日本代表は5日、キリンカップサッカー2026のニュージーランド代表戦に臨む。南米勢との3連戦では勝利を重ねた一方、いずれもシュート数は1桁。攻撃のさらなる活性化が求められる中、鍵を握る一人が鈴木唯人だ。ここまで代表9試合でノーゴール。それでも本人は結果だけを追い求めることに慎重な姿勢を示しつつ、「リンクマンをやりたいわけではない」と言い切った。鈴木が日本代表で本当に見せたいプレーとは何なのか。(取材・文:元川悦子)
森保一監督、名波浩コーチも気にする“シュート数”
9・10月シリーズではウルグアイ戦、ベネズエラ戦、エクアドル戦の南米3連戦でしぶとく勝ち続けてきた森保ジャパン。だが、5日の最終戦・ニュージーランド戦は全くタイプの異なる相手である。
「押し込んだ状況になれば、アジアカップに向けて非常にいいテストマッチになる」と新キャプテン・堂安律も重要な一戦であることを強調する。
「プレミアリーグの選手(クリス・ウッド=ノッティンガム・フォレスト)がいて、そこにシンプルにボールをつけて勢いに乗ってゴール前に入ってくる戦術を取ってくるので、どっちかと言えば、僕らにとって相性の悪い相手」とエースFW上田綺世も警戒心を募らせた。
日本としては、攻めあぐねて一発を食らって破られるような最悪のシナリオだけは絶対に回避しなければならない。
そこで1つポイントになるのが、シュート数自体を増やすこと。過去3戦を振り返ると、日本のシュート数は8本、9本、6本と2ケタに到達していない。
そのあたりを森保一監督、名波浩コーチらも問題視している。この最終戦に向けたミーティングの中で、名波コーチがFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)のトップ・オブ・トップの選手たちのゴール映像を見せ、意識づけも図ったという。
「もうちょいゴール前のシーンを増やしたいんで。前回(エクアドル戦)のスタートは僕が左シャドーでしたけど、もうちょい攻撃時の運動量を増やして全体に関わったり、スピード感を持って行けるところまで行くとか、そういうのは考えています」
こう話すのは、今回も同じ左シャドーで先発の可能性が高いと見られる鈴木唯人だ。
「そんなにすぐ適応して、結果を残せるような選手じゃない」
今シリーズの彼は初戦と3戦目に先発。前者は堂安とのシャドーコンビでスタートし、後半から久保建英と組んだ。
後者は久保とのコンビで67分までプレー。谷村海那の落としを受けて遠目から打った25分のシュート、堂安の左ポケットを取る動きから上田を経由して中央からトライした65分の得点機などを作ったが、ノーゴールのままベンチに下がっている。
2024年6月のミャンマー戦で初キャップを飾り、2026年W杯・チュニジア戦なども含めてここまで9試合(うち先発5試合)に出場。本人も「代表で回数を重ねられているんで、少なからずよくなってきている」とは感じているものの、いまだ得点には恵まれていない。
他の攻撃陣を見ても、2019年にデビューした久保が初得点を挙げるまで3年、上田も4年かかっていて、そう簡単に結果を残せるものではないのは確か。
けれども、中村敬斗のようにデビューした2023年だけで4発も叩き出し、強引に定着した選手もいる。その中村自身は「生き残るには目に見える結果」と強調しているが、鈴木唯人もいち早くそれを手にできれば理想的だ。
「僕自身は今まで、クラブチームでもそうですけど、そんなにすぐ適応して、結果を残せるような選手じゃない。別にそこに焦っている感じじゃない。結果だけに目が行ってしまうと、やるべきことを見失ったりする。『何が一番大事か』と長い目で見ると、それは間違いなくよくないなと思うんで。
もちろん結果がついてくれば、それに越したことはないですけど、やり続けていれば、必ずそういうタイミングは間違いなく来る。一番大事なことをしっかり考えながらやれればいいと思います」
本人は冷静に自身を客観視しつつ、少しでも得点に近づくプレーを増やそうとしている。
得点への大きな一歩となるのが、フライブルクで見せているような、強引にボールを持ち運んで決定機をお膳立てするようなプレーを出すことだろう。
「自分は正直、リンクマンをやりたいわけでは…」
エクアドル戦でも37分に久保から縦パスを受け、そのまま一気にドリブルで前線へ侵入しようとしたシーンがあったが、こういう前向きなアタックをフライブルクでは数多く披露している。
敵に脅威を与えつつ、ゴールという結果にもつなげているのだ。
日本代表では基本布陣も周囲のメンバーの特徴も違ってくるため、ドイツでやっていることをそのまま持ち込むのは難しいかもしれない。しかし、鋭くボールをゴール前まで持ち込めるのは、鈴木唯人の大きな強みだ。
まさに全盛期の中田英寿を彷彿させる力強さを持ち合わせているのだから、ニュージーランド戦ではもっと思い切って出せばいい。それが必ずゴールへの突破口になるはずだ。
「自分は正直、リンクマンをやりたいわけではない。そういうのは他の誰でもできるプレーではあるんで。それをしないと自分のリズムを得られないんで、ボールを関わろうと思っているんですけど、結局、僕のストロングは間を抜けてドリブルで仕掛けていくなり、他の選手とは違った強引さを見せること。もうちょい圧倒的なパフォーマンスが必要なのかなと思います」と彼は聖地・国立で代表主軸アタッカーとしての自分を確立していく構えだ。
このシリーズから鈴木唯人は8番を背負っているが、森保監督らコーチングスタッフの中では「南野拓実の後継者になってほしい」という願いも込められているのだろう。
実際、代表で8番をつけてきた面々を見ると、鈴木唯人とタイプ的に似ている中田を筆頭に、松井大輔、原口元気、堂安、南野と仕掛けやお膳立てもできて、フィニッシュにも関われる人材ばかりだった。
鈴木唯人はその系譜を引き継げるだけの能力がある選手。今季ブンデスリーガ1部で開幕4戦4発という実績を見れば、非凡なタレントであることは一目瞭然だ。
それはかつてドイツで活躍していた鎌田も認めているところ。
「代表での活躍は時間の問題じゃないですか」とエクアドル戦後に楽観的にコメントしていたが、先輩の言葉を現実にするのがこのニュージーランド戦なのだ。
「自分がいつしっくりくるかっていう話ですよ」と本人も話したが、4連戦のラストを「もうちょい」を抜け出す重要なターニングポイントにしなければならない。
代表10試合目となる今回の試合で、鈴木唯人はAFCアジアカップ2027(サウジアラビア)、2030年W杯への強固な基盤を作れるのか。
(取材・文:元川悦子)
▽語り手:元川悦子
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2026年北中米大会まで9回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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