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横浜F・マリノスの山根陸、開幕からの日々を越えて今季初ゴール「もっと自分の実力を明確に上げていきたい」【コラム】

シリーズ:コラム text by 竹中愛美 photo by Getty Images,Editor

今季初ゴールを決めた横浜F・マリノスの山根陸

横浜F・マリノスの山根陸【写真:Getty Images】



 ゴールが決まった瞬間、横浜F・マリノスの山根陸は迷わずゴール裏へ走った。胸のエンブレムを叩き、チームメイトと喜びを分かち合う。開幕から出場機会が限られる時間を経て、再び先発の座をつかんだ23歳は、水戸戦で今季初ゴールとなる追加点を挙げた。弾けるような笑顔の裏には、プロ5年目のシーズンを積み重ねる中で変わらなかった思いがあった。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ] 

【2026/27明治安田J1リーグ第8節】
2026年9月19日 横浜F・マリノス 2-0 水戸ホーリーホック
(日産スタジアム)

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プロ5年目、開幕から苦しんだ時間。「メンタル的に整理できた」

横浜F・マリノス 始動 山根陸

百年構想リーグでは全試合に先発し、存在感を高めていた山根陸だが、今季は開幕からベンチを温める日々が続いた【写真:編集部】


 山根陸がプロ5年目を迎えた2026年1月。宮崎キャンプで、本人は周囲から寄せられる期待に対して、こう語っていた。

「期待していただいてるならば嬉しいことですし、そういったものをしっかり結果というか、自分の成長とピッチでのパフォーマンスで表していきたいですし、そういうものにかかわらず、しっかり1日1日自分は積み上げていくだけだと思う。

 もう5年目なんで、思った成長、なんて言うんだろうな。スピードとは違うものがあった時期もありますけど、ブレずにやっていきたいなと思います」

 さらに、こうも話していた。

「もちろん、年数を重ねるごとにというのはありますけど。そういうものに捉われずもっと活躍したいし、もっと自分の何だろうな。実力っていうものを明確に上げていきたいのはいつも思っているので、そこは変わらないですね」

 横浜F・マリノスの育成組織で小学生の頃から過ごし、2022年にトップチームへ昇格。1年目からリーグ戦11試合に出場し、チームの優勝に貢献した。その後も2023年は21試合、2024年は28試合、2025年は29試合と出場数を伸ばし、プレータイムも着実に増やしてきた。

 その流れは、百年構想リーグでも変わらなかった。全試合に先発し、積極的な攻撃参加から2ゴールを記録。チームの中で存在感を高めていた。

 しかし、スティーブ・コリカ監督の新体制で迎えた26/27シーズンは、開幕から思うように出場機会を得られなかった。最初の5試合でピッチに立ったのは終盤の途中出場2試合のみ。第6節の柏レイソル戦でようやく今季初先発を飾った。

 その間に、山根自身が「メンタル的にしっかり整理できた部分」があった。

「本当に自分を信じて、自分のプレーをしっかり出す。ピッチで出すところ、そこに集中して、まだまだやれることはいっぱいある。コンディションも含めてしっかりまた鍛えていきたいというところで、ピッチでより多く、自分の良さを出していきたいところもあったので、そこは徐々に良くなってきてるかなと思います」

 何があったのかを本人が詳しく語ることはなかった。ただ、出番が限られた時間を経ても、自分の成長を止めることはなかった。

中盤の底から前へ。山根陸が示した「自分の価値」

26年9月19日 横浜F・マリノス対水戸ホーリーホック マリノスイレブンショット

山根陸は水戸ホーリーホック戦で3試合連続スタメンとなった(写真下段左から2番目)【写真:Getty Images】


 柏戦をきっかけに先発の機会を増やし、水戸戦では3試合連続スタメン。ピッチに戻ってきた山根は、ボランチとして攻守に存在感を示した。

 これまで中盤の底でバランスを取る役割を担うことが多かったが、最近は少しずつ前への意識も強くなっているように映る。

 相手のプレスを受けた際に巧みにターンして対峙する選手を剥がしたり、半身でボールを受けて前方へ持ち運んだり、左右への展開だけでなく、自ら前へ進むことで攻撃に厚みを加えている。

