フットボールチャンネル

コラム 2026.10.8 11:30

「新しいイタリア」は始まったのか? 若手と多様なルーツの新世代。アッズーリ再生への序章【カルチョを読む】

イタリア代表
UEFAネーションズリーグ2026/27で2勝1分1敗、リーグA・グループ1の2位につけたイタリア代表【写真:Getty Images】



 ベルギー戦の完敗で幕を開けたマンチーニ新体制。それでもイタリア代表は、トルコ戦での快勝やフランス戦での粘り強い戦いを経て、短期間で立て直しを見せた。若手の台頭と多様なルーツを持つ選手たちの存在から、再出発したアッズーリの現在地と新たな姿を追う。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]

若手の再起とマンチーニが示した手腕

ピオ・エスポージト アレッサンドロ・ロマーノ
21歳のFWピオ・エスポージトと20歳のMFアレッサンドロ・ロマーノ【写真:Getty Images】



 そして第4節、5日のトルコとの再戦。マンチーニは、フランス戦からドンナルンマとバストーニ以外の9人を変更して臨んだ。

 ボローニャのレナート・ダッラーラで行われた一戦は、多くのメンバーを入れ替えたこともあり、不安定な立ち上がりとなったが、この試合もアウェイでの戦いと同じように、先制したのはイタリアだった。

 ジャンルーカ・スカマッカが競り合いから、こぼれ球を豪快にねじ込み、先行。スカマッカ自身にとっても、2023年10月17日のロンドンでのイングランド戦以来となる3年ぶりのゴールとなった。

 その後、同点弾を喫したが、途中出場のリッカルド・カラフィオーリがヘディングシュートを突き刺し、再びリードを奪う。最後は、第2戦に続いてピオ・エスポージトがゴールを決め、追加点を挙げた。

 ピオ・エスポージトは、これで代表戦13試合で7ゴール。21歳以下で代表通算7ゴールを記録したイタリア史上2人目の選手となった。これまで達成していたのはイタリア代表歴代2位の33得点をマークしたジュゼッペ・メアッツァだけで、1931年1月25日に20歳155日で記録していたものだ。

 21歳のピオ・エスポージトの活躍は、ストライカー不足に喘ぐイタリアにとって、大きな朗報。このままさらに成長していくことを願わずにはいられない。

 このピオ・エスポージトのゴールをアシストしたのが、第1戦で評価を大きく下げたロマーノだった。

「記事は何も読んでいない。少し耳に入ってきたことはあるけど、それもスポーツの一部だ。自分としては、トレーニングを続け、冷静さを失わず、うまく立て直せたと思っている。今日はアシストを決めることができて、とても嬉しい。監督やチームメイトが自分を擁護してくれたことで力をもらった。ピッチの内外を問わず、みんなが本当に助けてくれた」と語るロマーノからは、笑みがこぼれ、安堵の表情が浮かんでいた。この一戦もまた、バストーニほどの責め苦ではなかったにせよ、大きく苦しんだ末の捲土重来となった。

 トルコとの2戦に勝利し、これで対トルコ戦は15戦11勝4分けと無敗をキープ。2戦7発。アッズーリが本来の強さを見せつけた。

 そして何より、2勝1分け1敗の成績を収め、アッズーリを一度は“見捨て”、サウジアラビア代表監督に鞍替えしたことで風当たりが強かったマンチーニにとっても、肩の荷が多少は下りたことだろう。第1戦での躓きを短期間で修正した手腕は光る。彼に対する批判も、いったんは収まるはずだ。

 また、ロマーノを擁護し、見捨てることなくチャンスを与えたことも大きかった。一度失敗した選手を起用するということは、監督にとっても勇気が必要な決断だ。フランスのような格上の相手に対して、守勢に回りながらも守り一辺倒にならず、引き分けに持ち込めたのも、マンチーニの手腕だと言えるだろう。

 だが、本当の戦いはこれからだ。11月12日のジュゼッペ・メアッツァ・スタジアムでのフランス戦、そして15日のアウェイでのベルギー戦が控える。さらに、その先にある欧州選手権とワールドカップで出場権を獲得して初めて、重圧から解放されることになるのだ。

「新しいイタリア」を映す新世代の多様なルーツ

U21イタリア代表
今年3月にはU-21イタリア代表でプレーし、現在はそろってA代表に名を連ねるマイケル・カヨーデ(手前左)とオネスト・アハノール(奥左から2人目)【写真:Getty Images】



 この大会では、11日間で4試合を戦う過密日程のため、34人もの選手が招集された。その中でも目についたのが、アフリカ系選手の多さだ。

 モイーズ・キーン(コモ1907)を筆頭に、エディ・コウアディオ(ACモンツァ)、マイケル・カヨーデ(ブレントフォードFC)、オネスト・アハノール(クリスタル・パレス)、イッサ・ドゥンビア(スポルティングCP)、モハメド・アリ・ゾマ(1.FCニュルンベルク)ら、6人ものアフリカ系プレーヤーが顔をそろえ、フランスのように多民族化が顕著になっている。

 中でもカヨーデは、持ち前のロングスローを武器とし、トルコ戦では1ゴールを挙げ、さらにフラッテージの得点にも絡むなど、MOMに値する活躍を見せた。身体能力に優れる彼らの多くが、今後も招集される流れは変わらないだろう。

 また、シルヴィオ・バルディーニが率いるU-21イタリア代表でも、この傾向は強まっている。シェール・ンドゥール(フィオレンティーナ)、アルファジョ・シセ(ミラン)、セイドゥ・フィニ(フロジノーネ・カルチョ)、ルーカ・コレオショー(パリFC)らがアフリカにルーツを持つ選手たちで、2004年以降生まれの選手で構成されるチームの中心を担っている。

 そのU-21は、2027年欧州選手権への出場権を獲得。グループEの最終節、首位に立つポーランドに2点差以上で勝つことが条件とされていたが、難敵を相手に6-2のゴールラッシュで大勝し、1位通過を決めた。中でもンドゥールは、75メートルの超ロングシュートを突き刺すなど2得点の活躍。コレオショーも先制点を奪うなど躍動し、勝利に大きく貢献した。

 A代表がワールドカップ4大会ぶりの出場を目指すように、彼らの目標もまた険しいものだ。2027年欧州選手権は、2028年ロサンゼルス・オリンピック予選を兼ねており、2008年北京大会から遠ざかる、5大会ぶりの出場権獲得を目指す。男子サッカー競技の出場枠縮小により、欧州に割り当てられた枠は「3」。

 勝ち抜けを決めたスペイン、ポルトガル、フランスといった列強との対戦も予想され、極めて厳しい戦いが待ち受ける。しかし、スペインと並び最多優勝5回を誇るU-21世代の復権がなければ、A代表の再起もまた難しいだろう。

(文:佐藤徳和)

【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru

【関連記事】
16歳で4部優勝→全選手が契約解除…その5年後にイタリア代表でデビュー弾。“22歳の苦労人”カヨーデが歩んだ異色のキャリア
「1部経験ゼロ」FWも大抜擢。マンチーニ復帰の新生イタリア代表、4大会ぶりのW杯出場へ弾みをつけられるか【カルチョを読む】
ユーヴェからイタリア人が消えた… 129年の歴史で初、フィールドプレーヤーにイタリア人不在の先発メンバーから浮かび上がる疑問【カルチョを読む】



『フットボールチャンネル』でサッカー最新情報を見よう!
いち早くチェックしたい方は下記リンクから↓↓




【了】

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top