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コラム 15時間前

「一緒にプレーがしたかった」。日本代表、松木玖生が明かした大先輩への思い。4年前に受け取った「待っているぞ」の言葉【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 フリーライター/ノンフィクションライター photo by Getty Images,Shinya Tanaka

日本代表の松木玖生
ウルグアイ戦で日本代表デビューを果たした松木玖生【写真:田中伸弥】



 待ち望んだ日本代表のピッチに、松木玖生は最高の形で第一歩を刻んだ。ウルグアイ代表戦で初招集、初先発を果たすと、11分には鮮烈な先制ゴール。欧州で積み重ねてきた成長を示した一方で、心残りもあった。「一緒にプレーがしたかった」。その相手は、FC東京時代から松木を高く評価し、4年前に「代表で待っているぞ」と声をかけた長友佑都だった。18歳だった松木は、その言葉を胸にどのような道を歩み、日の丸を背負う場所までたどり着いたのか。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]

「カットインしたときに以前まではパスで終わっていた」

サッカー日本代表 松木玖生
松木玖生は日本代表デビュー戦で素晴らしい先制ゴールを決めた【写真:田中伸弥】



 思考回路を常に冷静沈着に作動させながらも、ハートをギラギラと燃えたぎらせていた。

 南米の古豪ウルグアイ代表とキューアンドエースタジアムみやぎで対峙した24日の国際親善試合。第3次森保ジャパンの初陣で日本代表に初招集され、右ウイングバックとして先発を射止めた松木玖生のなかで相反するふたつの要素が完璧に融合。日本中のサッカーファンを驚かせたシーンが生まれた。

「前半が始まってから逆サイドにボールがあるときに自分のサイドがけっこうオープンで、マークする選手がいないのもあって、サイドチェンジを受けてからどこかで自分が仕掛けたいと思っていました」

 このように振り返った松木は開始まもない段階で、ボランチで代表初先発を果たしていた佐野航大からサイドチェンジのパスを2度受けた。迎えた11分。イメージを具現化させる状況が訪れた。

 左ウイングバックの中村敬斗がボールを少し内側に運んでから、右タッチライン際でフリーになっていて、なおかつ前方に広大なスペースを与えられていた松木に長いサイドチェンジのパスを通した。

「そこからカットインしていったときに、すでにシュートを打つイメージがありました。ちょっと覚えていないですけど、誰かがインナーラップしてくれたおかげで相手も少し対応に迷ったと思っています」

 松木の内側を縦へ走り、相手を引きつけたのはゲームキャプテンを任された右シャドーの堂安律。ロングパスを巧みに胸トラップした松木はイメージ通りにボールを左方向へ、迷いもなくドリブルで運んでいく。

 そしてペナルティーエリア付近で、相手ゴールからやや離れた直後に利き足の左足を一閃。強烈な一撃はウルグアイのキャプテン、ロドリゴ・ベンタンクールの股間を射抜いてゴール左隅へ突き刺さった。

「自分がカットインしたときに以前まではパスで終わっていたと思うんですけど、サウサンプトンで毎日のように練習してきたプレーが、試合のなかでゴールに結びついてよかった。ホッとしています」

 以前の自分とは違うと胸を張った松木は、FC東京や年代別の日本代表で務めたボランチやシャドーとはまったく異なる、ウイングバックというポジションにも次のように言及している。

上々のデビューも…大先輩と「一緒にプレーがしたかった」

FC東京の松木玖生と長友佑都
松木玖生はFC東京時代、長友佑都に「代表で待ってるぞ」という言葉をもらっていた【写真:Getty Images】



「サウサンプトンでの試合を見ていればわかると思うんですけど、いまの自分の主戦場がそこ(右ウイングバック)なので。そこでのプレーが一番慣れている、というのは森保(一)監督とも話しました。

 自分自身でもシャドーよりいい感じがつかめていたので、非常にいい形でプレーできました。左利きの選手なので縦には攻めあがって来ない、と相手選手に絶対に思わせない。そこを一番イメージしていました」

 伊東純也との交代でピッチを後にするまでの63分間を振り返った松木は、一方でこう語っている。

「一緒にプレーがしたかった、という思いはあります」

 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)でアジア勢初の5大会連続出場を果たした40歳の鉄人、長友佑都は第3次森保ジャパンの船出となる今回の国際Aマッチ4連戦に招集されていない。

 代表が発表される直前に右膝前十字靱帯断裂の大怪我を負った長友は、長期戦線離脱を余儀なくされた。W杯直後で世代交代も求められる状況で、万全な状態でも招集されなかったかもしれない。

 青森山田高校からFC東京に加入した2022シーズン。その長友から松木はこんな言葉をもらった。

「代表で待っているぞ」

 自身の心技体のすべてへ大きな期待をかけてくれた大先輩へ、松木も即答している。

「はい、すぐに行きます」

 高校時代から海外志向が強く、将来の目標を問われて「Jリーグ、あまり見ないんですよ」と正直に答えた松木がFC東京入りを決めた理由のひとつに、ヨーロッパで約11年間プレーした長友の存在があった。

「長友選手は海外向けのメンタリティーも含めて、ピッチの外でもすごく努力されている選手なので」

 大先輩へ憧憬の思いを抱く松木を、長友も「日本サッカー界の宝」と位置づけて目を細めてきた。

「無限じゃないですか。彼の可能性は。みなさんも同じ思いでしょう。彼のサッカー選手としての実力もそうだし、人としての強さやパーソナリティーという意味でもそうですし、非常に楽しみですよね」

 まだ21歳の若さで、森重真人、小泉慶とともに松木が共同キャプテンを務めた2024シーズン。長友は松木だけがもつ、異能と言っていいコミュニケーション能力を称賛しながらこう語っていた。

欧州で「全部を学んできた」

サウサンプトンMF松木玖生
「サウサンプトンで培ってきたものが少しずつ生きてる」【写真:Getty Images】



「彼には芯の通った強さと自分への厳しさや男気があり、さらにそのなかに優しさもあるんですよ」

 長友も一目を置いた同シーズン途中の7月に、松木はプレミアリーグのサウサンプトンへ完全移籍。A代表経験がなく、就労ビザを取得していない関係でトルコのギョズテペに期限付き移籍して武者修行を積んだ。

 その代償というべきか。長く主軸を務めてきたU-23日本代表が臨んだパリ五輪のメンバー18人に、松木は名を連ねなかった。それでもヨーロッパへ新天地を求めた理由を、当時の松木はこう語っていた。

「一番成長できると思いましたし、自分の夢に近づいていくために、そこが一番いいと判断しました」

 夢とは憧れの舞台として見つめてきたプレミアリーグでのプレー。ただ、ギョズテペでプレーした間にサウサンプトンは2部にあたるEFLチャンピオンシップへ降格し、松木が復帰した昨シーズンも昇格できなかった。

 今シーズンもチャンピオンシップでプレーする松木は、森保一監督から成長の跡を認められ、日本代表に初招集された4人のなかに名を連ね、ただ一人、ピッチに立ってゴールも決めた。

「サウサンプトンで培ってきたものが少しずつ生きて、それが結果にも結びついた。全部を学んできたし、これからも学んでいく最中ではありますけど、どのポジションでも自分の力を出せるようにしていきたい」

 長友とはすれ違いになったA代表のデビュー戦で、右サイドからカットインしてのシュート、デュエルにおけるボール奪取力、何よりも右サイドでのプレーと渡欧後の2年間で学んだすべてをアピールした。

 もちろん満足するはずがない。自身に代わった伊東との違いをあげながら松木はこう語っている。

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