 水戸戦でも12分には自陣から右の対角へ正確なフィードを近藤友喜へ送った。

 水戸はマリノスが先制した後、特に知念慶と山根の周辺へ積極的にプレスをかけてきた。深い位置からのビルドアップを強いられる中でも、山根が意識していたのはボールを持つことだった。

「前節、先制して苦しい時間帯が続いて、結局追いつかれてというゲームをしてしまったので、そこの改善点としてしっかりボールを持ちたいところがあった。そこは自分の価値が問われるなと思ってて、しっかりそこは出したかった」

 実際に、山根はボールを受けては周囲を見渡し、相手の出方に応じてプレーを選択した。

 トップ下の松村晃助が自由に動く中で、その後ろでは山根がバランスを取りながら攻守を支えた。守備では知念と声を掛け合い、試合終盤には喜田拓也が一列下がったことで、相手の中盤に対応しやすくなったという。

「とにかくボールを保持する時間を増やすところは、チームとして1つあった。相手は中盤に枚数多いですし、前に5枚張るような形だったので、途中から5-4-1になった。そこに合わせて5枚、自分たちもマンツーじゃないですけど、人に当てるようなイメージで割と守りやすくなったというか、ボランチの負担は減ったかなとは思います」

 相手に応じて自分たちの形を変えられることにも手応えを感じていた。

「このチームは自分たちのスタイルもありますけど、相手のやりようによっては自分たちもしっかり対応できるので、そこは良さかなとは思います」

「自分の価値が問われる」と語った水戸戦。山根はその言葉を、プレーで示していた。

 83分、山根に待望の瞬間が訪れた。

「数字は出したかった」。苦しい時間帯に生まれた今季初ゴール

26年9月19日水戸ホーリーホック戦で3戦連続スタメン出場となった横浜F・マリノスの山根陸

中盤の底で攻守のバランスをとった横浜F・マリノスの山根陸【写真:Getty Images】


 自陣からのロングボールをジョルディ・クルークスが胸で落とし、関富貫太へ。関富が前線のスペースへボールを入れると、谷村海那がキープして、もう一度関富へパス。リターンを受けた関富のクロスは相手DFにクリアされたが、山根がこぼれ球に反応した。

 利き足とは逆の左足を振り抜く。力の抜けたダイレクトシュートはゴール左隅へ吸い込まれた。

「数字は出したかったので良かったです。(関富)貫太がクロスを上げるタイミングでもう走り出してたので、報われたかなと思います」

 クロスを入れる瞬間には、すでに動き出していた。そして、ボールを捉える瞬間に力を抜いた。

「力を抜いて、とりあえず当てるだけかなと。うまく当たって良かったです」

 今季初ゴール。それでも山根が一番に語ったのは、自分の喜びだけではなかった。

「ちょっと苦しい時間帯だったので、追加点を自分が取れたところでは、嬉しかったです」

 前節は先制しながら苦しい時間帯に追いつかれた。だからこそ、水戸戦ではリードを奪った後もボールを保持し、自分たちから試合を苦しくしないことを意識していた。

「点を取るまでもしっかりボールを保持できたと思うし、点を取って、残り前半10分、15分は自分たちから苦しくさせてしまったんですけど、ハーフタイムを挟んでしっかり、また修正して、良いゲームは後半はできたかなと思います」

 守備面でも、チームとして少しずつ変化を感じている。

「前から行きたいところで、ハードワークは欠かせないですし、全員が走って、行くとこは行くし、ちょっと止まるところは止まるしって、そのバラバラで行かないところがすごくできてるのが多いと思うので、まだまだ守備も改善はありますけど、少しずつ良くなってるのかなと思います」

 水戸戦で3試合連続先発。山根が先発したここ3試合は2勝1分けとなった。チームが上昇気流に乗る中で、山根自身もピッチで存在感を高めている。

 83分と試合終盤でのゴールだったにもかかわらず、山根はサポーターの待つゴール裏へ走っていた。終わってみれば、この試合で両チームトップの12.3㎞を走った背番号28が、ゴール後に見せたのはいつにも増して大きな笑顔だった。

「初めてゴール裏走ったんで、気持ちよかったっすね」

 開幕から積み重ねてきた時間が、ようやく一つの形になった。

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