無失点でも、喜ぶことはできなかった。ジェフユナイテッド千葉は横浜F・マリノスとの一戦を0-0で終え、勝ち点1を積み上げた。しかし、長期離脱から今季リーグ戦初先発を果たしたキャプテン・鈴木大輔の胸にあったのは、勝利を逃した悔しさだった。最終ラインを統率し、絶え間なく声をかけ続ける姿勢は、仲間に安心感を与え、指揮官からも高く評価された。「すごく発信をしてくれる」。チームメートがそう語るベテランDFは、苦境に立つジェフ千葉に何をもたらすのか。(取材・文:石田達也)[1/2ページ]
【2026/27 明治安田J1リーグ第10節】
2026年10月17日 ジェフユナイテッド千葉 0-0 横浜F・マリノス
(フクダ電子アリーナ)
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無失点よりも「勝ち点3を取らなきゃ…」
勝ち点3には届かなかった――。
ただ、無失点で試合を終えた中で、精神的支柱となるキャプテンDF鈴木大輔が示した統率力で、チームは明らかに締まっていた。
試合後、ミックスゾーンに姿を見せた鈴木から『1ポイントを得ることができた』という、安堵の空気は感じられなかった。通路中に充満した『悔しい』という感情は、むしろ守備の要としての芯の強さを際立たせているように映った。
フル出場した鈴木は、次のように試合を振り返る。
「自分たちは、勝ち点1を積み上げるよりも勝ち点3を取らなきゃいけないチームですし、それだけのハードワークや、それだけの準備もしてきたつもりです。
こういう雰囲気をサポーターが作ってくれて、この順位にも関わらず、ずっと後押しをしてもらっている意味では、ここは勝ち点3を絶対に獲らなければいけなかったなという思いが強いです」
爽やかな秋晴れのもと、リーグ戦の節目となった10節で、ジェフユナイテッド市原・千葉がフクダ電子アリーナに横浜F・マリノスを迎えたゲームはスコアレスドローで終わった。
悔しさが残った前節を経て
立ち上がりは千葉が強度の高いプレーで押し込む。
前線からのハイプレスとコンパクトな守備で主導権を握り勢いを加速させる。最終ラインの背後にボールを落とし、セカンドボールを回収。厚みのある攻撃を仕掛け、最後はシュートで終わる、という流れを生み出していく。
津久井匠海は「僕たちがハメて(鈴木)大輔さんとボニくん(ンドカ・ボニフェイス)が回収してくれる。その安心感の下で僕たちは行ける。ボランチと最終ラインを含めて、そこが今回は大きかった部分かなと思いますし、2人がガッチリと固めてくれたので」と主導権を握った理由を口にした。
ケガで長期離脱を強いられた中で、今シーズンのリーグ戦初先発を飾った鈴木は「自分たちは前回のホームゲームで悔しい思いをしていますし、何が何でも勝つことだけしか考えてなかった」と言う。
その鈴木が『悔しい思いをした』と言うのは前節のV・ファーレン長崎戦(1-1)である。
1点リードのまま迎えた90+2分に、スクランブルでSBとしてピッチに投入されると、その3分後に同点弾を撃ち込まれた。
試合を締めるという自分のタスクを実行できなかったことに忸怩たる思いを抱いていたからこそ、チームを勝利へ導きたい思いは人一倍強いものがあった。
鈴木は、ンドカとCBコンビを組み、周囲とコミュニケーションを取りながらラインコントロールをし、ディフェンスを統率。横浜FMの攻撃の中心部であるFW谷村海那やMF天野純らに対しては捕まえに行く部分と行かない部分を、その都度確認しながら対応し、相手の攻撃を跳ね返した。
「相手は2列目で自由にボールを受ける選手がいたり、中盤の選手の運動量があったりというところで、中盤のところで自由に持たれると怖いチームだなと思っていましたし、前に一発がある選手がいるので、自分たちがどれだけコンパクトになり、そのスペースを与えないように守備をするか。どれだけ隙を与えないかっていうところがポイントだったんですけど、そこは試合を通してできる時間が多かったと思っています」
「鈴木大輔という選手の価値をピッチ上で示せたんじゃないか」
9回外しても、1回決めればいいオフェンスに対して、10回攻撃をされたら10回とも止めるのがディフェンスであり、1回のミスも許されない。
ボールを持っている選手をマークしつつも、他の選手の動きにも注意を払いながら味方へ絶え間なく声をかけていった。
小林慶行監督は「大輔とボニフェイスは自分たちから発信できるCBなので、そういうCBはチームとしてずっと求め続けていますし、こちらから見ていてもすごくいいコミュニケーションを取りながらやれていると思っていました」と話す。
加えて「皆さんが見てもらったままだと思います。彼(鈴木)はしっかりと、本当に普段からやっている男なので安心して送り出していますし、チームにもポジティブな影響力を与えられる選手なので、そういう部分では本当に、大いに、今日は鈴木大輔という選手の価値をピッチ上で示せたんじゃないかと思います」と賛辞を送った。
その上で指揮官は宿題を課した。
「プラスアルファですけど、CBとして彼自身のストロングとしてもう1個、セットプレーから点を取れる選手なので、そういうところも今後は期待していきたいと思っています」
一瞬たりとも手を抜かない背番号13の姿勢は見る者を驚かせ、仲間の心を震わせる。その混じり気のない熱さがチームに伝播する。
コンビを組んだンドカは、「僕は公式戦4試合出場して相方が4回とも違うんですけど、その中で大輔さんは、すごく発信をしてくれる。常に試合の中で修正をしながら、お互いにやって欲しいプレーを喋りながらできたと思います」と振り返る。
さらに「試合の中で学ぶことが多かったです。ラインの上げ下げ、相手の縦パスに寄せ切るところ、潰すところなど学びながら試合ができた。本当に良かったです」と経験豊富なCBとプレーしたことで新たな刺激を受けていた。



