
ファジアーノ岡山の竹内涼【写真:Getty Images】
ファジアーノ岡山は10月31日、2026/27明治安田J1リーグ第13節でFC東京に0-4で敗れた。ホームでの完敗に沈むチームのなかで、強い意志を示したのがキャプテンのMF竹内涼だ。今季リーグ戦初出場となった35歳は、約20分間のプレーで攻守に積極性を見せ、試合後も前を向き続けた。苦しい状況でも決して折れない主将を突き動かしていたものとは。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ]
【2026/27 明治安田J1リーグ第13節】
2026年10月31日 ファジアーノ岡山 0-4 FC東京
(JFE晴れの国スタジアム)
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折れない男が見せた意地「ピッチ上でチームの直接の力になりたい」

FC東京戦に臨んだファジアーノ岡山イレブン【写真:Getty Images】
このままやられっぱなしでたまるか。1人のプロサッカー選手として、チームを束ねるキャプテンとして──。そんな意地を感じる約20分間だった。
J1リーグ第14節でFC東京をホームに迎えたファジアーノ岡山は、相手の勢いに屈した。キックオフから仕掛けたハイプレスは、時間の経過とともに勢いを失い、相手の質の高いビルドアップを捕まえられない。
ミドルブロックに切り替えて、自陣で粘り強く跳ね返していたが、FC東京は第12節終了時点で11戦負けなし&7試合連続無失点と好調なチーム。隙を見逃してくれる甘さなどなかった。
前半終了間際の45+4分に先制点を許し、後半開始直後の47分には守備陣のミスから追加点を献上。63分にもシュートを決められ、3点差をつけられた。これが優勝争いを演じるチームとの力の差なのか。ピッチにもスタンドにも、重い閉塞感が漂っていた。
だが、この絶望的な状況のなかに、折れていない男がいた。
78分、木山隆之監督が最後の交代カードを切る。ウイングバックの白井康介に代わって、中盤の底を本職とするチームキャプテン・竹内涼を投入した。
今節がリーグ戦の初出場だった。2024年に清水エスパルスから加入し、22試合に出場してJ1昇格に貢献。翌年からはコンディションが整わない時間が続き、2025年のJ1では11試合で151分、2026年上半期の特別大会では3試合で81分と、プレータイムを伸ばせないでいた。
プロキャリア18年目でJリーグ通算300試合以上に出場。百戦錬磨の経験と、清水では4季連続で、岡山では3季連続で主将を務めるリーダーシップは一目置かれている。シーズンを戦っていくために、チームを一つの方向に導き、日々の姿勢や取り組み、気配りで一体感をつくる。ピッチ外での貢献は計り知れないが、そこだけに満足していない。
「ピッチ上でチームの直接の力になりたい」という思いで今季を戦う背番号7は、「途中出場だったので、まずは1点というところと、そこから流れを作れるようにと思って」、ピッチに入ると、矢印を前に強く出していく。
「前に、ゴールに向かっていかないと…」竹内涼が発する前への矢印

竹内涼は3季連続でファジアーノ岡山の主将を務める【写真:Getty Images】
ファーストプレーでは、自陣左サイドで濵田太郎からボールを預かると、前線の様子を確認しながらキープ。後ろには鈴木喜丈や立田悠悟が相手のプレッシャーを受けない位置にいたが、簡単にバックパスという選択肢は取らない。ドリブルでボールを動かし、センターサークル内に落ちてきたナ・サンホを見つけて縦パス。竹内は前に配球した。
サンホから立田にパスが繋がるなか、竹内は中央から右サイドの深い位置へと抜け出していく。このランニングに連動して、河野孝汰がスペースへ走り出し、立田が浮き球を送り込んだ。
相手にカットされたものの、河野の即時プレスによって相手DFに中途半端なクリアを強いると、中央でオベルダンが回収。竹内が影の引き出し役となって相手ラインを乱し、敵陣での素早い奪回というチームの武器を引き出した。
竹内が発する前への矢印は、これで終わらない。
流れはそのままに、オベルダンが縦パスを差し込み、レオ・ガウショがバイタルエリアのスペースに置くようにパス。そこに走り込んだのは竹内だった。背番号7は相手DFに寄せられながらも、迷うことなく右足を振り抜く。ダイレクトシュートがゴール一直線に飛ぶ。枠は確実に捉えていた。
しかし、上に跳んだ相手GKに掻き出された。竹内は悔やんだものの、チームはコーナーキック(CK)を獲得。すぐに切り替える。手を叩き、声を出し、チームメイトを鼓舞した。
「相手のフォーメーションと自分たちとのかみ合わせの部分で、どこに入っていったら空きそうだなというのは感じていた。そこの部分で表現した。前に、ゴールに向かっていかないと、相手に怖さを与えられないと思ったんで。
相手も足が止まりかけていた時間帯だったし、交代で入った選手がそういう推進力やゴールに向かっていくプレーを絶対に出さないといけないと思っていた。結果には繋げたかった」
80分には強気な前への守備を見せる。自ら獲得したCKでチームが攻め込むなか、相手ペナルティーエリア(PA)の外で森壮一朗がダニ・ゴメスにボールを奪われる。ダニ・ゴメスはすぐさまドリブルを開始し、FC東京のカウンターが発動した。対峙したのは竹内。背後には広大なスペースがある。スピードを吸収しながら、味方の戻りを待つという選択肢もあっただろう。
しかし、竹内は前に出た。相手のタッチが大きくなった一瞬を見逃さず、鋭くアタックし、敵陣でボールを奪い返してみせた。
背番号7が試合後にとった行動「そういう人たちのために」

ファジアーノ岡山加入3年目の竹内涼【写真:Getty Images】
竹内は前への矢印を出し続ける。奪った勢いそのままにボールを持ち運ぶ。相手の即時奪回プレスをひらりとかわし、PAに向かって突進していく。相手3人を引きつけると、シュートフェイントから右足のアウトサイドでPA右のスペースにパス。これに反応した河野のシュートはブロックされたが、竹内が攻守両面で思い切りの良さを発揮した。スタジアムのボルテージが一段と高まった。
「自分はスピードとか、フィジカル的には(特長が)ある選手ではないので、(前に向かっていく)姿勢だったり、シュートだったり、そういうところで(雰囲気を)変えていきたいと思っていた」
竹内が押し出すエネルギーが伝播して、攻勢を強めるも、盤面をひっくり返すようなカウンターから追加点を許した。俵積田晃太のスルーパスに反応したダニ・ゴメスを、竹内は追いかけたが、わずかに届かない。岡山はFC東京に0-4で敗れた。
試合後、選手たちはファン・サポーターに挨拶をしながらスタジアムを1周する。その足取りは重く、下を向く者やタオルで顔を隠す者もいた。しかし、竹内は違った。まっすぐに前を向き、背筋を伸ばし、先頭を歩いていた。その行動を引き起こしたのは、応援してくれる人たちへの想いだった。
「あの時間であの点差になって、あれだけ人が残るのはこのスタジアムだけだと思うんで。最後の挨拶まで、ああやって声をかけてくれる。そういう人たちのために戦いたいなと改めて思った。自分自身が出るタイミングでも、あれだけの人が残っていた。応援している人たちもそうだし、メインで見ている人もいたんで、『なんとか』という気持ちはすごくありました」
どんな結果であっても、最後までファン・サポーターが後押ししてくれる。そんなスタジアムの雰囲気は、岡山にとって当たり前の光景になりつつある。だが、竹内にとって当たり前ではない。