
サッカー日本代表の谷村海那【写真:田中伸弥】
9月28日のベネズエラ戦でA代表デビューを果たし、10月1日のエクアドル戦では先発出場。28歳で初めてつかんだ日本代表の舞台で、谷村海那がピッチに立った時間は、54分間と決して長くはない。それでも、世界トップレベルの選手たちと過ごした時間は、谷村自身の基準を変えるには十分だった。代表活動を終え、横浜F・マリノスへ戻った谷村は、「自分の基準も上がった」と2週間余りの特別な時間を振り返った。(取材・文:竹中愛美)[2/2ページ]
「綺世から結構、学ぶことが多い」代表で感じたFWとしての違い

トレーニングが終わったあと、クールダウンしながらチームメイトの練習を見つめる谷村海那【写真:編集部】
日本代表とマリノスでは、攻撃の形もボールが入る場所も違う。FWとして何をすべきか。その違いを、谷村は上田との会話から具体的に理解していった。
「マリノスと日本代表でやっているサッカーは違うので、難しいっすけど、日本代表だったら、こういうときはサイドに逃げた方がいいとか。こういうときはあんまり動かないで待ってた方がいいとかって話はしました」
ただ、谷村が感じたのは戦術的な違いだけではない。FWとして、状況に応じてプレーを選び、最後は結果につなげる上田の姿勢そのものだった。
「点を取ってるのは、ほぼ綺世なんで。綺世から結構、学ぶことが多いっていうか、起点になるところだったり、なれないときはゴール前で結果を残す感じなので、はっきりしてるんすけど。よく頭を使ってやってるなっていう感じがしました」
起点になるべきときには起点になり、そうなれないときにはゴール前で結果を残す。その判断を、谷村は「よく頭を使ってやってる」と感じた。
これまで谷村は、ゴールという目に見える結果を積み重ねることで、代表への道を切り開いてきた。だが、日本代表では、それだけではなく、周囲との関係性の中で自分の役割を判断しなければならない。
28歳で初めて立った代表の舞台で、谷村は世界トップレベルの選手たちの技術や強度だけでなく、FWとしての考え方にも触れた。
その経験を、次はマリノスで自分のプレーに変えていく。
「またチャンスは来る」森保監督から受け取った言葉

キリンカップサッカー決勝でニュージーランドを破り、優勝した森保ジャパン【写真:Getty Images】
代表という普段とは異なる環境を2週間余り経験したからか、慣れ親しんだクラブへ戻ってきた谷村の表情はどこか柔らかく見えた。
「気持ち的には楽ではあります」
日常に戻れば、そこには見慣れた仲間がいる。エクアドル戦が行われた日産スタジアムにも、井上太聖や近藤友喜ら、マリノスの仲間たちが足を運んでくれた。
初めて日本代表のユニフォームを着て、クラブの仲間が見守る前で初先発を果たした。ゴールという結果を届けることはできなかった。
「ダメだったっすけど、応援してもらっているので、もっと頑張んなきゃなと思います」
昨年7月、マリノスの一員として初めて日産スタジアムのピッチに立ったときには、「海那コール」が響いた。それから1年余り。今度は日本代表のユニフォームを着た谷村を、マリノスの仲間たちが見守っていた。
10月5日のニュージーランド戦はベンチ外。試合を外から見届けた谷村は、その翌日にマリノスへ戻ってきた。
ニュージーランド戦では、難しいゲームを勝ち切る日本代表の強さも感じた。
「本当にああいう難しい、(相手に)引かれて難しいゲームでも勝ち切るのが強いチームだと思う。あの中でもPKに持ち込まず、1点差で勝てるのは本当に強いので、ああいうのはチームとして強くなるために大事かなと思います」
試合前の練習では、ピッチの外からチームを見つめる時間もあった。その際には板倉滉とともに森保一監督と話をした。
深い話をしたわけではない。それでも、森保監督から受け取った言葉は、これからの谷村につながるものだった。
「きょうはメンバー外だったけど、こういう経験を活かして、チームで頑張ればまたチャンスは来ると思うからって話だけはしました」
9月24日のウルグアイ戦から始まった今回の活動で、谷村がピッチに立ったのは54分間。ベネズエラ戦でA代表デビューを果たし、エクアドル戦では先発出場した。
出場時間だけを見れば、決して長くはない。
与えられた54分間のなかで世界の基準を知り、出場できなかった時間には、代表の強さを外から見る経験もした。上田との会話を通じて、FWとして自分に必要なものも考えた。
だからこそ、次に必要なのはクラブで結果を残すことだ。
「結果でまた選ばれるようにやっていくしかないと思ってるので、もうとにかく結果にこだわって頑張りたいと思います」
次の代表活動は11月。シンガポール遠征で、ブラジルとパラグアイと対戦する。来年1月にはアジアカップも控えている。
「毎試合、点を取り続ければ、まだチャンスはあると思うので、そこを目指して頑張りたいと思います」
JFLから始まった道のりは、28歳で日本代表へとつながった。初めて見た世界は、自分が思っていた以上に高かった。またあの舞台に戻るために――。谷村海那は、再びマリノスでゴールを追いかける。
(取材・文:竹中愛美)
【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。
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【了】
