
FC今治の中井卓大ピピ【写真:Getty Images】
9歳でレアル・マドリードのカンテラに合格し、日本中から注目を集めた中井卓大ピピ。スペインでの挑戦を経て、今シーズンFC今治へ加入し、念願だったJリーグの舞台に立った。周囲から寄せられる期待やさまざまな声を受け止めながら、中井はいま、自分に何が足りないのかと向き合っている。「チームの勝利のために」と語る22歳が、今治で目指している新たな姿とは。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
【2026/27明治安田J2リーグ第7節】
2026年9月19日 横浜FC 2-1 FC今治
(ニッパツ三ツ沢球技場)
月額最安値で視聴するならDMM×DAZNホーダイ[PR]
中井卓大ピピがJリーグに懸ける思い

レアル・マドリードのトップチーム練習に参加した経験を持つ中井卓大ピピ【写真:三原充史】
9歳で名門レアル・マドリードの育成組織“カンテラ”に日本人で初めて合格。生まれ育った滋賀県大津市からスペインへ旅立ち、異国の地でサッカーボールを追い続けた中井卓大ピピはこんな思いを抱いていた。
「Jリーグの舞台でプレーしてみたい、という思いはずっとありました」
そして10月に23歳になる新シーズンに、練習参加のオファーを受けたJ2のFC今治で夢をかなえた。スペイン5部リーグのレガネスBから完全移籍で加入した中井は、不退転の決意を秘めて帰国した。
「いまは本当に覚悟のうえでプレーしています」
何に対する覚悟なのか。日本ではまず間違いなく好奇の視線の対象になる。レアル・マドリード出身の天才児はどのようなプレーで楽しませてくれるのか。スペイン仕込みの華麗なプレーが見てみたい、と。
実際、今シーズンが開幕した直後にはYouTube上でちょっとした騒動が起こっている。
ホームのアシックス里山スタジアムにRB大宮アルディージャを迎えた8月15日のJ2リーグ第2節。自陣の左サイドでボールをキープし続け、相手に囲まれても絶対に失わない中井のプレーが称賛された。
動画でアップされたのはほんの数十秒だけ。中井本人が誰よりもギャップを募らせていた。
「あのシーンだけを見たら…」

卓越した技術でボールキープした動画が拡散されたことで話題に【写真:Getty Images】
「これは自分でも言いたかったんですけど、自分的には本当にシンプルにはたくプレイヤーだと思っていて。でも、あのシーンだけを見たらよくボールに触って、パスを出さない選手なのかなと思われがちで。
以前がそういう(パスを出さない)プレイヤーで、それもYouTubeにあがっていたからだと思いますけど、あのときは本当にパスを出すところがなくて、自分でキープしなきゃいけない場面ではあったので」
スペインがひときわ強調されたYouTube上のコメントに思わず苦笑した経験も、中井の胸中に秘められていた思いをさらに強くさせている。覚悟の正体を、中井はこんな言葉を介して明かしている。
「でも世間……世間というか、いろいろな方のコメントがありますけど、本当に自分だけにフォーカスして、チームの勝利のために自分がどのようにしていけばいいのか、という点だけを考えてプレーしています」
自分らしくプレーしていくために。今治への加入にあたって、中井は2つのこだわりを貫いた。
背番号と登録名に込めた思い

背番号「80」を背負う中井卓大ピピ【写真:Getty Images】
まずは初めて日本でプレーする背番号としてあえて「80」を選んだ。今シーズンの今治に所属する選手たちのなかでは、ブラジル出身のDFガブリエル・ゴメスの「99」に次ぐ大きな番号となる。
もっとも、中井自身は「8番が好き、というのもあるんですけど」と再び苦笑する。昨シーズンのオフにJ3の福島ユナイテッドFCから加入していた森晃太が、秋春制へと移行する今シーズンの始動を前にしてすでに「14」から「8」へと変更していた。7月下旬に加入した中井が、ちょっぴり照れながらこう続けた。
「チームに加入したのが本当に最後だったので、背番号が残っていなかったなかで、パッと見たときに『80』がいいんじゃないかと。ACミラン時代のロナウジーニョが『80』だったので、その意味も込めました」
もうひとつのこだわりは登録名。本名の「中井卓大」に、幼少期につけられた愛称「ピピ」を続けた。思い通りのプレーができないとよく泣いていた中井は、いつしか「ピピ」と呼ばれるようになった。
「スペインでもずっと『NAKAI』というユニフォームネームでしたけど、自分のなかで『ピピ』が一番しっくりくるんですね。なので、登録名だけでなくユニフォームネームも『PIPI』にしました」
オーナーに就任して以降、地域リーグから日本フットボールリーグ(JFL)をへてJ3、そしてJ2へとチームを昇格させてきた元日本代表監督の岡田武史氏の存在。そして6月に就任したスペイン出身のアベル・モウレロ監督の存在もあって移籍を決めた今治で、中井は「80」の下に「PIPI」を刻んでピッチに立っている。