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J2 2026.10.27 17:45

「マジでレベル低い」槙野智章監督の審判批判。だが、審判の能力だけでは片付かない。J2のVAR問題と欧州2部の選択【コラム】

藤枝MYFCの槙野智章監督
藤枝MYFCの槙野智章監督【写真:Getty Images】



 J2リーグの審判判定を巡り、議論が広がっている。24日の徳島ヴォルティス戦後、藤枝MYFCの槙野智章監督は「マジでレベル低い」と審判団を痛烈に批判した。判定の正確性は当然求められるが、J2全体のレフェリングを支える仕組みにも目を向ける必要がある。J1では導入されているVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は、J2・J3のリーグ戦では使われていない。欧州の2部リーグでは導入が進む一方、見送る国もある。費用と人材、運用体制の違いから、J2が抱える課題を考える。(文:川﨑ゆうき)[1/2ページ]

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審判の能力だけが問題なのか?

藤枝MTFC対徳島ヴォルティスの模様
藤枝MTFC対徳島ヴォルティスの模様【写真:Getty Images】


 発端となったのは、藤枝が0-1で敗れた徳島戦の69分だった。藤枝の川本梨誉がペナルティエリア内で浮かせたボールが相手DFの左腕付近に当たったものの、主審はハンドの反則を取らなかった。

 猛抗議した槙野監督にはイエローカードが提示された。試合後には判定への不満をあらわにし、「マジでJ2のレフェリーのレベルを上げないと壊れます」と改善を訴えた。

 ただし、映像でボールが腕に当たったことを確認できても、それだけでハンドの反則とは限らない。腕の位置や動きなどによって判断が異なり、判定が誤りだったと断定するのが難しいケースもある。

 一方、こうした際どい判定について、主審の判断を補助する仕組みが存在することも事実だ。

 J1で導入されているVARは、得点やPK、退場などに関わる明白な判定ミスを映像で確認し、主審の判断を補助する仕組みだ。2026/27シーズンからは、明らかに誤った2枚目の警告による退場もレビュー対象となった。

 さらにJリーグでは、速やかに判定を変更できる場合に限り、明らかに誤って与えられたコーナーキックも確認できるようになった。今回のようなペナルティエリア内でのハンドの疑いも、PKの判定に関わるため確認の対象になり得る。

 映像によって確認できる事実と、競技規則に照らした主審の解釈は別問題だ。それでも、映像を通じて判定を検証できる環境があるかどうかは、審判にとっても選手や監督にとっても大きな違いとなる。

 25日には本田圭佑もSNSで、予算配分を見直し、審判員の待遇を改善する必要性を訴えた。判定の質を向上させるには、個々の審判員を批判するだけでなく、育成や支援体制にも目を向ける必要がある。

 そもそも、なぜJ2にはVARが導入されていないのか。

審判員育成にリソースを投じるJリーグ

Jリーグ 審判団
Jリーグの試合を裁く審判団【写真:Getty Images】


 Jリーグの野々村芳和チェアマンは2023年2月の会見で、J2への導入には億円単位の費用が必要になると説明した。同年4月には窪田慎二執行役員が、専門人材の不足も課題に挙げている。(出典:Jリーグ公式|2023年度 第2回・第4回Jリーグ理事会後会見発言録)

 VARの運用には、映像設備だけでなく、専門の訓練を受けた審判員や映像オペレーター、スタジアムの通信環境などが必要となる。つまり、機材を購入すれば解決する問題ではなく、継続的な費用負担と人材育成が欠かせない。

 もっとも、Jリーグも審判員を支える取り組みを進めている。2026年1月の公式発表によると、日本サッカー協会(JFA)との連携によってプロフェッショナルレフェリーを27人に増員し、若手審判員の早期育成制度も新たに導入した。さらに4月には2人が加わり、計29人となった。

 百年構想リーグでは、選手OBが審判員と意見交換するマッチクオリティアセッサー制度もJ1で試験運用している。こうした人材育成や環境改善とVARを担当できる有資格者の確保は区別して考える必要があるが、リーグ側も組織としてリソースを割いていることが分かる。

 海外に目を向けると、欧州主要国の2部リーグでもVARの導入状況は分かれている。

 ドイツのブンデスリーガ2部では2019/20シーズンからVARを導入。専門誌『キッカー』によると、2023/24シーズンに2部の18クラブが負担したVARの技術費は合計237万7000ユーロ(約4億2786万円)だった。1クラブ平均で約13万2000ユーロ(約2376万円) となる。

 ただし、これは技術費のみであり、審判員の報酬などを含む総運用費ではない。

費用を分担するポルトガル、“簡易式”を選ぶベルギー

ベルギー2部のKベールスホットVAでプレーする原口元気
ベルギー2部のKベールスホットVAでプレーする原口元気【写真:Getty Images】


 スペイン2部でも2019/20シーズン、イタリアのセリエBでは2021/22シーズンから導入されている。

 費用負担の仕組みとして参考になるのがポルトガルだ。2部リーグでは2023/24シーズンから全試合にVARを導入したが、カメラは4〜6台に抑え、設備を簡素化した。さらに、ポルトガルサッカー連盟とリーグが段階的に費用を分担し、2026/27シーズンからはリーグ側が全額を負担する計画を立てた。

 最初からクラブやリーグだけに費用を負担させるのではなく、協会との協力によって導入を進めた事例といえる。

 一方、導入を見送った国もある。フランスのリーグ・ドゥは、放映権収入の減少を背景に計画を延期。現地紙『レキップ』によると、2026/27シーズンも実現しなかった。

 イングランド2部リーグ相当のチャンピオンシップでは、2026年4月に簡易映像判定方式の導入を見送った。同月21日付『BBC』によれば、クラブ側が費用や観戦体験への影響を懸念し、多数が反対したという。資金面だけでなく、導入すること自体への賛否も判断を分けている。

 そんななか、別の道を選んだのがベルギーだ。2部リーグでは今季から「FVS(Football Video Support)」の試験運用を開始した。

 これは通常のVARとは異なり、監督が原則1試合2回まで判定の見直しを要求し、主審が映像を確認する仕組みだ。判定が変更されれば要求回数は減らない。

 専任のVARやAVARを置かず、監督の要求を受けて映像を確認するため、映像審判が常時チェックする通常のVARとは仕組みが異なる。ベルギー2部では基本的にテレビカメラ2台を使い、追加の映像も利用できる。

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