「PKを止めたときは、やめてくれと思いましたけど(笑)」。そう振り返ったのは、ジュビロ磐田のGK牲川歩見だ。藤枝MYFCとの“蒼藤決戦”は、後半アディショナルタイムの2得点で磐田が劇的な逆転勝利。かつて浦和レッズでともに切磋琢磨した吉田舜と牲川は、互いに好守を連発して存在感を示した。元チームメートとの対決への思いとは。(取材・文:河治良幸)[1/2ページ]
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存在感を放った2人のGK
11月3日に行われた藤枝MYFCとジュビロ磐田の“蒼藤決戦”は、後半アディショナルタイムに2ゴールを奪った磐田が2-1で劇的な逆転勝利を収めた。
両チーム合わせて46本のシュートが飛び交った好ゲームで、攻撃陣とともに大きな存在感を示したのが、両チームのGKだった。
磐田の牲川歩見は再三にわたるビッグセーブでチームを救い、藤枝の吉田舜もPKストップをはじめ、何度も決定機を阻止した。
かつて浦和レッズで同じGKグループに所属した2人が、それぞれのゴールを守りながら持ち味を発揮した一戦でもあった。
22分、磐田はマテウス・ペイショットが獲得したPKから先制のチャンスを迎えた。しかし、ペイショットが自ら蹴ったシュートを吉田がセーブ。古巣でともに練習を重ねた相手の活躍を、牲川も反対側のゴールから見ていた。
「PKを止めたときは、やめてくれと思いましたけど(笑)」
試合後、そう笑った牲川だが、吉田の実力は十分に理解していた。
「舜のああいったプレーは、浦和時代から近くでしっかり見ていましたし、彼も能力のある選手。ああやってチームの攻守において存在感を発揮できる選手ということは頭にあったので、ゲームのなかでもすごく刺激になりましたし、ちょっと感動する感覚もありました」
吉田の好守に刺激を受けた牲川も、藤枝が攻勢を強めた後半には何度もチームを救うことになる。
セーブだけでなくキックでも魅せた吉田舜
「相手のキーパーも前半からPKを止めていたので、こっちもしっかり踏ん張らなきゃいけないと思いながらゲームを過ごしていました」
61分には、左サイドを突破した中村優斗が角度のない位置からシュート。牲川が片手で防いだボールは反対側のポストに当たり、ゴールを外れた。
さらに65分、右サイドから青木俊輔が左足で入れたボールがそのままゴールを襲ったが、これも片手でかき出した。
特に際立ったのが81分のプレーだ。
ロングボールから真鍋隼虎が右サイドを抜け出し、牲川と1対1になる。決定的なピンチだったが、牲川は的確なポジショニングから身体を低くしてグラウンダーのシュートに対応し、ゴールを許さなかった。
シュートへの反応だけでなく、相手との距離や角度を見極める判断力も光った場面だった。
それでも86分、藤枝に先制点を奪われる。起点となったのは、吉田の正確なパントキックだった。
左サイドへ送られたボールから中村が抜け出し、カットインして右足で速いクロスを供給。ファーサイドに入った真鍋がヘディングで合わせた。
牲川も咄嗟に横へ跳んで反応したが、地面を叩いたボールはゴールネットに吸い込まれた。吉田はゴールを守るだけでなく、正確なキックで先制点にも関与した。
再三の好守で無失点を維持してきただけに、残り時間の少ない中での失点は痛恨だった。しかし、牲川は最後まで勝利を諦めていなかった。
「助かった。みんなありがとう」
アディショナルタイムを目前に迎えたCKで、牲川も相手ゴール前まで上がった。ベンチからの指示ではなく、自ら攻撃参加を申し出たという。
「自分から『行っていいですか?』と聞きました。ダービーですし、やっぱり勝利が一番大事だと思っていたので。勝ちたいという気持ちがあって、ちょっとわがままを言いました」
このCKから直接得点が生まれたわけではないが、磐田はその後も攻撃を続け、後半アディショナルタイム2分、ゴール前の混戦から松原后が押し込んで同点に追いついた。
牲川の攻撃参加を含め、チーム全体で相手ゴールに圧力をかけ続けた流れの中で生まれた得点だった。
さらに磐田は勝ち点1で満足することなく、逆転を目指した。
同6分には小原基樹のクロスから西久保駿介がアクロバティックな右足のボレーシュート。吉田が反応して弾いたものの、こぼれ球を途中出場の井上潮音が押し込んで逆転した。
勝ち越しゴールが決まった瞬間、牲川の胸に浮かんだのは「助かった。みんなありがとう」という思いだったという。
後半途中から投入された選手たちによって攻撃の特徴が明確になり、チーム全体のパワーが一段上がったと牲川は感じていた。
もちろん、同点に追いついた後も相手のカウンターには警戒が必要だったが、選手たちが勝利を求め続けたことが逆転につながったと受け止めている。
この試合で見逃せないのは、両GKが見せたビッグセーブだけではない。



