サッカー日本代表 上田綺世【写真:Getty Images】
今回の代表活動で4戦4発と存在感を示した上田綺世。日本代表のエースとして結果を残す一方、今シリーズでは後輩FWたちに積極的にアドバイスを送った。2度のワールドカップ(W杯)を経験し、欧州5大リーグで戦う28歳のストライカーに、これまでとは異なるリーダーとしての顔が見え始めている。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
【キリンカップサッカー2026】
日本代表 2-1 ニュージーランド代表
国立競技場
巧みな動き出しから先制点を奪った上田

28分に先制点を決めた上田【写真:田中伸弥】
9・10月シリーズでウルグアイ、ベネズエラ、エクアドルの南米勢に勝利し、10月5日の最終戦・ニュージーランド戦を迎えた日本代表。この試合はキリンカップサッカー2026のファイナルであり、森保一監督体制の国内ラストマッチとなった。
6万1612人の大観衆が終結する中、彼らは4連勝を収め、アジアカップに向けて弾みをつける必要があった。
「今回の4試合目に関しては、活動期間の前にコーチとも打ち合わせをしていて、基本的には4試合目で必ずシステム上の選択肢を増やせるようチャレンジをすることは話していました」
指揮官がこう説明するように、この日の日本の基本布陣は2024年3月以来の4−2−3−1。上田綺世が最前線に陣取り、2列目は右から堂安律、久保建英、前田大然という並び。相手の5−4−1の強固なブロックを、いかにして彼らでこじ開けるかが1つの注目点だった。
開始早々に堂安がミドルシュートを放ち、直近3試合と比べてゴールへの積極性を見せた日本代表。遠目からのシュートは明らかに増えたが、上田には相手にスペースを封じられ、なかなかボールが入ってこなかった。
それでも20分あたりから背番号「18」が下がってボールを受け、起点を作るシーンが増え始めた。
そして迎えた28分、右サイドでボールを持った久保がペナルティエリア手前でドリブルを仕掛け、大外の中野就斗へパス。そこから中央へ質の高いクロスが入った。
上田は巧みな動き出しでDF陣の前に侵入すると、相手に当たってこぼれたボールにいち早く反応して左足を一閃。絶好調の点取り屋らしい軽やかな身のこなしで先制点をゲットした。
「噛み合っている」4戦4発の量産体制
今回の代表活動では4試合4ゴールと抜群の存在感を示した【写真:Getty Images】
「前半はクロスが少なめでしたし、もうちょっと上げてほしかったという部分はありますけど、いろいろな入り方を自分の中でトライした中で、こぼれから点を取れたので、それはよかったなと思います」と振り返った。
これで、今シリーズでは4戦4発。代表通算では22得点目と、上田は量産体制に入っている。
森保監督も「綺世ができることはこれまでのチームの積み上げの中でも計算できるところがあると思いますし、今、フランスに行って結果を出し、力を養ってくれている」と前日会見で絶大な信頼を寄せていた。
まさに本人が言うように「噛み合っている状態」なのだろう。
この3分後、カウンターから同点弾を奪われ、1−1で折り返した日本だが、後半に入るとさらに攻めのギアを上げていく。
上田自身も、48分に鈴木淳之介からのクロスに打点の高いヘディングシュートを放った。これは惜しくもクロスバーに阻まれたが、まだまだ得点を奪えそうな予感を色濃く漂わせた。
そして70分、中村敬斗の左サイドでの局面打開から堂安が約1年ぶりのゴールで勝負を決めたシーンでは、上田は前田とともに囮になってスペースを空ける黒子の役割を果たした。
さらにその4分後には、中村のラストパスを仕留めて3点目を挙げたかに思われたが、残念ながらVAR判定で取り消しに。
中村も「形としては狙い通りだった」と悔しさを滲ませたが、上田はこうしたチャンスを数多く作ることができれば、自然とゴールはついてくる。そんな余裕を感じさせる状態にあるのかもしれない。
「もっと効果的に…」
キリンカップサッカー2026でMVPを受賞し宮本恒靖会長と記念撮影【写真:Getty Images】
これで日本は2−1で勝利し、このシリーズでは4連勝を達成。キリンカップサッカー2026で優勝を手にし、上田は大会MVPに輝いた。
2019年のコパアメリカで初キャップを飾ってから4年間もゴールを奪えなかったことが信じられないくらいのハイペースで得点を重ねており、FWとして円熟味を増しているのは間違いない。
「(今シリーズも)結果だけ見ればよかったのかもしれないですけど、今日も後半、自分自身2〜3本のチャンスがあったし、エクアドル戦はシュートチャンスを作れなかった。チームに対してもっと効果的に動ける部分もあったし、課題はまだいろいろあると思っています」と背番号「18」は現状に満足することなく、さらなる高みを追い求めていく構えだ。
それと同時に、今シリーズの上田について特筆すべきなのが、他FW陣への献身的なサポートだ。
森保監督が初戦で前田大然、2戦目で後藤啓介、3戦目で谷村海那をスタメン起用。4戦目の終盤に塩貝健人をトップに据えたのを見ても分かる通り、今の日本代表は起点になれて得点も取れる最前線のプレーヤーを複数作ることにトライしている。
そうしなければ、アジアカップで上田がマークされた時に難しい状況に直面することが分かっているからだ。
強い絆で結ばれている指揮官の思いを汲み取った上田は、この2週間の活動期間中、後藤や谷村にさまざまなアドバイスを送り、彼らがプレーしやすい環境を作ろうと努めていたのである。