接昇格となる2位に浮上。5月8日のマントヴァ1911戦では5-0と大勝し、最終節でセリエA昇格を掴み取った。
フロジノーネの町の名士であり、クラブの会長を務めるマウリツィオ・スティルペは、アルヴィーニをこう評す。
「彼について私が強く感じたのは、謙虚さと情熱だ。シーズンチケットの販売キャンペーンの場では、謙虚さ、勇気、愛、情熱、アイデンティティーについて話した。本人は気づいていないかもしれないが、私はアルヴィーニの中に、まさにそれを見たのだ」
アルヴィーニを語るとき、“パッシオーネ(情熱)”という言葉なしで評することはできない。彼が26年もの歳月をかけて、掴み取ったセリエAでの初勝利はパッシオーネがなければ成し遂げられなかったものだ。
第3節では、昨季のセリエB王者、ヴェネツィアFCとの昇格組同士の一戦にも3-2で競り勝ち、セリエAで2度目の勝利を手にした。2-0とリードしながら一度は追いつかれたものの、終盤に勝ち越してみせた。
リードを奪っても変わらない攻撃的なスタイル。最後まで決して諦めない戦いぶり。まだ3試合を消化したばかりだが、彼らの気概あふれる戦いは、称賛に値するものだ。
イタリア・メディア『Sky Sport』の人気番組『Sky Calcio Club』で司会を務めるファビオ・カレッサは、8月30日の番組で、フロジノーネ・カルチョが降格候補だと明言した。解説者たちも、その見解に異論を唱えることはなかった。
だが、ここまでの戦いぶりを見る限り、フロジノーネ・カルチョが簡単に敗北を喫するチームではないことは分かるはずだ。フロジノーネ・カルチョが降格候補であるという考えを改めた方がいいだろう。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
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