「チームは私についてきているのか?」。ルチャーノ・スパッレッティ監督が口にした言葉は、ユヴェントスが抱える危機の深刻さを物語っている。18日のセリエA第7節、ホームでラツィオに0-3の完敗。31年ぶりとなる屈辱的な敗戦を喫した名門では、選手の発言を巡って指揮官との間に不協和音も生じている。大型補強を敢行しながら結果を残せず、サポーターの不満も高まるなか、スパッレッティはチームを立て直せるのか。混迷するビアンコネーリの現状に迫る。(文:佐藤徳和)[1/2ページ]
スパッレッティはチームに苦言
「私も同じことをしたし、いつも衝動的だった。発言をあらかじめ考えておいたことは一度もない。その場で、話すのが正しいと思ったんだ。こういうことは自分が言わなければならないと分かっていた」
ブッフォン自身にも同じような経験があると語った。
さらに「ブレーメルの不満も理解できる。ただ、発言するのであれば、常に誰よりもチームに貢献している立場にいなければならないし、ああした辛辣な言葉を口にできるだけの立場でなければならない。まず自分自身を問い直す必要がある。私だって、ときには誰かに支えてもらう必要があった」と話し、スパッレッティと同様、まずは自分に厳しくあるべきだと主張している。
しかし、スパッレッティ自身もまた、チームに対して容赦ない発言を浴びせている。
「リズムもアイデアも走力も、チームのために尽くす姿勢もないユーヴェだった。選手たちの振る舞いについては、気に入らない点が数多くあった」
『DAZN ITALIA』の試合後に応じたインタビューだ。指揮官にはもちろんチームを非難する権限はあるだろう。
だが、その「気に入らない」チームを指揮するのもまたスパッレッティである。ロッカールームでの発言に留めておくべきではなかったか。
攻撃では、ボールを保持しても、形が確立されておらず、偶発的なプレーに頼っている。ペナルティーエリア内への侵入が少なく、選手個々の特徴も生かせていない。
足元でもらおうとする選手が多いのも問題だ。守備では、カウンターへの対応の拙さや、ラインが下がり過ぎることもしばしば見受けられる。
だが、一番の問題は、戦術以前に、スパッレッティがチームを掌握できていないことに加え、もはや自分自身をコントロールできなくなっていることにある。
サポーターは解任希望? 後任に待ち望むのは…
それは、なんとか1-1の引き分けに持ち込んだ12日のカリアリ・カルチョ戦でのスパッレッティの苛立ちが如実に物語っている。
試合直後、ファビオ・ピザカーネに対して、いきなり噛みついた。テレビ映像の読唇による報道では、スパッレッティは「ビンタを食らわせてやる」と発言したとされている。
本人はこの発言を否定しているが、退席処分の原因を作ったのがスパッレッティであることに変わりはない。
今のユーヴェは、ユーロ2024(欧州選手権)で「史上最弱」と揶揄されたイタリア代表を見ているようだと嘆く者も多い。
思えばスパッレッティが解任されたのも、FIFAワールドカップ2026欧州予選のノルウェー戦に「0-3」で敗れた直後であった。では、今回も「0-3」で敗れ、解任となるのだろうか。
今のところ、クラブの幹部はスパッレッティの続投を支持しているようだ。だが、サポーターの思いは、もはや限界に近づいている。
彼らが待ち望むのは、アントニオ・コンテだ。カルチョポリ後、不振に喘いでいたチームを劇的に蘇らせた軍曹の復帰だ。
19/20シーズンを最後に、スクデットから遠ざかり、毎年のように監督の首がすげ替えられる状況に、もはや耐えることはできないのであろう。
前半戦はまだ、上位陣との戦いが多く残されている。コモ1907、ASローマ、そしてインテルとの対決だ。
さらに、SSラツィオ戦では、フランシスコ・コンセイソンが左肩を脱臼。またしても主力の一人が離脱してしまった。
今のチームの雰囲気を見れば、今後も結果が出ず、幹部が“決断”に踏み切る可能性は決して低くはない。そのコンテは今、トリノで生活を送っている。
彼もまた、復帰に向けて準備を進めているのだろうか。
(文:佐藤徳和)
【著者プロフィール:佐藤徳和】
1998年にローマでの語学留学中に、地元のアマチュアクラブ「ロムーレア」の練習に参加。帰国後、『ポケットプログレッシブ伊和・和伊辞典』(小学館)の制作に参加し、イタリア語学習書などの編集、校正、執筆に携わる。2007年から、フリーランスとして活動し、主にイタリア・サッカー記事のライティングに従事。2014年には、FC東京でイタリア人臨時GKコーチの通訳を務める。IL ROMANISTA、日本特派員。『使えるイタリア語単語3700』(ベレ出版)、『イタリア語基本の500単語』(語研)を共同執筆。日伊協会では、カルチョの記事を読む講座を開講中。X:@noricazuccuru
【関連記事】
ユーヴェからイタリア人が消えた… 129年の歴史で初、フィールドプレーヤーにイタリア人不在の先発メンバーから浮かび上がる疑問【カルチョを読む】
アディダス、新作レザースパイクを発表 黒×赤の“伝統的プレデター”が復活、ユヴェントスのユルディズが着用
イタリア代表の崩壊はメディアの責任でもある。セリエAの外国人偏重起用問題を報じない…いや、報じられない理由【コラム】
【了】



