浦和レッズの山根視来【写真:Getty Images】
8月に浦和レッズへ加入した山根視来が、待望の埼玉スタジアム初勝利をつかんだ。悔しい敗戦を経験した6日後、東京ヴェルディ戦でスタメン出場を果たすと、攻守で存在感を発揮。試合後にはゴール裏のサポーターと勝利の喜びを分かち合った。浦和で新たな時間を歩み始めた32歳が語った、勝利への思いとは。(取材・文:菊地正典)[1/2ページ]
【明治安田J1リーグ第8節】
浦和レッズ 3-1 東京ヴェルディ
埼玉スタジアム2002
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悔しい埼スタデビューから6日。山根がつかんだ浦和での初勝利

今シーズンから浦和レッズに加入した山根視来【写真:Getty Images】
太鼓の音に合わせて手を叩き、「浦和レッズ」のコールに合わせて両手を上げる。9月19日に行われたJ1第8節、東京ヴェルディ戦後、埼玉スタジアムに駆けつけたファン・サポーターと同じジェスチャーで3-1での勝利を喜んでいたのは、山根視来だった。
さらに、ゴール裏から自身のコールが起きると、その声のもとを向き、やはり太鼓の音に合わせて手拍子したのち、「山根」の声に合わせて右手の拳を突き上げる。
山根にとってヴェルディ戦は、この8月に浦和に加入して以降、初めてスタメン出場した試合であり、自身が出場して初めて勝利した試合でもあった。
その6日前には、浦和の選手として初めて埼玉スタジアムのピッチに立っていた。
「もちろん勝利を目指していましたし、矢印が前に向いていたので、相手陣内でプレーして3人、4人が絡めば崩せるかな、という感覚はありました」
1-1で迎えた72分から出場し、果敢な攻撃参加を見せていたのだが、チームは終了間際の90+11分に失点し、1-2で敗れた。
「今日はチームを勝たせるプレーができなかった」
2021年のアシスト王は、そう言って悔恨の表情を浮かべた。ただ、自身の右サイドを破られた結果の失点でもあり、山根にとっても痛恨の敗戦である。しかし、赤いユニフォームを着て初めて埼スタのピッチに立ち、悔しい思いをしたからこそ浮かび上がる思いもあったという。
「みんなを笑顔にしたい」
東京ヴェルディ戦で初スタメンを飾った山根視来【写真:Getty Images】
「お客さんの多さとサポーターの声量は、唯一無二のものだと思います。このスタジアムで自分が90分出て勝って、みんなを笑顔にしたいなと、今日、負けて改めて思いました。スタジアム全体で勝っていけるクラブだと思いますし、一緒に戦ってもらっています。そういう気持ちなので、勝って一緒に喜びたいなと思います」
そして、「日本に帰ってきてからは、一番良い状態になってきている」というファジアーノ岡山戦後の実感のとおり、ヴェルディ戦で満を持してスタメン出場する。
「最初の15分くらいはアップアップになっていて、みんなも体力的にきつかったと思います」
立ち上がりはヴェルディにペースを握られた。だが、その流れを断ち切るきっかけを作ったのは他でもない、山根だった。
「いまの浦和の基準で言うと、すごく遅かったと思います」
背番号「6」がそう話すように、右ウイングの金子拓郎が相手の左センターバック(CB)にプレスをかけたのに対し、相手の左ウイングバックにプレッシャーをかけるのは明らかに遅れた。
ただ、そこでマイナスをプラスに転じるのが、国内でリーグ優勝2回、JリーグYBCルヴァンカップ(杯)と天皇杯をそれぞれ1回、アメリカでもカップ戦を勝ち取り、2022年カタールワールドカップ(W杯)も経験するなど、場数を踏んでいる右サイドバック(SB)の力だ。
「無理にオーバーラップして邪魔をするより…」

浦和レッズの選手として掴んだ初めての勝利【写真:Getty Images】
「相手が左利きの選手で、どういう癖があるかは試合前にスカウティングしていた」
事前のインプットを頼りにコースを切りながらじわじわと距離を詰め、対面する溝口修平の選択肢を消していった。
その結果、溝口はボールを下げる。それをかっさらった金子のクロスをマテウス・サヴィオがダイビングヘッドで合わせ、浦和は劣勢の中で先制に成功した。
山根はその後も見る者を唸らせるようなプレーを続ける。
「金子選手は基本的に1対1になったらほぼ勝てる選手なので、無理にオーバーラップして邪魔をするより、彼に仕掛けさせた方がいい」
本来は岡山戦で見せたプレーのように攻撃参加を武器とするタイプながら、川崎フロンターレ時代に身につけた内側に絞るプレー、いわゆる偽SBとしてボランチのようにも3バックの右CBのようにも振る舞いながら、浦和の攻撃に厚みを加える。
チームで最初の交代として58分にピッチから退いたのは、まだ100%の状態ではない現状を示しているのだろう。ただ、むしろ100%の状態になればどれだけチームに貢献するのかとポジティブな想像をかき立てられるようなプレーぶりだった。
そして、試合後の行動である。ゴール裏のファン・サポーターに向かってストレートに喜びを示すのは、浦和の選手としては過去に森脇良太が思い浮かぶ一方、あまり例を見ない。そんな行動を取った理由を問われると、山根は喜びとは対照的に映る真剣な表情で答えた。