
UEFAネーションズリーグを2勝1分け1敗でスタートした、イタリア代表のロベルト・マンチーニ監督【写真:Getty Images】
ロベルト・マンチーニ監督の下、UEFAネーションズリーグを2勝1分け1敗でスタートしたイタリア代表。しかし、その裏でイタリア・サッカー連盟は大混乱に陥っていた。6月就任のマラゴー会長が資格問題で退任し、自ら特別管理者に就く異例の事態に。人事騒動や利益相反疑惑も相次ぐイタリア・サッカー界で、何が起きているのか。(文:佐藤徳和)[2/2ページ]
問題だらけのFIGC

イタリア・オリンピック委員会(CONI)の会長を務めるルチャーノ・ブオンフィッリョ【写真:Getty Images】
FIGCを巡る騒動は、これだけではない。9月30日、元フェンシング選手で、五輪金メダリストのディアーナ・ビアンケーディが、イタリア代表の代表団長を辞任している。この代表団長は、故ジャンルーカ・ヴィアッリやジャンルイージ・ブッフォンが務め、イタリア代表チームの活動全体をFIGC側から支える役職だ。
ビアンケーディは、マラゴーの肝入りで8月9日にイタリア代表の代表団長に任命されたばかりだった。任命時、マラゴーは、『ラ・ガッゼッタ・デッロ・スポルト』に対し、「サッカーは孤立した状態から抜け出さなければならない……。彼女の任命は、スポーツ全体との接点となり得る」と期待を込めていた。
ビアンケーディはCONIの副会長もすでに務めていた。女史はCONI副会長として、ブオンフィッリョCONI会長の方針に異論を示したことが問題視されていた。
スポーツ相のアンドレア・アボーディから「信頼関係に反する」と指摘されたことを受け、ビアンケーディは、自身の価値観まで疑問視されたとして、イタリア代表にまで論争が及ぶことを避けるため、代表団長を辞任した。ビアンケーディの起用については、それまでサッカー界で仕事をした経験が一度もなかったことから、批判も出ていた。
また、ブオンフィッリョCONI会長についても、問題が明らかになった。息子マルコが、元スペイン代表のジェラール・ピケが創設した「キングスリーグ」のイタリアの営業責任者を務めているという点だ。
キングスリーグは、FIGCとは関係を持たない大会で、過去にはレーガ・ディレッタンティ(イタリアのアマチュアリーグ組織)と何度も衝突している。セリエDやエッチェッレンツァ(5部リーグ)の選手が、キングスリーグに出場しており、クラブ側は、登録選手が大会に参加することを反対し、実際に大会に参加した選手との関係を打ち切るクラブもあったという。
さらに、ヴェネツィアFCの新スタジアムのマーケティングやスポンサーなどを担当する『エレヴァーテ』社の業務に関わっていることが判明し、CONI会長である父親との利益相反を疑問視する声が出ているのだ。
ブオンフィッリョの息子であるマルコを巡る利益相反問題が、ブオンフィッリョ自身の特別管理者を選任する投票資格や立場を不安定にする要因の一つとなり、それがマラゴーを特別管理者にする妥協案を後押しした可能性もある。
イタリア・サッカー界に平穏は訪れるのか…

ジョバンニ・マラゴーの長年の友人でもあるロベルト・マンチーニ監督【写真:Getty Images】
マラゴーのFIGC会長就任後、FIGCでは、取り憑かれたように問題が後を絶たない。
7月11日、FIGCのテクニカルディレクター兼クラブ・イタリア会長に就任したパオロ・マルディーニと、アドバイザーに就任したレオナルドは、イタリア代表の新監督としてアンドレア・ピルロを推していた。しかし、ピルロとロシアの賭博会社『Fonbet』との関係を問題視したマラゴーが就任に難色を示し、ピルロの就任が見送られた。
ピルロの監督就任見送りを受け、マルディーニはテクニカルディレクターを、レオナルドはアドバイザーを、それぞれ就任からわずか16日で辞任。両者は、マルディーニが主導して進めるはずだった代表強化構想と監督人事を巡り、マラゴーとの間で大きな意見の相違があることを理由に辞した。
そして、マラゴーはイタリア代表監督にマンチーニを任命。そのマラゴーとマンチーニの関係は、単なる仕事上の関係にとどまらず、ローマの名門スポーツ社交クラブ、『チルコロ・カノッティエーリ・アニエーネ』を通じた長年の知人で、マンチーニの代表監督起用に「お友達人事」との批判も出ていた。
ようやくマンチーニ体制が始動し、幸いにも及第点のスタートとなった。しかし、その裏では不可解な政治的問題が次々と表面化。FIGC内部の混乱は、代表チームの活動にも影を落としかねない状況となっている。
イタリア・サッカー界に平穏が訪れる日は、いつになるのだろうか。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
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