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コラム 20時間前

ユーヴェからイタリア人が消えた… 129年の歴史で初、フィールドプレーヤーにイタリア人不在の先発メンバーから浮かび上がる疑問【カルチョを読む】

ユヴェントス
サッスオーロ戦でフィールドプレーヤーにイタリア人を1人も起用しなかったユヴェントス【写真:Getty Images】



 129年の歴史を誇るユヴェントスで、セリエA史上初の出来事が起きた。サッスオーロ戦の先発フィールドプレーヤーにイタリア人はゼロ。歴史的な“異変”から見えてくるのは、今夏の補強政策とチーム作りへの疑問だ。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

積極性を欠いた補強政策

グリエルモ・ヴィカーリオ
トッテナムからレンタルで加入したグリエルモ・ヴィカーリオ【写真:Getty Images】



 今夏の補強政策にも、大きな疑問が残る。ユーヴェほどのクラブが、GKという極めて重要なポジションの補強に消極的だったからだ。今夏のメルカートでは、GKの獲得が至上命令だったにもかかわらず、どこか積極性を欠いていた。“獲得したい選手”ではなく、“獲得できる選手”に落ち着いたと言えるのではないか。

 当初のターゲットは、アルゼンチン代表GKエミリアーノ・マルティネスだった。しかし、当時33歳だった年齢に加え、800万ユーロ(約14億円)という移籍金を嫌い、次第にリストの上位から外れていった。ヴィカーリオは当初から候補の2番手。

 鈴木彩艶は噂が次第に具体化し、スパッレッティ自身が「好きなGK」と語ったことで、本命へと変わった。だが、ネックとなったのが高額な移籍金だった。鈴木はパリSGへの移籍が決定的となったが、最終的にはアストン・ヴィラを新天地とすることで決着した。移籍金は3300万ユーロ(約60億円)だった。

 もし鈴木のユーヴェ移籍が決まっていたら、ヴィカーリオの加入はなく、USサッスオーロ戦の先発メンバーはフィールドプレーヤーだけでなく、GKを含めて全員が外国人選手になっていた可能性が高い。

 24歳の鈴木は今や世界で10指に入るGKだが、ユーヴェのリーダーとなるには、年齢的な問題もさることながら、あまりにも酷だ。カピターノのロカテッリが負傷してしまった今、結果として、リーダーを必要とするユーヴェにとって、チームを牽引できるヴィカーリオの加入は良かったのではないだろうか。

消えつつある“ユーヴェらしさ”

ジョヴァンニ・カルネヴァーリ
今季からユヴェントスでCEOを務めるジョヴァンニ・カルネヴァーリ【写真:Getty Images】



 ヴィカーリオ以外のイタリア人選手の加入は、ジェノアから迎え入れた19歳FWジェフ・エカトールだけだ。昨季は30試合に出場して3ゴール。まだまだ発展途上のティーンエイジャーである。負傷が相次ぎ、今季はまだ出場がない。

 イタリアの盟主であり、これまでも多くの優れたイタリア人プレーヤーを抱えてきた“ヴェッキア・シニョーラ(老貴婦人)”であれば、もっと多くのイタリア人選手を獲得し、“ユーヴェらしい”チーム作りができたはずだ。

 カルネヴァーリが昨季まで幹部を務めたUSサッスオーロには、元クラブ会長で、イタリア産業総連盟の会長でもあったジョルジョ・スクインツィがいた。

 2019年10月2日に他界しているが、USサッスオーロの礎を築いた人物であり、イタリア人中心のチーム作りを進め、クラブをセリエC2からセリエAまで押し上げた。スクインツィ会長の右腕を務めてきたカルネヴァーリだが、そのような哲学は、彼からは垣間見えない。

 ユーヴェと同じように、イタリア人を中心として時代を築いたミランもまた、この数年は外国人選手を核としたチーム作りが進められている。しかし、両者には大きな違いがある。

 ミランがアメリカ系企業をオーナーとするのに対し、ユーヴェのオーナーは、フィアット創業家として知られるアニェッリ・ファミリーが支配する投資持ち株会社、エクソールである。そして、その代表者はアニェッリ家の血を引くイタリア人のジョン・エルカンである。

 さらに、ミランは現在、ポルトガル人のルベン・アモリムが指揮を執っているが、ユーヴェを率いるのは、昨季途中から監督を務めるスパッレッティだ。しかも、彼はかつてイタリア代表監督を務めた人物である。そう考えれば、イタリア人を中心とした補強もできたはずだ。

スパッレッティに向けられる厳しい視線

ルチャーノ・スパレッティ
解任を望む声が増えてきた、ユヴェントスの監督ルチャーノ・スパレッティ【写真:Getty Images】


 そのスパッレッティの手腕を批判する声も少なくない。『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』でユーヴェの番記者を務めるファビオ・ルッソ記者は、こう指摘する。

「スパッレッティは4-2-3-1というシステムと、相手陣内でボールを長く保持し、ゆっくりと攻めるという姿勢から再スタートした。しかし、それらは現在手元にいる選手たちの特徴を十分に引き出しているようには見えない」

「レッジョ・エミーリアでサッスオーロに敗れ、リーグ戦わずか4試合で危機に陥ったユーヴェは、予測しやすく、動きが遅く、ほぼ完全に個人のプレーに頼った攻撃を展開するチームに映った。そして何より、相手から一発を浴びてから初めて、攻撃に出ることを余儀なくされている。これは昨季終盤にも起こっていた状況に似ている」

 さらに、スパッレッティがメディアを通して、選手たちへの不満を口にしたり、名指しで非難したりすることがあるのも気がかりな点だ。本来であれば、ロッカールームの中で交わされるべき会話である。世間に向けて発せられた指揮官の苛立ちが、選手たちの自尊心を傷つけているのではないか。不満を口にしてばかりでは、求心力の低下につながりかねないだろう。

 USサッスオーロ戦の敗戦は、スイス代表に決勝トーナメント1回戦で力なく敗れ、ユーロ2024で敗退したイタリア代表の不甲斐ない姿と重なって映る。あのイタリア代表も、スパッレッティが指揮したチームだった。

 すでに、スパッレッティの解任を望む声も少なくない。サポーターが希求する人物は、そう、アントニオ・コンテだ。今後も調子が上向くことがなければ、“闘将”の復帰を待望する声は一層強くなるだろう。スパッレッティにチームを浮上させることはできるだろうか。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

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